ロドラ
ロドラへ向かう俺の馬車の旅は、、。
全然順調じゃ無かった。
何故か?。
受けてもいないし、やった事も無い仕事。
夜番をする事に成るなんて予定外だ。
なんてこった。
でもなぁ。
寝てていきなり魔物に襲われるなんて。
危険な事は勘弁だよ。
あぁ~!無理!だけど。
旅は1人じゃ無いから、はぁ~。
しょうがないか。
馬車から少し離れた場所に。
大きめの焚火を熾して。
フォルトアさんと2人で座り込み。
火を囲んで話しているよ。
あぁ~こうして。
火に当たってると暖かいですよね。
体も気持ちも。
ヤッパリ人間は火が好きなんだなぁ~。
俺は、そう思っちゃいます。
まあな。
それには俺も同意するよ。
昼でも夜でもな。
確かに、冬の焚火は更に良いモンだろう。
今日は風も無いし、晴れて星も多い。
これで月が昇ってくれれば良いんだがな。
生憎と今の月周りは真裏だ。
俺達には危険度が増す夜の到来さ。
月明かりさえ有れば、草原も見渡せるんだが。
まだ5日程は、暗い夜が続く日々だよ。
暗い夜が。
あぁ~新月の期間なんだな。
だから余計に暗いんだ。
それと、馬車のすぐ横には。
商人さんのテントが1張り建っているね。
弱い明かりがテントから透けている。
御者の人は見当たらないから。
馬車の上で寝床を造ってる様だな。
2人共食後の休憩かな。
まだ寝るには早い時間だろう。
さっき迄。
御者の人と商人の2人は。
この焚火で食事を作ってたみたいだよ。
俺の夕食は組み立てたテントの中で。
天上に弱めの「灯り」を1つ灯してね。
魔法袋からね。
まだ温かい食べ物を取り出して。
パンと串焼きを美味しく頂きました。
テントの中で少し休んでから。
此処の場所に出て来たんだ。
さてと。
じゃあ!フォルトアさん。
最初の夜番は俺がやりたいんですけど。
ワガママですけど 良いですか?。
俺は、それでも構わないよ。
新人のシンに合わせるさ。
これは助かった。
1度、寝てから起きての夜番。
だってキツそうなんだもん。
あっ。
交代の時間はどうやって決めるんですか。
俺、時の魔道具を持ってますけど。
夜の細かい時間とかは分りませんよね?。
今は冬で夜が長いよね。
馬車は暗くなる前に広場についていたから。
あれから色々と準備して。
今の時間は、はて何時だろうか。
夜の9時位になってるのかな?。
あぁ~。
こんな事になるのなら。
時計を買っとけば良かったなァ。
場面場面で正確な時間が知りたくなるじゃん。
まあ腕時計は不味いかもだけど。
懐中時計なら上手く使えばイケそうだよね。
くぅ~ホント駄目だな。
それなら大丈夫だ!何も心配ないよ。
この魔道具で時間が測れるから。
こいつは決まった時間を教えてくれるんだ。
まあ、上手く使うには数個の魔石が要るけどな。
今日は屑魔石が要るな。
ふふ!コレも冒険者に1つは必要だぞ。
そうだな大きさの揃ってる。
屑魔石1つ分の間で交代しようか。
まあ、そうすると夜の当番は2回だな。
フォルトアさんが。
横に置いていた小さ目の麻袋から。
「時の魔道具」と似た魔道具を取り出したよ。
その魔道具に使うのは屑魔石が1個。
2時間半強の間、光ってる魔道具かな?。
それは「灯り」の魔道具だよな。
見た目がソンな感じだもの。
へぇ~、その道具は便利ですね。
すると揃った屑魔石が4個いるんですよね。
じゃあ!俺のこれ!。
このスライムの屑魔石は使えますか?。
何個か揃ってるの持ってて良かったぁ~。
俺はコソッとポーチに右手を入れて。
偶々持ってる屑魔石を掌に載せて見せた。
ほぼ大きさが揃ってる。
おお~シン!。
その屑魔石!良いじゃないか。
良くそんなに揃ったのを持ってたな。
夜番の時は、いつもは冒険者同士で。
結構屑魔石の大きさでゴタゴタとなぁ。
揉める事が有るんだ。
いやぁ~!これは良い出だしだ。
うん!時間管理が大事!。
屑魔石で喜んでもらえるなんて。
得した気分だなぁ。
シン。
もう少ししたら夜番を始めようか。
この魔道具に屑魔石を入れてくれよ。
手渡された魔道具に。
屑魔石を1個入れてみると。
直ぐに。
魔道具にポワッと優しい光が灯ったよ。
へぇ~。
こんな感じに光るんですね。
これはもしかして「灯り」の魔道具ですか。
俺には必要のない道具なので新鮮だ。
ふぅ~ん。
入れる魔石で明るさや時間が変わるのかな。
さて?大きい魔石を入れると。
時間が長くなるのか、明るくなるのか。
どっちかな。
ああ、当たりだ。
そいつは「灯り」の魔道具だよ。
こんな使い方でも一応な。
経過時間を測れるんだ。
まあ本来の使い方じゃないがな。
でも良いだろう?。
ふふ!。
はい。時間はこれで大丈夫ですね。
どんな物でも。
道具は使い様って事だよね。
何事でも工夫が大事って事だな。
まぁ俺もね。
フォルトアさん。
相談なんですけど良いですか。
なんだい?言ってくれ。
俺!「灯り」の魔法が上手く使えるんですよ。
それもかなり明るく。
だから。
馬車の後ろの方の草原に⒊か所程。
地面に長めの棒を刺してきて。
その棒の上に「灯り」の魔法を点けてみようかなって。
今からして良いですか?。
そうすれば。
夜でも周りに明かりが届くし。
空を飛んで来る魔物も。
早く確認出来そうじゃないですか。
草原の方も。
ある程度の距離までは。
良く見えると思うんですけど。
そんなのは駄目ですかね?。
これは。
俺が心理的に安心出来そうで提案してみたんだ。
辺りが暗いより。
絶対に明るい方が気が休まるでしょ。
あぁ~、暗闇を照らす投光器じゃ無いけど。
「灯り」の魔法だと光が全周に回るからね。
空を飛んで来る魔物も見えると思うよ。
「灯り」の魔法を木の棒の上に灯して。
草原に立てて置く、、。
はぁ。
シンはそんな事が出来るのか。
「灯り」の魔法って意外と暗いじゃ無いか。
点いてる時間にもよるけど。
それはやってみても良いけど。
そこまで意味が有るのかな。
うぅ~ん!。
俺は初めて聞く事だけどな。
まあ。
やってみてくれよ、シン。
良かった!。
そんな事は無駄だから駄目だって言われたら。
如何しようかって思ってましたよ。
あぁ~これで後ろ側が明るくなるよ~!。
明るい事は心の安泰。
じゃあ俺、準備してきますね。
俺の予定では、あの辺と!あの辺と!あの辺!。
⒊か所に「灯り」の魔法を木の棒の上に灯してきます。
いやぁ~良かった!。
ああ、頼むよ。
俺は焚火を離れ、早足で動き出した。
既に暗闇に飲み込まれた草原に踏み込んでいくよ。
ガサガサと草を踏み越え50歩進んで振り返ると。
ああ。
馬車の止まる広場の焚火だけが。
オレンジ色の光を弱々しく辺りに広げているだけだ。
焚火、馬車、人間が3人。
お~今は3人居るのが見えるな。
あれは俺の動きを見てるのかな。
地平線で黒と青がハッキリと分かれてる。
見渡す天上天下に人工の物はそれだけだ。
見上げれば。
今夜も良く見えるな、煌めく天の川。
じゃあ、先ずはここに1本立てちゃおうか。
魔法袋から。
さっき拾っておいた背丈程の棒を出し。
両手で勢い良く地面に突きさした。
ザシュ!。
あっ!これが魔法袋に入ってるって事は。
またダメじゃん。
俺。
棒が以外にも上手く刺さってくれた。
さて「灯り」の魔法を。
棒の先端の部分に強めに掛てっと。
よっと。
パッと辺りの風景が強い光に照らされる。
目を細めても、とても見てられないよ。
くぅおっ~!。
俺の「灯り」の魔法!。
相変らず明る過ギィ~。
これでもまだ全力じゃ無いからなぁ。
俺って部分的にヤバくないかな?。
さてと、次はアッチで良いかな。
あそこと。
あっち。
最初の「灯り」を目印にして、計3か所。
最初に真ん中を立てたから行ったり来たりで。
はは、段取りの悪い俺らしいな。
無事に3本の棒の上に「灯り」を点けて来た。
終わりましたよ。
どうですか?明るくなったでしょ?。
俺が話しながら。
焚火の有る広場に戻ると。
馬車の御者を含めた3人が。
横に並んで俺をマジマジと見た。
中でも驚いた顔の。
フォルトアさんが指をさして。
なあ?シン。
あれが、お前の言う「灯り」の魔法なのか?。
う~~ん?。
俺は、あんなのは初めて見たけど。
あれは。
明るさが「灯り」の魔法とは違うだろ?。
なあ?全然違うよなぁ?。
フォルトアさんの両隣。
御者と商人さんが首を縦に振っているよ。
疑問の言葉は出なかった。
なあ?シン。
お前のは別の魔法だろ?。
なあ?。
あんな魔法は「灯り」と違うぞ。
いやぁ~。
俺の「灯り」の魔法だからね。
何を言ってるんですか。
嫌だなぁ~もう!。
あれが、俺の「灯り」の魔法ですよ。
まだ、もう少し明るくなりますけどね。
あれで十分でしょ。
最初から。
凄く便利に使ってきましたから。
一応ですけど。
「成人の儀」で調べたら。
生活魔法は4種類全部上手く使えるんですよ。
へへ!。
それが俺の唯一の自慢ですよ。
ホントに生活魔法様々だよね。
うん、最高。
コレが俺の夜番の準備ですから。
明日の朝までは十分に「灯り」は持ちますからね。
後ろ側の草原は少しは安心でしょ?
俺は御者さんを見て言った。
御者さんには。
街道側の方は任せますからね。
宜しくお願いしますよ。
すると。
言われたんだよ。
なあ!。
こっちの方にも「灯り」の魔法を2個ばかり。
あそこと、あの辺りに、頼めないかな?。
そうすれば君も。
もっと安心できると思うんだが?。
2人共そう思うだろ。
御者以外の2人が俺を見て頷いてる。
はぁ~?。
本気で俺に言ってます?。
もう!。
なんて人だろう!。
こっちが料金を貰いたくなるよ。
俺とフォルトアさんは。
そんな感じで夜番をする事になったんだ。
不慣れな事は疲れるよ。
フォルトアさんと交代でする夜番だ。
幸いにも天気は良くて。
雨や雪に見舞われる事は無かった。
寝ては起き、焚火に当たり。
昼は馬車に揺られてゴトゴトと移動。
疲れと緊張で。
体中がアチコチ悲鳴を上げてる。
でもね。
俺の気持ちは空回りでした。
魔物が出たらなんて。
色々と考えてみたけどさ。
結局は。
俺の努力で!。
2晩共、魔物は現れなかったんだよ。
何も。
3日目の昼過ぎ。
馬車が街道を進み。
緩やかな丘を登り越えると。
視界が開けて前方に平野が広がっている。
少し先の方に町の防壁が見えて来たよ。
あそこがロドラの町かな。
馬車が丘をゆっくり下りながら進む。
そして御者が。
やっと。
ロドラの町が見えた。
お客さん達、あと少しで到着だ。
それから1時間程かな?。
馬車はロドラの門を抜けていく。
中に入って直ぐの広場の隅に止まったよ。
やっと到着だ。
お客さん達。
到着だ馬車から降りてくれ。
はぁ~ロドラについたぁ~。
やっとだぁ~。
馬車のステップをトンと蹴ってロドラに降り立った。
シン。
お疲れさん。
はは!。
お前のお陰で夜番が楽だったよ。
また縁が有ったら、。
と言いたい所だが。
御前も此処の冒険者ギルドに行くよな。
だから直ぐに会うかもな。
その時に時間が合ったら。
どこかの店で飯でも一緒に食おうや!。
なあ。
はい!その時には宜しくですよ。
フォルトアさん。
ああじゃあ、またな。
フォルトアさんは町中へ歩いて行ったよ。
馬車の方を見ると。
商人の人は、もう居ないや。
御者さんが馬に水を飲ませている。
その様子を見てると、御者さんがこっちに来た。
よう!お疲れさん。
いやぁ~ホントに今回は助かったよ。
君には色々と面倒を掛けちまったよなぁ。
ふふ!。
あぁ~!君が「清浄」も使えたのは最高だったよ。
気持ち良かったのなんのって!。
それにあの!「灯り」の魔法も凄いよなぁ。
たぶんアレのお陰でさぁ魔物達が。
馬車に近寄らなかったと思うんだよなぁ。
ホントに有難う。
コレはその気持ちだよ。
1枚の小さな紙を手渡してきた。
その紙を。
冒険者ギルドに提出してくれれば。
1回分の馬車の護衛依頼を問題無く熟したって。
やり切った事になるかも?。
まあ。
なるかもしれない?。
そんな気持ち程度のお礼しか出来ないが。
良かったら受け取ってくれ。
まあ!。
君は新人だから。
まだ護衛はダメかもしれないがな。
依頼の記録には残るだろう。
えっ!。
良いんですか?。
俺がコンナ依頼票を貰っちゃって?。
予想外に良い人かも。
まぁギルド次第だけど。
期待はしない方が良いかもだよ!。
あはは!。
じゃあな、俺は仕事の戻るから。
御者さんは道具を片付けて馬車に乗り。
壁沿いに進んで行った。
俺の手の中には依頼表が。
良いのかな、コレ?。
うぅ~んギルド次第かぁ~~。
準備し過ぎる何て事は。
無いよね?。
ボチボチと本編の誤字編集と追記をしています。