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CDロマン

作者: 時計堂
掲載日:2009/04/23

 私がいつも立ち読みに行っている古本屋『ブック●フ』。おそらく私は、ここではブラックリストに載っているだろう。そのぐらい立ち読んでいるのだ。小説、漫画問わず無差別に。最近は新書の立ち読みもはじめてみた。まあ、始められちゃあ堪んないんだろうけど。

 この日も古本屋に立ち読みに行っていた。いつも行っている棚に行くと、そっとマンガを読んでいるおばちゃんがスペースをあけてくれた。人が来たら、さりげなくスペースをあける。暗黙の了解のようなものだ。他にあるのかもしれないし、ただの私の思い込みかもしれない。まあ、底知れないところだ。

 おお、新刊が出回ってるじゃないか、と思い、一冊の漫画を手に取る。もちろん買わない。我ながらせこいが、中学生の財布は一般大衆が思っているよりもきつい。

 パラパラとめくり、流し読みしていく。実はこの漫画は一度読んだことがあったのだが、新刊ならついついもう一度読んでおこうという気になる。不思議なものだ。

 途中から飽きて、ページをぱらぱらとして絵を見ていく。と、漫画を持っている方手が、何か固いものを感じた。本の芯を見つけた、という感じだ。チラシかな、と思って見てみる。しおりのように挟まっていたのは、


 一枚の、CDだった。


 予想外のものが出てきたのにもかかわらず、私は落ち着いていた。なんだこれ、ぐらいにしか思わなかった。

 何も印刷されていなかった。いや、印刷はされていた。鈍く銀色に光るシートのようなものが、表に印刷されていた。

 突然、私はこのCDの中身を確かめないと、という衝動に駆られた。まあ、いわばただの好奇心。そっとバッグにCDをすべりこませた。隣のおばちゃんは見ていなかった……と思う。バッグは腰に巻くタイプのものだったので、手間取らなかった。

 さっさと店を出た。信号を待ちながら、これにはどんなものが入っているのだろう、と考えた。

 もしかしたら、店員さんが入れたのかもしれない。元の持ち主が売るときに、チェックしたはずだ。この店は検査が厳しいことで有名だし。いや、もしかしたら私のように立ち読みをしている人が挟んだのかも。どちらにしても、CDを挟むなんてわけがあるはずだ。

 ひょっとして、危ないものかな? 何かの取引が録画されていたりして。もしかすると、誰かにこれを取りに来させるように指示したのかな? それを私が偶然見つけ、持って帰ろうとしているとか。

 何かの脅迫するようなものだったらどうしよう。私は2●世紀少年の教祖っぽいものをかぶった男が、『息子さんは預かった』とか言ってる様子を想像し、わくわくした。

 もしそうなら、かわりに私が行ってやろう。何か身を守るものを持って行ったほうがいいかもしれない。フォーク何て結構危ないんじゃないだろうか。いや、そんなの持ってたら不自然だ。ハサミがいい。それなら不自然じゃない。金属製のものさしなども、結構危ないし。

 私は想像した。喫茶店に犯人に呼び出され、攫われ、同じく誘拐された御曹司の息子を救い出し、脱出する。もしかしたら表彰されるかもしれないな。御曹司から謝礼金がもらえる可能性だってある。いやー、マイホームが欲しかったんだ。うん、こうして考えるといいことずくめだ。危ないことも悪くない。

 いや、現実は甘くない。もし、もし私が死んでしまったらどうなるだろう。日記などが調べられるのだろうか。隠しておかなければならない。あんなもの見られるくらいなら舌を噛んで自害する。

 証拠を人に託すのが適切な気がする。友人の一人が思い浮かんだ。小五の時からの付き合いのある友人だ。

 よし、まず彼女に手紙を渡そう。何かあったら見てくれと言って。そして、証拠のCDは彼女の家の近くにある公園にでも隠そうか。うん、完璧だ。

 いや、ひょっとしたら取引の類が録画されているかもしれない。その場合は警察に行ったほうがいいのだろうか? けど、それじゃあこの万引きまがいの行為がばれるな……。

 うん、そうだ。買った漫画に挟まっていたということにしよう。大して不自然に思われそうにないし。

 そうこう考えているうちに、自宅のマンションについた。階段を上り、家に帰ると家には誰もいない。しめたと思い、ずれた眼鏡を直しながらパソコンを起動し、CDを差し込む。もしものため、イヤホンをつける。期待に、胸が高鳴った。

 さあ、何が入っているの?

 誘拐犯からの、脅迫?

 麻薬の取引?

 はやく、私を日常から連れ出して!



 耳元から、ゆっくりと女性の歌声が流れてきた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 最後のオチがものすごくよかったと思います! (軽く吹きました)
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