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異界奇行---俺にはキツスギル!  作者: kenken@


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祈りの響くミサの前に

異世界の大晦日。修道院のミサが始まる準備の時間まで

寝床の部屋で少しだけどゆったりと体を休められたよ

チクチクする藁のベッドに寄りかかりながらボーっとうたた寝だよ。


  シン!起きて。


うたた寝をしていると、ラツェに起こされたよ。


 うう~~っ、、あれ、お昼なの?

 、、あれ?。


  シンってば!早く起きてよね、、、

  もう昼なんだからね皆が食堂で待ってるのよ。

  聴いてよ昼のパンがね!宿屋のロジーヤさんの差し入れでね

  美味しい具入りの柔らかいパンなんだよ!

  凄く良い香りでね。、、ああ。

  ねえ!シン!早く!起きて。

  ああ~~!パンの色もね薄い金色なんだよ。金色だよ。

  あれは絶対に美味しいよ!

 

ヤバい。普段お淑やかなラツェが壊れてる。

パンの香りと見た目でヤラレテル。

食べ物への執着心が此処の皆が半端無いからね 。

 

 うう~~ん、起きたよラツェ。起きたから。

 パンか~~

 うわ~~!ロジーヤさんの宿屋の新作パンなのかな?

 金色のパンか~~

 楽しみだね~


ノロノロと起き上がりながらラツェに答えていく

 

  早く!早く!シン。

  ああ、いっぱいあるんだよ。

  早く行くよ。

  


ラツェに腕を引かれて大急ぎで皆の待つ食堂へ向かうよ。

アアッ!食堂の入り口で既に良い香りが漂ってる

なんだこれ!美味しそうな匂いに顔が自然とニヤケル。

アハハいい匂いだ。


食堂に入るなりにアルロとケリオサが声を掛けて来た

 

  シン遅すぎ!

  ジャスリーさん所の美味しいパンが有るんだよ

  待たせすぎだよ。

  この前にさ、、え~と、かなり前かな?

  宿屋で食べさせて貰ったやつの新作なんだって

  ロジーヤさんがさっき持って来てくれたんだ! 

    

   凄いよシン、皆に2個づつ有るんだよ

   チビ達のも2個有るんだよ。凄いよね。

   さあ、さあ。シンも早く座ってよ。


二人の早口が凄い。

食べ物の事だからね気持ちは俺も同じだよ。

2人の御小言を聞きながら、ラツェと俺は

なんとか急ぎ足でいつもの席に座ったよ。

スープは。ととと、と、、覗き込むが。

ああ。スープは、、、ああ、何時ものだね!


 

 皆揃ったわね。

 今日のパンは有りがたい事に美味しい頂き物ですよ。

 さあ、女神さまに感謝の祈りを捧げましょう

 同じ様にね

 宿屋の皆さんの御気持に感謝して頂きましょう


ケシーレさんとリビエさんが女神様に祈ってる。


ケシーレさんの言葉を聞いて、俺達も皆で各々に祈る。

こんな時のケシーレさんの女神様に対する祈りは大抵長いんだよ。


子供たちの祈りで伏せた視線が、ケシーレさんを横目で追う。

まだかな、まだかな。

、、、、、、、、、

、、、、

まだ?

、、、


 はい!、、良いわよ頂きましょう。

 リビエ。年下の2人の面倒を見てあげて


よし。たべるぞ~~!

パンがマジで美味しそうだよ、焼き色が薄く黄金色してるよ~~。

1つ手の持って感じる柔らかさ。まだ冷たくなってないよ

真ん中から2つに割ってみると薄切りの肉が野菜の中に多く見える。


  うわ~~!肉が一杯入ってるよ~~、、


思わづ隣のアルロを見ると、、、

思いっきり齧り付いてるし。うん!気持は分るよ。


具の周りのパンに汁が染みてパンの内側の色もヤバい

肉、野菜、油、塩、、多分これだけで炒めた具が入ってるん感じ

香りも、、串焼き肉~~~の超上位版だ。

駄目だ我慢できない。

右手の方のパンの具材に齧り付くよ。具材にね。

夢中でモグモグと、、、モグモグと!

うんま~~い。


両手に半分に千切ったパンを持って

たぶんだけど、、眼を瞑ってニヤケながら

飲み込んでる。

一口だけど幸せが体中に一杯だ

二口目に行く前に

言わないと。


 これウマ!このパン美味しすぎ。

 ジャスリーさんすげーーー!


  アハハ八~~ッ。

  シンが壊れた。

  俺も!ジャスリーさんありがと~~~

  

 ケリ!ケリ!。だってコレ凄いでしょ。

 具入りの柔らかいパン何て夢みたいでしょ。

 前に貰ったやつよりもコレの方が最高に美味しいよね。

 うあ~~良いなこのパン。


  あらあら、、シン!

  食事中はもう少し静かにしてね

  美味しいのは分ったから早く食べなさい

  折角の美味しいパンだけれど

  時間が経つとパンが硬くなってしまうわよ

  良いの?


 えええ!

 は~~い。

 アルロ~~~~

 美味しいね。

 初めてだよね、こんな御馳走。


  うん!最高に美味しいよ

  後で宿屋の皆にお礼を言わないとね。


 うん、そうだね。


思いもよらない大晦日の幸運に孤児院の皆が笑顔になっていた。


さあ午後からも修道院の門から入口の扉までの石畳の掃除と

落ち葉を履き寄せて籠や木箱に入れて裏庭の置き場に置きに行く

それに、そこいらじゅうに生えてる雑草取りを頑張ろう

皆でやれば意外と早く済むんだから。


夢中で掃除をしたよ。パン!パワーだよ。

子供だから長続きしないんだけどね!

でも。

2時間も外仕事をやればさ、言われた事は片付くよね

今は大体3時ころかな?

時間を図る物が此処には無くてね正確じゃないんだ

太陽(?)が良い感じに傾いてるからね。後は空の色と辺りの暗さかな

うん、適当だ、、それにさ。

ちらほらと修道院のミサに参加する人が、俺達の脇を通り過ぎて行くからね


 

 ふう~~これで終わりかな。

 んんん~~綺麗になったよね?。

 ねえ?片付けをして中に入ろうよ、大分寒くなってきたからさ。

 リビエさんに報告だよ

 

  シン、私たちも終わりで良いと思うよ。

  アルロがゴミ置きから戻ったら中に戻りましょう。


アルロが戻って来た、見ただけで寒そうだよ


 アルロ、終わりにしようよ。

  

  ああ分かったよシン。

  うう~~今日も夕方に近くなると急に寒いね

  なんだか冷たい風も吹いて来たし 

  今夜は寒くなるのかな~

 

 アルロ~~、そんな凍えるような話をしないでよ。

 俺まで震えてきそうだよ

 さあ早く中に入ろうよ


俺達は掃除道具をもって孤児院の裏口に向かって歩いて行く。

掃除道具を建物の隅の置き場に仕舞ってから

俺達は自分たちが寝たりする部屋に行くかなと相談中だ。

あの部屋は火の気がないから寒いんだよね、、食堂の方が幸せかな。

今の所は言い付けられた仕事は済ませたからねどうするか

ラツェがリビエさんに報告するために礼拝堂に行ってくれる。


ラツェが聴いて来てくれた話だと

暫くは食堂にいなさいとの事だ、まあ暖かい方が良いからね

良かったよ。

椅子に座りみんなと他愛もないお喋りをしてると

冷たい風が顔に触れる。

さっきから風が当たると思ったら、窓の一つが7分程開いていたよ

換気をするほどこの部屋は密閉されて無いから閉めても良いはずだよね

俺が食堂の木窓を閉めたけど、外はもう薄暗くなっていて宵闇時だ。

窓の木の蓋を少し押し上げて見上げると

天上は蒼く暗かったけど赤い大きな星が二つも見えた

緯度の低い地平よりがオレンジと朱になっていた。


 みんな今夜の空は雲一つないよ、凄く澄んでて綺麗だよ、

 それに天に濃紺と片縁に沈む日の暗い黄赤色がさ良く見えたよ

 うん!綺麗だった

 でもさ。凍えて氷りそうなほどヒュ~~ンて冷風が吹いてるよ

 ミサの後に寝る時によく準備しようか

 また風邪をひかない様に気負付けないとね。


俺の何気ない話を聞いてたアルロが返事をした


  ああ!そうだよなシン。

  この寒さは病の元になるな、みんなで気を付けよう


  病は嫌だからな

  年初めの疫病みたいな病はもう此処には要らないのさ

  、、、カカやリジス。ああ何人も女神様に召されて行ったから。

  、、、サスキーなんか2歳になってなかったろ?

  、、何でなんだろう。

  、、、天上の女神様


   、、、、イヌラードやシディー達だって女神様に召されて行ちゃったわ

   、、ああ女神様。

   、、どうか。どうか。逝ってしまった皆に優しくしてあげてください。

   、、女神様。



ああ。俺が要らない事を言ったのが駄目だったみたいだよ

少しだけ忘れられてた凶事を思い出しちゃったな

アルロとラツェが俯いて祈ってるよ。

ラツェの祈る手に涙が落ちるよ。


ああきつい。

この異世界の今がキツスギル。


この世界の女神様。

女神ロジーヌ様。


礼拝堂の祭壇の遙か上。姿写しの木彫りの女神様。

眼を瞑ってこちらを見る

その顔は優しそうに見えるけどなあ。




そして


皆が寿ぎつつ揃って頭を幾分か下げ

女神への祈りを囁く

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