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螺旋の星  作者: びんぞこ
あくむ
6/9

act.2-1

【!注意!】少々(むご)い記述があります。

特に小動物好きさんはご注意&ご容赦下さいませ。

 ――『扉守(モルテ)』。

 真珠色の毛に(おお)われた優美な獣耳と尻尾。

 内側から輝くような、黄金色の髪と瞳。

 七部族で最も美しく、最も神と近しい者。

 父さん母さん、弟妹(ていまい)達や『内』の皆は『そう』生まれてきた。


 だけどボクは違う。

 ボクだけが違う。


 周りの目が怖くて、見えないように、見られないように、ボクは忌々(いまいま)しいその髪で世界を閉ざす。

村外れにある薄暗い物置小屋だけが、ボクの居場所。


 ある日、小屋の前に傷付いた小鳥が落ちていたんだ。

 ボクが拾い上げて看病すると、小鳥は元気になって、ボクの側へ居着くようになった。


 灰色の世界に()一条(いちじょう)の光。

 良かった。ボクにも出来る事があった。


「あなた、勇気があるのね」

 ある時、小鳥と外に出ていた所を『彼女』に見られた。

「……そんな事、ないよ。ボクは落ちこぼれの出来損ないなんだから」

「……あたしもその鳥の事は知ってたけど……助けなかった。そんな事をしたって、すぐ死んでしまうと思ったから……」

『彼女』は声を震わせ、黄金色の瞳からトパーズ(黄玉)の涙を(こぼ)した。

 ――それからだ。『彼女』がボクの所によく来るようになったのは。


「あたしはミリシャ。あなた、名前は?」

「……ボクはシュス。ミリシャ――って、ミ……ミリシャ……さ、ま!?」

 なんて事だ!! ボクは(あわ)てて平伏(へいふく)(ひたい)を地に(こす)り付けた。

 ミリシャ様。

顔はともかく名前だけなら、歩き始めた子供だって知っている。

「……み、神子(みこ)様とは知らず大変失礼致しました……!!」

「顔を上げなさい。あたしは(あが)められたくて名乗ったんじゃないわ――ねえシュス。あたしお友達になりたいわ。あなたと」


 それから夢のような日々が続いた。

 いや、夢だったらどんなに良かっただろう。


 ボクと小鳥の歌に合わせてミリシャが舞う。

 (くるぶし)まである彼女の髪が(おうぎ)のように広がり、薄衣(うすぎぬ)が命を吹き込まれたようにはためく。

 ミリシャはボクに、(おど)る事の楽しさも教えてくれた。体を動かすって、こんなにもワクワクする事だったんだ。


「シュス、あなたとっても上達したわ。きっと元から才能があったのね」

「違うよミリシャ。きみの教え方が上手いんだよ」

 二人、額を寄せあって、笑った。


 それから少しして――小鳥が、いなくなった。


 元から飼っているつもりは無く出入りも好きにさせていたから、いつかこんな日が来るとは思っていた。

 だけど。


 これは何だろう。


 ボクの足元に、布袋(ぬのぶくろ)が転がっている。

 (あか)い赫い、小さな布袋。


 ボクはそれを拾い上げて、恐る恐る中を(のぞ)いた。


 いる。否――『いた』。


 ボクの小さな友達。

 羽根を(むし)られて。

 こんなちっぽけな袋に押し込まれて。


 踏み(つぶ)された。


 きみが。

 きみが何をしたというんだ。


 小枝みたいにか細い足も。

 ボクを見上げた愛くるしい首も。

 くりくりとした宝石のような瞳も。

 もう動かない。二度と動かない。


 ――(ひど)い事を。なんて酷い事を――!!

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