政府官邸
佐藤和宏は、頭を抱えていた。
前内閣総理大臣を始め、多くの政治家が餓鬼病の猛威に晒された為、餓鬼病から晴れて生還した彼は、52歳と比較的若さで総理大臣に就任した。
「ああ。嘘だろ…。いくら近年未曾有の事態の連発だったとはいえ、こんなことあるかよ…!!」
「あったものは仕方がないですよ」
そう言って佐藤総理の肩を叩くのは、鈴木一副総理大臣である。
若干35歳とという若さでの任命は、有能なのはもちろんだが、餓鬼病から生還し、万が一もう一度掛かっても生還率高いという理由からだった。
「会議始まりますよ」
「分かってる」
鈴木副総理に促され、佐藤総理は、渋々イスから立ち上がり、内閣の各大臣が集まる会議室へ向かう。
「お待たせしました」
会議室の扉を開くと多くの目が佐藤総理に集まる。
「いやいや、我々も今来たばかりですので。ささ、会議を始めましょう」
そう微笑むのは、高橋龍之介外務大臣。
72歳と内閣最年長で、餓鬼病から奇跡の生還を果たしたお人である。
そして会議は始まった。
「私としては国家緊急事態宣言を発令するべきだと思いますがいかがでしょうか?」
「それでは不満が出ないか?」
「だが日本に資源は少ないのだから致し方あるまい」
「今更の地域も点在する以上、大きく文句は言えないだろう」
「独裁主義とマスコミが騒ぎ立てないか?」
「軍事主義だとも言われそうだな」
「独裁主義は安定するまである程度仕方あるまい。
軍事主義?見える範囲の大陸が消えたのにどこを攻めると言うのだ?」
「皆さん、それぞれ意見はあると思いますが、賛成者は手を上げてもらってよろしいですか?」
その言葉にちらほら手が上がり始め、最終的に10人ほどが賛成した。
「では、賛成多数と言うことで、国家緊急事態宣言を発令すると言うことでよろしいですね。
次に厚生労働大臣お願いします」
「はい」
返事をしたのは、田中理恵厚生労働大臣。
32歳と内閣最年少である。
「今回の異常事態により、輸出が盛んな車やカメラなどの大手企業や内部製品を輸出している中小企業、外資系会社や証券会社など多くの会社や企業で多数の失業者が出ることが予測されます。
失業者とその家族の保護に莫大な費用が掛かる見通しで、新しい仕事の斡旋が急がれます」
「まあ、そうだよね…。
次に農林水産大臣。」
「はい」
伊藤隆将農林水産大臣は、63歳。
「ええ、農林水産省としては、食料の危惧といった所でしょうか。
ただでさえ少ない自給率の中、近年の異常気象により、作物の収穫量は激減しており、災害に備えて他国から買っていたを含めて、支給制にして1年半が限界です」
「なるほど…」
前の見えない暗い先行きに思わず、皆の顔色も暗くなる。
「はい」
「うん?副総理大臣。」
「伊藤さん。農地は余っているんですよね?」
「ああ、そうだな」
「それでは、その農地に失業者を当てては?」
「でも、失業者に農業のノウハウなんてありませんよ?」
「グループ農業という形で、農業者監修のもと始めれば失敗も少ないと思います」
「だが、元々異常気象で育ち辛い」
「では、余った農地で農作物を作る人達と建物の中で人工栽培する人達に分けては?
倒産して無人になった建物の再利用にもなるでしょう?」
「確かにそれはいいな」
食べていけるかもしれない。
それだけで人は少し楽観的になれるのだと感じた。
「はい」
「環境大臣」
渡辺佳史環境大臣は、66歳。
「これを機に再生可能エネルギーへ転換しませんか?
日本には、石油、石炭、天然ガスなどない以上、この会社が立ち行かなくなり、大量のエネルギーを使わない時に転換すべきだと思います。
公共事業として産業も生まれますし」
「だが、再生可能エネルギーは安定しないのが問題だろう?」
「稼働段階じゃないだけで、過剰エネルギーの貯蓄も出来るようになっているし、逆にその不安定な部分を火力エネルギーで補強すれば問題ありません」
「確かに、補給出来ない枯渇エネルギーに頼り続けるより、再生可能エネルギーにシフトチェンジした方がこれから先、無くならないという意味で安心かもしれませんね」
こうして、多くの議題が登り、朝早くから始まった会議は、一応の対策が出来上がっていった。
政治に詳しくないのでどこの省が何やってるかよく分かってないので、おかしかったらすみません。