ワイバーン
馬車旅2日目。
天気は上々、頭上には大きな青空が広がってる。
でも。
ロドラへ向かう乗合馬車のスピードが落ちたよ。
2人の乗客と荷物が増えたからね。
まあしょうがない。
俺は荷台の一番後ろの座席に腰かけてるよ。
未舗装で砂利と泥の街道を進めば。
ガタガタと揺れるけど。ボケーっと出来るんだ!。
ここは後ろ側への景色が良いんだよ。
草原の中に伸びてく街道。
あ~何だかロマンがあるじゃん。
ガタン。
ウゲ。
この揺れさえ無ければ、、良いのに。
あはは、確かにね。
お兄さん。昨日貸してくれたナイフを忘れてたよ。
コレを返すから確かめてくれ。
あ~~!そうでしたね。
貸したナイフはコレ間違いなしです。
あはは、使う事が無くて良かったですよね。
乗り合わせてる中年夫婦の旦那さんに話し掛けた。
ああ、まったくだよ。
ウルフだけでも私達には大事なのに。
昨日聞いたけど。
壊れた馬車はワイバーンに襲われたんだろ。
馬も2頭攫われたって言うじゃないかい!。
はぁー。
ロドラへの買い出しが、えらい事になったよ。
私たちは昨日の事でね寿命が数年はチジンダと思うよ。
あはは!俺もウルフはヤバいと思いましもんね。
あいつら。馬車の後ろから2匹も来てましたよ。
でも。
氷が上手く当たって良かったですよ~。
痛がってキャンキャン言って逃げて行きました!。
ありがとうねー、追っ払ってくれて。
私がウルフなんて見ちゃったら震えちゃうわー。
町じゃー。魔物なんて見ないもの。
私の寿命も減ったかもね。
うふふ。
奥さんの方が余裕ありそうだよ、笑ってるもの。
あの~。
昨日は大変でしたね。ワイバーンに襲われるなんて。
2人の横に座ってる冒険者にも声を掛けてみた。
ああ。私の中で昨日は最悪の日になったよ。
何も出来なかった!唖然としたよ。
馬を持って行かれるのを、ただ見ていただけだね。
ワイバーン!。
それも2匹だったからな。
あんなデカい魔物にはもう一生出会いたくないな。
ワイバーン2匹の討伐となると。
騎士団と領兵じゃ厳しいか、無理だろうな。
うーん?被害が大きくなるだろう。
腕の良い上位魔法使いがいればいいがなぁ。
上位階位の冒険者が揃ったパーティーでも怪しいな。
単独じゃ、、。
目の前から馬をサッと、足の爪で掴んで飛んで行くヤツだ。
翼を広げれば、馬車2台分の翌幅だぞ。
人には。ありゃー、空を飛ぶ厄災だ。
最悪だ。
最悪の日ですか?。
ああ!最悪だよ。
ワイバーンの事を見送って、ハッと我に返ったよ。
馬車が横転してて、近くで御者は怪我をしてたんだ。
たぶん、馬と一緒に少し飛ばされて足を痛めたらしい。
最初は骨折とは気が付かなくて。
倒れてるのを起こしたら悲鳴を上げてね。
それで体を調べたら、、足が変に曲がってて。
骨折に気が付いたんだ。
うあ~!変に曲がってたのかぁ~。
馬と一緒に連れて行かれなくてよかったぁ~。
御者の治療に私の初級ポージョンをつかてね。
それで意識は戻って擦り傷は消えたけど。
骨折までは無理だったよ、痛みが和らいだ程度だったなぁ。
彼を壊れた馬車の所まで連れて座らせたんだ。
それから2人で相談してね。
この広場で次の乗合馬車を待つ事にしたのさ。
壊れた部品や積み荷で、もしもの為の壁を作ったり。
早めに「灯り」を灯したりしてたよ。
でも、夕方になる頃に草原からウルフが現れてね。
馬車の周りを取り囲まれて攻撃されたよ。
2人で壁を壊されまいと必死で応戦したけど。
アノ数のウルフ相手じゃ。
あと幾らも持たなかったと思うよ。
危なかったんだ。
そんな時に、あの3人が現れてくれたのさ。
そして見事!ウルフを倒してくれた。
だから命の恩人さ。
うあ~!。
こっちはアクションドラマ越えの超大作映画じゃん。
スぺクタクルでハラハラ&ドキドキだよ~。
こんなリアル要らないけど。すげ~!。
俺には、なんか凄すぎて。実感が湧きませんよ?。
前の方の座席に座ってる。
3人組の冒険者は黙って聞いてるだけだなぁ。
このまま。
無事にロドラにつけたら、後はギルドへ報告だ。
それとウルフ8頭の買取だな。
兄ちゃん!そん時は宜しくな。
あっ、リーダーの人に頼まれちゃった。
はい!ちゃんとやりますよ。
2日目も街道脇の広場で野営だよ。
また「灯り」を3か所灯して草原を照らし。
自分のテントへ潜り込む。
今日の晩御飯は串焼き3本を食べちゃお~。
串焼きを載せた木皿を見て気が付いた。
あ~台が欲しいな。
テントの中だと。
机じゃ大きすぎて上手くないなよぁ。
ん~~。
テントの中用に、机の天板の半分の大きさで。
平らな木の板を1枚買うのが正解かな。
よ~し。早めにロドラで探そうっと。
あ~串焼きのお肉が柔らかくてウマ~イ。
夕食を済ませて魔法袋から毛布を2枚取り出し。
敷布とタオルを使って寝床を作った。
昨日の夜も良い感じで寝れたよなぁ~。
毛布を買って良かったぁ~。
へへ!おやすみ~。
朝。テントの中で目を覚ました。
さあ支度だ!寝床を片付けるぞ。
朝はパン2個でいいかな~お腹減って無いし。
口の中のパンをモグモグしながら。
皮の装備を着込みポーチのベルトを腰に巻き。
魔法袋の紐もベルトに結べば、良し!。
テントを畳み。紐で纏めて魔法袋の中へ入れる。
忘れ物、無し、最後に朝の。
「清浄」
乗客に聞こえない様に最後は小声で、奇麗になったよ。
乗合馬車を見ると、もう御者が2人乗っている。
そろそろ出したいから。
馬車に乗ってくれ!ロドラには昼前に着くだろう。
昼飯は町へ着いてからだ、その心算でな。
みんなの乗り込むのを見て。
俺が最後に乗り込んだよ。
よーし全員乗ったな。
馬車を出す!揺れるからま。
それっ!はぁー!。
馬車は街道に出てロドラを目指し始めた。
ガタガタと揺れる。
あ~体中が痛いよ~、馬車旅はキツイ。
今日は宿の柔らかいベッドで寝れそうだよ。
午前の休憩もソコソコに移動して行くと・
ロドラが見えたぞー!。
あと少しだ。
それからも小一時間移動してロドラの門を抜けた。
広場の隅に乗合馬車が停車したよ。
到着だぜ!お疲れさまー!。
あーーー。
俺も事務所にワイバーンの事を報告するけど。
あんた達はギルドへ報告するんだろ?。
早くアイツを討伐してくれって頼んでくれよなー。
そうじゃないと、また被害が出たら最悪だからよー!。
危なくって御者なんてヤッテらんねーよ。
このままじゃ。
この乗合馬車が止まるかも知れんぞ。
だから頼むぜ!。
え~~~!乗合馬車が止まるなんて困る~。
ジャーレンタに帰れないじゃん。
あ~俺にも最悪が降りかかりそうだよ。
やめて~。
はぁ~~。
おい兄ちゃん!。
俺達は冒険者ギルドに報告の義務が有るんだからな。
ギルドへ5人揃っていくぞ、さあついて来てくれ。
ウルフの買取もだ。
ギルドかぁ~、今日はジュナリアさんいるかなぁ~。
4人の後をついて町中を進んで行く。
あっ~~~!お好み焼きの屋台が出てる!。
必ず後で寄らなくっちゃ。
今日は屋台で1枚食べて、何枚買おうかなぁ~。
うふふ~!フン、フン、フン。
俯き加減で歩いてたけど、顔を上げると。
4人が振り返り気味に、俺を見てるよ?。
歩きながらね。
え~と、何ですか?。
いや!妙に楽しそうだなと思っただけだ。
おら、早く行くぞ、急げよ!。
もうすぐ昼だが、この分だと昨日の事で。
長い聞き取りになるだろうから。
はぁー昼飯を食いそこなうぞ。
えっ!そんなの嘘ですよね。
俺、朝パン2個しか食べて無いし。
あ~~~さっきの休憩の時も、何も食べて無くて。
もう、腹ペコなんですけど。
俺がそう聞くと。
まあ。
偶にそんな事も有るのが俺達冒険者だぞ。
食える時に食う!寝れる時に寝る。
ヤレルときにヤットクもんだぜ、なあ?。
諦めて着いて来いよ。
兄ちゃん。
いい勉強になったろう?。
それにコレから追加で勉強だ!。
あははーーーー。
俺はそんなの嫌だ~!。
こんなビーンボールは要らないよ~。
はぁ~。俺のぉ~、お好み焼きが遠ざかるぅ~。
ギルドに到着だ!重い足取りで4人に付いて来たよ。
今まで使った事の無いギルドの壁の据え付け椅子。
俺は窓口から離れた所の椅子に腰かけた。
リーダーの人が窓口で説明してるのを眺めてたけど。
あ~~~。手招きで呼ばれてる。
コッチ、コッチってね。
なんですか?。
僕には用なんてないでしょ?。
あっ!ジュナリアさんだ。
あらっ。
シン君じゃ無いのよ。
あなたも乗合馬車に乗ってたの?。
はい。
救助側の乗合馬車に乗ってまして。
俺は、2匹のウルフを追い払いましたよ。
目を丸くしてるジュナリアさん。
あなたはまだ新人でしょ!。
そんな無茶は駄目よ!。
キッと4人の冒険者を睨み。
もー!。
あなた達、大人が居たのに、その状況は駄目ね!。
失敗とまでは言わないけど。
以後は状況を見定めて動いて下さい。
良いですか!これは危険回避の要検討案件ですよ。
あなた達ベテランの経験者もね。
わお!4人がヒソヒソ話混んでるよ。
上の。
2階の部屋で5人から詳細を聞きますから。
あちらの階段から2階に上がって下さい。
上司がこの件を担当するでしょう。
シン君。あなたもよ。
さあ!行って。
ギルド職員さんだ。
ジュナリアさんが凄いな。
4人について行き階段を上がり廊下で待ってると。
ジュナリアさんが直ぐに来てくれた。
ここに入ってて。
そこの奥側の椅子に座って待ってて。
テーブルの向こう側ね。
壁の所にも移動できる椅子が有るから。
それも使ってね。
部屋のドアを開けて案内されたよ。
俺は壁の所の椅子にチョコンと座ったよ。
4人はテーブルの周りの椅子に座ったけどね。
直ぐにドアが開き。
中年の男の人とジュナリアさんが入って来た。
えーと。
5人だったかな1人足りないようだが?。
俺の事かな?。
シン君も前に来て顔を見せなさい。
はい。
ん、確かに5人の要だね。
それでワイバーンの事だが2匹現れたんだね。
確かかい?。
あ~俺も見て無いや。
大きかったって言ってたけど。
ああ!間違いなく2匹現れやがった。
朝、出発の準備中に襲われたんだ。
馬車の馬を2頭、足で摘まんで搔っ攫いやがった!。
それも2頭共デカい奴だぜ。
ありゃーヤバい。
出来るだけ早く。
奴らの寝床の巣を見つけるか。
どこかに誘い出すかで始末しないと。
被害が広がるかもな?。
今回の被害は人じゃ無かったけど。
次は何が狙われて、どうなるか分からない。
そうゆう事だよね。
直ぐに領主には一報を入れよう。
騎士団と領兵がワイバーン討伐に向かうだろうが。
冒険者ギルドも緊急依頼を出そうと思う。
階位15以上の冒険者を集めて討伐部隊を組む。
出来れば君達にも参加を頼みたいな。
俺は除くね!階位2だもの。
冒険者ギルドは。
今回のワイバーン情報の報酬を支払う用意がある。
必ず下の受付でギルド彰を提出してくれ。
この5人の名前は登録済みだからな!。
勿論君もだよ、新人君。
はは、2匹のウルフを追い払ったそうじゃないか。
魔法でね。
俺は大した事無いです。
はい。
聞き取りはこれで終了だ。
解散してかまわんよ。
ではね。
偉い人が出て行った。
よーし!下で報酬を受け取って。
ウルフも売り払えば今回の俺達は一段落だぜ。
ワイバーンは他人に任せるに限る。
それと。
兄ちゃん!君はシンて名かよ。
くっくっくっ!魔法が使える新人君か。
あの美人受付嬢とも顔見知りたー!やるじゃんか。
さあ行くぜ。
受付で情報量の銀貨50枚を受け取り。
魔法袋の中のウルフを裏の倉庫で買い取ってもらった。
4人の冒険者が俺に1頭分の報酬をくれて、、。
今回は面白かったぜ。
あははー!駄目だ笑っちまう、堪えられねー。
くくくぅ。
あの「灯り」は最高に良い魔法だな。
俺も覚えたいくらいだ。
また会おうシン。
じゃあな。
3人はギルドを出て行ったよ。
じゃあな。
シン、元気で、また会おう。
あっ。
ワイバーンに襲われた人も。
行っちゃった。
誰の名前も聞いて無いや、、。
向こうは俺の名前を知ってるのに。
コンナの不公平だな。
ギルドで立ち尽くしてると。
シン君。
ふふ、帰って来たのね。
、、。
お帰り
はい。
あ~お好み焼きを買いに行かなくちゃ!。
そんで、宿に向かおう。
ジュナリアさんさようなら。
また来ますね。
ええ。
いつも読んでいただき有難うございます。
ワイバーンの体色を考えてます。
灰色?くすんだ緑?。はて。
シンは目撃していませんから詳細は不明です。