act.1-1
――始めに、神は七つの御柱を地に打ち立てられた。
その土地は大いに栄え、後に八つの部族を生み出す。
すなわち、
『爪牙』
『冠角』
『鼓翼』
『風耳』
『弓魚』
『実花』
『扉守』
『 』
── ── ──
彼らは『外』の空気をまとい、三月に一度やって来る。
『内』には無い珍しい野菜や果物、肌触りの良い織物にきらびやかな装飾品を、大きな幌馬車に山と載せて。
そして子供達は皆、おじさんとその用心棒が語る、異郷の冒険譚が大好きだ。
……ギイギイ悲鳴を上げながら、都に向かって飛び跳ねるように走る幌馬車。
ボクはその隅っこに、色んな大きさの木箱に紛れ、膝を抱えて座っている。行商人のおじさん達に対価を払うどころか、断りを入れる事すらしていない。
いわゆる無断乗車ってやつだ。
理由は話せば長いし、悪いけど今はそんな気分じゃない。
吐きたい。猛烈に吐きたい。
「っふ……!!」
下から体を大きく突き上げられ、無様にひっくり返るボク。
もう何度目になるんだろう。木屑と乾いた泥の混じった床のせいで、白かったはずの上着はすっかり雑巾みたいになってしまった。むき出しの膝なんかとっくに真っ黒だ。
何とか大きな声は出さずに済んだけれど、次も、その次も、上手くやり過ごせる保証はどこにも無い。
何せ『内』を離れてからずっと悪路続きで、ボクはもう随分乗り物酔いと戦ってきた。
お尻の感覚は無くなるし冷や汗はひどいし、寝ても座っても世界がぐわんぐわん揺れているんだからたまらない。
だから幌馬車が急に停まっても、ああやっと休憩なのかな、位にしか思わなかった。
「……からよ、……っと……んだよ!」
「ああ? ……も、れは……」
壁一枚隔てたおじさん達の話し声は小さく、所々途切れて聞き取りづらい。しかもさっきから声が移動している……何か、トラブルでもあったんだろうか?
気になって腰を浮かせたその時、布を乱暴にはぐる音がして、車内に音と光がどっとなだれ込んで来る。
ボクは咄嗟に身を屈めようとしてかなわず、おじさん達とばっちり目が合った。
……合ってしまった。