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大岩を目指して

あけましておめでとうございます。


区切るところを失敗したので、今回はいつもより短めとなっています。





 隕石を用意すると言っても、本物の隕石を用意する必要はない。

 ニーズヘックを押し潰せる物であれば何でもいいはずだ。

 そして、それに最適なものは森の中に沢山ある。

「まだ正式な発表はしておりませんが、空間魔法保持者が手を繋いだ状態で物を収納した場合、手を繋いだ全員分の収納分が合算される事が分かりました」

 ルビー達が旅の途中で発見した魔空間庫の容量増加方法だが、更に王都の父達が検証した結果、一つの物を全員で一度に収納すると、さらに人数分の容量が加算される事が判明した。

 つまり、三人で手を繋ぎ一人ずつ違う物を収納すれば、一人につき三人分の容量。

 三人で一つの物を収納すれば、合算分×三人分の容量となる。

「……………なるほど、つまりルビー嬢とサフィリア殿の二人で、馬車六十台分の大きさの岩を収納可能という訳ですね?」

「ええ。つまり、収納したそれを高い位置からニーズヘックに落とせばどうでしょう?隕石になりませんか?」

「なります!あぁ、何故今まで誰も思い付かなかったんだっ!」

 リースレットは悔しそうに叫んだが、騎士団所属の人間で魔空間庫を使える人間はそう多くない。

 魔空間庫を使える場合、騎士団に所属するより商人をやる方が遥かに実入りがいいからだ。

 そのせいで魔空間庫を所持していても容量の小さい騎士が多く、大岩を魔空間庫に入れようという発想が出てこなかったのだろう。

 ルビーが思い付いたのも、取り敢えず物なら何でも収納しようとするカンザナイト家特有の悪癖に他ならない。

「問題はどうやって真上から落とすかですが…」

 この岩場はちょうどニーズヘックの巣の背後にあるとはいえ、距離が微妙にある。

「それは騎士団で考えましょう。幸い風魔法が得意な騎士が数人おります」

「浮遊魔法ですか?」

「ええ。三人なら何とかなりそうです」

 その後、幾つかの確認をした後、リースレットは急ぎの伝令をエメラルド殿下へと向かわせる。

「どちらにせよ、一旦は殿下達と合流致しましょう」

「分かりました」

 捕まえた黒幕一味への尋問や、王女殿下とエリックにも話を聞かなくてはいけない。

 それにはまず、一旦この森を出て体制を立て直す必要がある。

「では、途中で奴らを回収してから森を脱出します」

 リースレットの指示で来た道を戻っていく。

 魔獣の襲撃が時折あるので気は抜けないが、張り詰めたような緊張感はもう無かった。




「あ~、やっと戻ってこれたわ~~」

 森を抜け、商隊が待つ野営地へと戻ってきた時はホッとした。

 流石に岩場まで登る羽目になるとは思いもしなかったのだ。

「お嬢、お疲れ様です」

「留守をありがとう、マイルス。何か変わったことは?」

「いえ、特にこっちは…」

 そう言いつつ、視線はミレーユが拘束されていたテントへと向けられた。

「尋問が終わったの?」

「そのようですね。騎士様が何とか落ち着かせて話を聞いたようです」

 落ち着いてからは素直に話しているらしく、特に手荒なことはされていないようだった。

 取り敢えず彼女のことはエメラルド殿下に任せる事にし、ルビーは隕石の準備を始めることにした。

「サフィ、さっき言ってた件だけど…」

「その事ならもう当たりはつけてあるよ」

 ルビーの言葉に、サフィリアは直ぐに地図を取り出した。

「クルーガとも相談したんだけど、ここにある巨大な大岩が最適だと思うんだ」

 サフィリアが指した場所は森の南西に位置する場所だった。

「ここなら森に入って直ぐの場所にあるから危険も少ない」

「なるほど…」

 今の野営地からは少し迂回する必要があるけれど、出来るだけ安全なルートを行きたいのでちょうどいい。

「騎士団で一番魔空間庫の容量が多い方は馬車五台分だそうよ」

「じゃあ、マイルスの方が多いな」

「ええ」

「お嬢、一体何のお話ですか?」

 不思議そうな顔のマイルスに事情を説明すると、彼は途端に目を輝かせた。

「さすがはお嬢。これでようやくアイツを仕留められますね!」

「そう出来ればいいんだけど…」

 勝算はあるが、それでも絶対に倒せる保証はない。

 殿下にも聞いたけれど、ニーズヘックの防御はかなりのものらしい。

「私達でダメなら、エル兄さんにお願いするわ」

 エルグランドの魔空間庫量ならそれこそ山の一つも収納可能だ。

 それならばさすがのニーズヘックも潰れてくれるだろう。

 本来なら日を置いてきちんと調査した上で最適な方法を模索するところだが、殿下曰く、急ぎこの案を実行する必要が出て来た、

 というのも、殿下が先ほど王女殿下を保護した際、間近で見たニーズヘックの卵に亀裂が入っているのを確認したからだ。

 割れるまでにはまだ少し猶予があると思われるが、最悪、エルグランドが間に合わない可能性が出て来た。

「殿下は出来ればこのまま仕留めたいようよ」

「では、早急に準備を致します」

 一番の準備は、魔空間庫に入れた荷物は全部出すことだった。

 時間停止機能のあるサフィリアの荷物が一番厄介だったが、ザルオラの氷魔法で何とかなりそうだ。その他にも男二人には見られたく無い物があったようだが、そこはクルーガが責任を持って預かってくれるようだった。

 そんな男達に呆れた視線を投げつつ、ルビーは殿下へと挨拶に伺う。

「これから大岩の確保に向かいます」

「護衛にスチュアート達三名を付ける。気をつけて行ってくれ」

「承知致しました」

「………カンザナイト、報酬は期待しておけよ」

 王女の尋問に頭が痛いと言いつつ、それでも殿下はそう言って笑った。



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