表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/123

待ち人は来たるか


シンは停滞中


昨日の夕食で食べたパンは格別に美味しかった。


うん,間違いなし!。

1人で静かに食べる食事より。

ワイワイと多くの仲間と食べる食事は最高だよね。

でも、またパン屋さんに補給に行かないと。


宿屋の朝食をカウンターで1人、食べながら思案中。

パンと、、後は何が要るかな。

右ひじをカウンターに突き、手で頭を斜めに支えて。

トレーの横のスプーン?を左手の指の爪で弾いていると。

近くで声がした。


   朝から飯を食いながら。

   何で。そんなに難しい顔をしてんだよ、シン?。

   何か困る事でも有ったのかぁ?。


俺を見下ろしてるジャスリーさんだ。


 ははは。何も無いですよ!。

 困りごと何て。

 ただ、自分用のオヤツに買い込んでた美味しいパンを。

 チョット間違えて孤児院で出しちゃって。


 孤児院のみんなと夕食に食べちゃったんですよ。

 それが、、は~ぁ!。


俺が右手で両目を覆うと。


   なんだよ!。

   食い物の、、パンの事か?。

   そんなのは良いじゃ無いかよ。

   仲間と旨いモンガ食えたんだからな。

   はは。



ジャスリーさんが俺に向かって。

こう、カウンター越しに笑って言ったよ。

確かにそうなんだけど。


あの時のパンにはもう会えないから。

たぶん。

あのパンは特別美味しかったから。

はぁ。


話を聞いたジャスリーさんが離れていく。


その後も、1人カウンターで。

最後のハーブ茶をゆっくりと飲んでいると。



少し離れた後ろのテーブルから。

4人の商人さん風の人達の話が聞こえて来た。

普通に話してる、だから良くは聞こえないけど。

商売の事かな?仲間と会話してるよ。



   明日は。早朝からロドラへ向かおう。

   

   ああ。私もそれでいいよ。

   予定の仕入れは終わってるからね。

   まぁ、、。


    俺も済んでるから問題ない。

    アッチで、良い値で売れると良いがな。


   今回の荷は重い金物が多いからな。

   移動には余計な時間が掛かるだろう。

   途中の野営が些か心配だな。


    まあそこいらは、、。


    護衛を雇ったから問題無いだろう。

    中堅で悪い噂のない3人組の冒険者だ。


   ああ良いな、楽が出来るか?。



聞こえて来た話は、商品の運搬?かな。

商人さんも大変だ。


   アッチでも。


   ロドラのラビリンスの御宝の出物に。

   アリ付ければ上々なんだが。


    さて、、どうなるか。

    、、数が出れば良いけどなァ。


ラビリンスが有るんだ!。

いいなぁ。

聞こえる声が次第に大きくなってくる。



   噂の又聞きだから分からんが。

   最近になって、良い魔道具が出るらしいぞ。


    ああ私も耳にしている。

    上位パーティーの探索の階層が深くなって。

    多少だが当たりの確率が上がって来てるとさ。

    、、噂だが良い事だろう?。


     ラビリンス産の魔道具か。

     、、さて!俺達のも運が向いてくるか。


      数日後が楽しみだな。


    ああ、、。


   ふふふ!。

   何かしら拝みたいものだ。


    そうよな!。

    さしあたって。俺は今の魔法袋を大きくしたいが!。

   

   はは!。

   それは強かに金が掛かるぞ!。


    むろん承知の上だ。

    自分の商売を大きくしていくには。

    掛けも大きいのが必須だろう?。


   ああ、御明察!。


    然り。



また声が聞き取りにくくなった。


おっ!ラビリンスが有るんだね。

ロドラって、確かここの隣町だよねぇ。

うぅ~近いのかなぁ、遠いのかなぁ?。

ふ~う。

まあ今は良いかな。

アルロ待ちだし。


 御馳走様でした。

 お金はココに置きますね。


   おうよ!。



階段を上がり部屋に戻る。

さてと。

昨日買った服の感じを確かめてみて。

う~~、合うかな?。


良かった。

どの上着用の服も大丈夫そうだよ。


ズボンの裾の長さも何だか誂たみたいだ。

上着も、肩とかが窮屈にならずに済んだよ。

しっくりと着心地も悪くない。

へへ!運が良かった!。

俺の服の見立ても上々だな。


ズボンは新しく買った厚手の物で。

上着を普段用の元の物に着替えていく。


うん!これで少しは耐寒性が上がったかな。

まあ寒いのに変わりは無いけどね。

さてと今日も、また買い物に出掛けますか。

先ずはパンと、、。


階段を下りて行き。


 俺!出かけますから部屋の鍵です。


   おう!確かに預かった。

   行ってこい。


宿を出る時にテーブルの方を見たけど。

さっきの商人さん達は既に居なかったよ。


昨日と同じようにパンを購入してから。

冒険者ギルドに顔を出してみた。

道から1段の段差をサッと蹴上がり。

そのまま、す~っと入口を抜けると。


   あっ!シン君だ。やった!。


偶々だろうけど。

受付嬢のヒビカさんがいた。

ロビーの掲示板に依頼表を張り出していたよ。


足音で入口へと振り返ったんだろうけどさ。

俺を見つけるなり名前を言われて。

ビックリだよ。


 ヒビカさん。

 ラビリンスから帰って来ましたよ。

 また、ここで新前冒険者しますからね。

 宜しくですよ。


すると、ささっと俺の横に来て。

俺の姿をキョロキョロと見回しているよ。


   お帰り!。

   良かったわ怪我も無く無事みたいね。

   じゃあ。シン君はまた、いつものお仕事ね!。

   ふふふ!良い事だわ。


そんな事を言いながらカウンターの向こうへ。

ツカツカと歩いて行ったよ。

いつものお仕事、、。

あれかな?。


今の時間のギルドは空いているから。

俺がカウンター越しにヒビカさんの前に行くと。


   ふふ。

   シン君!早速で悪いけど。

   アレを掘ってきて!イッパイでお願い。

   その依頼表は今から書くから待っててね。


目の前で。

小さな紙にスラスラと仕事内容を書き込んでいく。

そして、サッと俺に渡してきた。


   はいシン君!これが今日の野芋の採取依頼表よ!。

   依頼内容を確認して、問題無く出来るなら。

   ギルド職員の私に提出してちょうだい!。

   うぅ~!時間が勿体ないわ!。

   さあ、さあ。

   早く!。


ヒビカさんの態度だけど。

何だか前よりも切羽詰まって無いかな?これは。

確か野芋の採取する人数は増えたはずなんだけど。

何でだろう?


 ヒビカさん?。

 今の野芋の採取って人が増えてますよね?。

 前よりも量は一杯取れてるんじゃ無いんですか?。



   最近アルロ君と仲間の子達が居なくなってね。

   1日に数個だけ、前の量に戻ったのよ。


   あぁ~。

   あの大きな野芋達は夢だったのかって、。

   私の友達たちと嘆いているの。

   だから今は悲劇的な状況なのよ!。


   あぁ~~!。

   シン君!。

   もう私ね。3日は食べて無いのよ!。

   ねっ!大問題でしょ。

   だから、早く!。


   シン君なら。

   今から出ても片手以上の数は採取できるでしょ?。

   

俺は驚きつつ依頼書をヒビカさんに渡して言ったよ。


 野芋の採取依頼は受けますよ。

 はいこれ。

 じゃあ行ってきますね。


   シン君お願い。

   野芋、いくつでも良いからね。


ヒビカさんに挨拶してギルドを出る。

芋堀道具のスコップ?だけを借りて魔法袋に入れる。


さて、久しぶりにあの場所へ行きますか。

町の中を進み、門を抜け街道を暫く歩くと。

川へ向かって森の方へ1人逸れていく。

まあ、見回しても街道には人影は無いけどね。


草原を向け河原へ緩い坂を下りていくと。

シャラシャラと流れる水面の音が聞こえてくる。

最後にきつい断崖を下りて河原へ到着だ。


 おぉ~!、アルロ達の芋堀の跡が分かるじゃん。

 これは結構な幅で掘ったなァ。

 コレだけの量を掘ってギルドに収めてたのが無くなると。

 はは。確かにヒビカさんが悲しむわけだ。


 俺も今日からは、また頑張って掘りだしますかね。


それからは休憩もソコソコにして、芋堀だった。

勿論!昼の食事は美味しいパンだよ。

2個も食べちゃったよ、最高。


俺は、午後からも頑張りました。

午前中に4個を掘り出して、午後は6個掘ったよ。

へへへ!10個も掘っちゃったよ。

これはヒビカさんに自慢できるでしょ。

夢中で掘ってたから空が赤くなるまで河原に居た。

ふぅ。夕暮れが近づいてきたので撤収だよ。


河原を離れ草原を進み街道を歩いて町へ帰る。

町の門を抜ける頃には、既に空は濃い群青色になり。

多くの星たちがキラキラと瞬き始めていた。

町中の雑踏は雑音だらけで寒さを忘れさせる。


ギルドに入ると多くの冒険者で賑わっていたよ。

宵の口だ、皆が依頼を済ませ帰って来ている。

ヒビカさんの窓口も多くの冒険者が並んでいるよ。

俺も躊躇いながらそこの列に並んだ。


周りの冒険者をコソコソと見渡すと。

麻袋を持っている人が多い事に気が付いたよ。

小声で。


 あっ、イケね。

 忘れてたよ、やっちゃった!。



つい、野芋を魔法袋に入れて来ちゃったよ。

もう麻袋に入れ替えられないじゃんか!

俺ってバカだ!。


暫くして俺の順番になった。


   あら?。

   あらら?。

   シン君?採取した野芋は何処にあるの?。

   まさか!無しじゃ無いわよね。


ヒビカさんが驚愕の表情で俺を見詰めてくる。


 いやぁ~。

 野芋は在りますから安心して下さいよヒビカさん。

 野芋を載せるトレーを出してください。


サッとカウンターの上に見慣れたトレーが置かれた。

もうしょうがないよ。

右腰に下げてる魔法袋に手を差し込み野芋を持った。


1,2,3,4,5、、、。

途中でトレーが追加されて。

2枚のトレーに10個の野芋を積みあげた。

ヒビカさんの目がウルウルしている。


 コレが今日の野芋の収穫ですよヒビカさん。

 買取をお願いします。


俺の声に、ハッとしたヒビカさん。


   シン君?えぇ~と今?何処から出したのかな?。

   君は、何も持って、、、。

   ん?。

   

そこまで言ってヒビカさんは口を閉じた。


   野芋の買取ね、待ってて頂戴。

   

後ろの女性を呼んで、2人で野芋を移動させているよ。

この前も手伝っていた人だ、俺を見て驚いている。

ヒビカさんが直ぐに戻ってきた。


   シン君、ギルド彰を出してちょうだい。

   お金は?預けるの?持って帰る?。


 あっ、ギルド彰に。

 はい、これにツケて下さい。


ヒビカさんにギルド彰を手渡すと。


   わかったわ、待ってて。

   はいこれで終わりよ、ふふ今日は凄いわね。

   で?明日は?。


 明日も野芋堀に行きます。

 俺は数日の間、野芋堀ですかね。


   そう。

   それは楽しみだわ。


直ぐに答えてカウンターを離れた。


後ろで並んでいた冒険者の男性が。

俺の顔をジッと見ていたよ。

やっちまった!。


気を付けて魔法袋を使う予定だったのになあ。

俺はホントに間が抜けてるよ。


でも、流石ギルド職員のヒビカさんだ。

俺が思わず使っちゃった魔法袋にも。

それは?と声を出しそうになってたけど。

一瞬で雰囲気を切り替えてたな。


打ちひしがれテクテクと道を歩いて宿を目指す。


 はぁ~、既になった事は諦めよう。

 明日の野芋だ!。


宿に着いて部屋の中へ入り、丸椅子に座る。


 「清浄」


はぁ~今日は疲れたなぁ、温かいお風呂に入りたよ。

まあ無理なんだけどさ。


諦めて軽装の普段着に着替える。

さて今日の夕食は、、。

宿の食事にしようか、パンと串焼きで済ますか。

悩んでいるよ。


結局は部屋で夕食をサッと済ませる。


 あぁ~!まだ暖かい串焼きが旨い。

 パンも旨い。

 このメーカーのレモンティーも甘酸っぱくて旨いなぁ。


ついさっきに、つい。 


 「創生」。


右手に冷えたペットボトルが現れた。

黄色いラベルのレモンティーだ。

消費魔力は、6減っていた。


60円程で買った事が有ったのかな、何時頃だ?。

魔力の残りはえぇ~と、チョコチョコ使ってるからなァ。


 魔力  48・227  


 今日は、後で35貯めても良いかな?。

 魔力を13残してれば、何も無いし大丈夫だよね。


もう寝る準備をして、明日に備えよう。

あっ!ギルドにスコップ返し忘れてるじゃん!。

明日お金を払って謝らないとイケないかな。


頭の中がグルグルしてきた。

あぁ~眠い。



次の日も朝から昨日の失敗を片付けて芋堀に励んだ。

その成果は野芋が12個だよ。

ヒビカさんは良い笑顔で俺の対応をしてくれた。

魔法袋の事は触れて来ないよ。


次の日も朝から芋堀だ。

成果は野芋が13個。

ヒビカさんはにこにこだ。


アルロ~!。

早く帰って来てヨ。


 

翌日、今日も13個。

俺は1人で4日続けて芋堀だよ。

流石に飽きて来たヨ、1日休むことにした。


 ヒビカさん明日はお休みにしますから。

 疲れたので野芋堀はしませんよ。

 自分用の買い物もしたいので休養日にします。


それを聞いたヒビカさんの顔は。

カウンター越しでも分る位に、ピシッと固まった。 



ギルドを後にして宿へ帰る。

宿泊代金の延長分を支払っておかないとかも。

あぁ~ヤル事が多いなぁ。


あぁ~だって、だってさ。

アルロが帰ってこないんだもん。


それに必需品の買い物だよ。

パンの補給と串焼きも多めに補給しないとね。

無いと俺のモチベーションが下がるんだ。


あぁダンケロさんの所にも行きたいなぁ。

俺用の防具の小盾の事も聞きたいよ。

孤児院にも行きたい。

あは!野芋も持って行かないとなぁ。

女性陣が大喜びするからね。

それにまたパンを買って夕食を共にしたいなぁ。

あの賑やかさが良いんだよなぁ。








そうだ!。

あそこにも報告に行かないとだよ。


皆が俺を待ってるじゃ無いかな。






アルロは帰らず。

さて、あっちは上手く行ってるのかな。

4人グループなんてさ良いよね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ