シディリーさん
まさかね、少しは予想してたけどホントにシディリーさんが居ないよ、、、
「たまたま居ないだけだよね、、、少し待てば出てくるよねぇ」
無事に御使いの目的地である薬屋さんに到着してみたものの、店主のシディリーさんが店内に見当たらない。
さっき店に入った時に、結構大きくドアベルの音が部屋に響いたんだけどなぁ,聞こえてないのかなぁ
お店のドアの鍵もかかって無かったから営業中のハズだよね
奥で作業中なのかもしれないから、ここで少し様子を見て待ってればいいかな、俺には時間は有るからね。
重くは無いけど、背負ってる荷物の鍋も勝手に下す訳にもいかないし、、、、
はぁ。シディリーさん早く気付いて出て来てくれないかなぁ。
ああぁ~~~!待っててもシディリーさん出て来ない。これは駄目そうだね、、、、しょうがないから奥に声を掛けますか。
「ええと~~~何だっけ?」
「ああっそうだ」
「こんにちは~~~。荷物のお届けに伺いました。シディリーさん居ますか」
「すいませ~~ん、荷物のお届けに伺ったんですが、お届け物ですよ~~!」
「南広場の金物屋さんで購入された鍋を届けの来たんですけど~~~ぅ」
「こんにちはぁ~~~シディリーさぁ~~~ん、、、、」
ああ、、すぐに店の奥で物音が聞こえたよ、、
良かった。これでシディリーさんが出て来てくれれば問題無しだ!奥に繋がってるであろうドアを見ていると、ドアが開いて若い女の人が出て来てくれたので。先にこっちから声を掛けよう。
「こんにちは荷物のお届けに伺いました、シディリーさんですか」
「俺は。南広場の金物屋さんの鍋を届けの来たんです」
俺がシディリーさんにそう言うと
「ご苦労様、私がここの店主で注文主のシディリーよ」
「金物屋さんの鍋よね、鍋の状態の確認をするから、あそこのテーブルに下してちょうだい」
「確か2個だったわね」
俺は言われた通りに、鍋を括り付けた紐をそーっと緩めて、腰側から手を後ろの回してゆっくりとテーブルの上に鍋を下した。
鍋が壊れたり傷になったりしない様に、上手く下せて安心したよ。そして2個の鍋を留めている紐も解いて、分けてテーブルの上に別々に置いた。小さなボロ切れを緩衝材に挟んでたから問題ないと思うけどね
俺がパッと見た感じ、2個の鍋に傷や凹みなどの問題ないと思うけど、、、、、どうだろうか。
シディリーさんは2個の鍋を順番に手に持って外見の確認をして、次に蓋を取って内側の状態の確認をしている
表情の変化も無く2個の鍋の確認が無事に終わり、シディリーさんは俺を見て話しかけて来てくれた。
「ご苦労様でした、届けてくれた鍋に問題無いわね。ありがとう」
「あら、あなた初めて見る子ね、あそこの市場で露店の手伝い仕事をしているの?」
「そう言えば前に手伝いをしてる子供がいるって、金物屋さんに聞いた事があったわね」
「あなた何歳なの?ああ、孤児院の子達かしら、まだ子供なのに仕事をしているなんて偉いじゃない」
「そうだわね孤児院の子なら。これはお鍋の配達の御駄賃ね。帰りに何か食べると良いわ」
シディリーさんは笑顔で、ワンピース風の作業服のポケットから小銭入れの様な物を取り出して、中から小さな硬貨2枚を俺に手渡してくれた。
「うあああっ~~~ありがとうございます。シディリーさん」
「このお金は大事に使います」
「いまは孤児院で仲間と生活してます。街の中の数ヶ所のお店で仲間と仕事の手伝いをしてます」
「あと俺は「シン」と言います。今は12歳ですが、もう直ぐに13歳になります」
「そんな事言わ無いで、そのお金を使って何か食べなさいよね」
「そうだわ!、、、少しそこの椅子に座って待っててよ、、シン。はいはい座って」
「そこで座って待っててよね」
そう言ってシディリーさんが小走りに奥のドアへ向かい入って行った。
少ししてから出て来たシディリーさんは、大き目の木のトレーを手に持って俺の方に歩いて来た。
見ているとトレーの上には何か乗っている。
「シン。私が休憩するからね付き合ってよね、はいこれ」
「飲み物は安物の紅茶に少しアレンジした物だけどね案外美味しくなったと思うの」
「おまけで、昨日作った私の手作りの焼菓子が有るからね食べて行って」
「あとね、焼菓子の出来上がりには文句を言わない様に!分かった!」
「はい、これ貴方の分ね召し上がれ」
シディリーさんが俺の眼の前に、ハーブの様な良い香りのする紅茶の入った大き目の木のコップと、木の皿にのった2個のスコーンみたいな御菓子を置いてくれた。薄くきつね色に焼けた御菓子だよクッキーよりも大きくてボリュームがあって、見てるだけで美味しそう感じだよ
俺は椅子に座りながら、久しぶりに目にした紅茶と御菓子に息を飲んだ。
そして顔を上げてシディリーさんを見つめて、、、
「これを、、、紅茶と御菓子、、俺が食べていいんですか?」
「ああぁ~~良い匂いがするぅ~~~~~」
「御菓子が滅茶苦茶美味しそうなんですけど、ホントに俺が食べていいの?」
「ええ勿論よ。貴方も私とここで一緒に休憩していきなさいよね」
「両方が貴方の口に合えばいいけれどね」
「さあさあ。遠慮しないで手を出して食べてみて」
「この御菓子はね、私が趣味で作ってる物だからね。味や出来に関する他人の意見も聞きたいのよ」
「ふふふっ」
「うぁ~~~!え~~~~と、、じゃあ、、、この御菓子から頂ますね」
手をそーっと御菓子の方に伸ばし
スコーンみたいな御菓子を手で持って歯で軽く噛むと「サクッ」と割れて行くよ。口の中の御菓子を軽く噛んで行くと甘い味がドンドンと口に広がる、、、、うまぁ~~~ぃ!
スコーンみたいなのを半分食べて、その甘さに、、香ばしさに、、痺れて感動だ!
さらに手の中に残ってる半分を口の中に放り込んで、ムシャムシャと味わった
御菓子の甘さの余韻に思わず目を閉じて「じぃ~~~~ん」と浸ってしまったよ、美味しかった。
良い香りのする紅茶を飲んで「ふぅ」と溜息をついた。
そして、そんな俺の反応をシディリーさんは御茶を飲みながら笑って見ていたらしい
ヤバい超恥ずかしいかも
「シン。どうかしら美味しかった?」
「私的に御菓子の出来はね~~~「まぁ~まぁ~」かな~~~って思ってるのよ」
「御茶の方は好みがハッキリするから口に合ってればいいけど」
「どお!」
以前なら普通に飲み食い出来ていた食材も、今は夢の様な食べ物だ。無茶苦茶美味しいよね
転生してこんなに甘い御菓子は初めて食べたよ、、、ああ旨すぎ
「シディリーさん。夢みたいに美味しいです」
「飲んだ事も食べた事も無い、凄い物を俺に食べさせて貰って有難うございます」
「御菓子が凄く甘くて、、、甘くて」
「う~~泣きそうです」
「そう言ってもらえて良かったわ」
シディリーさん、、、にこにこと笑顔だね
目の前には、まだもう1個、御菓子が残ってるよ、、、
俺も、絶対に良い笑顔になってるよね




