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プロローグ 終わりから始まる旅路 ★
燃え盛る黄昏に世界は吞まれ、ひたすらの朱に染まる。
吹き抜ける風は乾き、草木が逢魔が時へ至るまでを、その影をもって刻んでいる。
蹄鉄が踏みつける荒野は、どれほど天の恵みを享受しようと満たされる事はなく、その際限の無い渇きと試練を以て、ありとあらゆる命を試す。
干ばつを以て草木を試し
草木を以て動物を試し
動物を以て人を試し
そして、人を以て龍を試した。
どれほど技術が発達し、また、世界に魔法が広まっても揺るがぬ不文律。誰も自然という絶対王者には逆らえず、その枠組みの中にあって争う事の愚かさを、神は悲しく見守るだろう。
これは人の、龍の、そして魔法の物語。
男は夕日へ馬を進める
その背に、横たわる少女を乗せて――