弱冠は何歳?
「転石苔むさず」は、英国や日本では悪い意味(コロコロ転職してたら、いつまでたっても玄人にはなれない、成長しない)ですが、米国では良い意味(転がり続けることで常に表面をピカピカにしつづける)と、正反対に捉えられているのは、文化の違いの例ですね。
「弱冠」とは、20歳男性のことのみを指す言葉なのですが、この「20歳」というのはどのような20歳なのでしょうか。
というのも、日本では戦中まで年齢は「数え年」が採用されていて、戦後に「満年齢」に変わったからです。
厄年は、神社などでは数え年で判断しているようですが、「弱冠」は同様に数え年で考えるべきか、現代風に満年齢で考えてしまうべきか、悩んでしまいます。
(まあ、古い言葉なのだから、数え年かな、と思ってはいますが。)
ちなみに、古代チャイナ(中国は生まれたての国だしここ数十年で国土をすごく広げているので、当時の「中央平原(仮称)」地域を指す言葉として中国とするのは誤りですので)の制度で、20歳男性を「弱」と呼び、戴冠式を行ったのが由来だそうです。
そして、余談(いや、こっちが本文?)
「若干9歳の女の子」とかいう表現が使われていますが、これは二重の勘違いによるものと考えられます。
「弱冠(20歳)」を「まだこんなに若いのに」という文脈で使われるのを見聞きして、「じゃっかん」とは「まだ幼いのに/若いのに」という意味だと勘違い。男性のみということも認識せず。
次に、「弱冠」ではなく、「若干」と勘違い。
若干はさほど多くない(一桁程度)というような意味なので、グルッと一周して意味が通じてしまいますが、文法的には正しくないですよね。
「わずか9歳の女の子」「たった9歳の女の子」などの表現が正解でしょう。
なお「弱冠9歳の女の子」は、根本的に間違いです。現代語訳すると「20歳男性の9歳の女の子」って、全く意味不明です(笑)
まあ、いずれは誤用が一般化しすぎて世間から「弱冠=男女問わず若いこと」が容認されるようになるのでしょうか。
(「なし崩し」の辞典に載っている意味と俗に解されている意味が正反対すぎる件について……)
ところで数え年を知らない人は、どのくらいいるのでしょうか?
ゼロの概念が無かったからなのか、生まれた瞬間に1歳、そして誕生日は無関係に(旧暦の)1月1日に1歳加算するので、大晦日生まれの子供は翌日には数え年の2歳です。満年齢なら0歳と1日。
1月生まれの人は、数え年と満年齢の差は約1歳、12月生まれの人は約2歳になります。
尋常小学校では、正月の校長先生の挨拶で「今日で皆さんはそろって1歳としをとりました」とか言っていたとか。
(太政官布告第36号(年齡計算方ヲ定ム 明治6年2月5日)や年齢計算ニ関スル法律(明治35年12月2日法律第50号)で満年齢を定めたのですが、世間一般では数え年のままだったようです。その後、年齢のとなえ方に関する法律(昭和24年5月24日法律第96号)で数え年から満年齢への移行を推し進めて現在に至ります。)
…………改めて弱冠について調べたら、弱冠の20歳は数え年だと明記されたものが見つかりました。