激レアだからって優遇されるわけもないんだ
気がつくと長い行列に並んでいた。周りを見るとクラスメイトに担任の先生が揃っている。周囲は薄暗い闇に包まれているのに、足元だけが仄かに明るい。避難訓練なんかあっただろうか。
いや、僕らはホームルームで文化祭で何をするのか決めようとしていたんじゃなかったか。明石が女装メイド喫茶とか言って、脇屋が男装執事も混ぜようとか言い返したんだっけ。決を採ろうとしたときに、大きな音とぶん殴られるような衝撃を受けたのが最後の記憶だ。
記憶を辿りながらも足は前に進んでいく。不思議なことにクラスメイトの誰もが話もせずに歩き続けている。授業中ですらボケをかます桂ですら、何も口にしていない。というか、生気の乏しい顔をして歩いている。これはひょっとして冥府への道行きなのだろうか。受けた衝撃の激しさを思うと、皆揃って死んでしまったのだろう。爆弾テロか、ガス爆発か。短い一生だったな。
長い間歩みを進めてゆくと、前方に門が見えてきた。前を歩く人たちは静かに門に入っていき姿を消していく。まるで、その姿としての役割を終えるかのように。冥府への門、長い行列の終点。そう思っているといきなり腕を引っ張られた。クラスメイトたちは僕が引っ張り出されたのに関心も持たず、門の中に進んでいき姿を消していった。
「まぁ、座れや」
声だけが響く。何かいるのだが、どのような姿かたちをしているのか全く認識できない存在の声だ。
「意識があるのはわかってる。あぁ、死んだっぽいのも認識してるな。」
まさかと思うが異世界転生のテンプレ?
「違う。お前の死因はギリギリで燃え尽きなかった微小隕石の直撃。立派な自然死だ。」
え、何その激レア死因。
「お前のほうが珍しい。普通、ここまできて意識を持っているやつは、『まだ自分は死んでいない』と考えているのが普通だ。」
僕自体が更に激レア。
死んでないと思ってたらどうなっていたんだろうと疑問に思うと、そういう連中は自分で行列を後戻りして生き返っているんだと。戻っておけばよかったかなぁ、でもあの衝撃受けてたら身体ぐちゃぐちゃだし、生き返っても不自由な生活にしかならないし、仕方ないのか。
いっそ門をくぐってたらよかったんじゃね?え、それだと魂魄だけ離れて舞い戻ってしまうからダメ。あ、はい。僕も幽霊になるのは嫌です。
「中途半端すぎるんで、ちょっと他所行って来いや。剣と魔法の世界な。あっちでの生での希望だけは聞いてやる。」
剣と魔法の世界って、貧弱だったら生き残れないよな。切られようが魔法で襲われようが、そうそう倒されないタフさが欲しいな。あと、できれば長生きできて温和に暮らせると。
「贅沢なやつだな。環境は考慮してやるから、頑張れや」
周囲の闇が光りだす。
「岩精霊としての生に幸多からんことを」
光に気を取られていた僕は、最後の言葉を聞き流していた。