情報
朱色の巨大な鳥からの情報収集ははっきり言えば、空振りに近かった。
「ここは何という場所でしょうか」
『知らぬ』
「ここの位置はどの辺りでしょうか」
『知らぬ』
「貴方の種族はどこの集落に属して居りますか」
『私は一人だ』
この調子で何を聞いてもこれといった情報が出てこなかったのである。
せっかく会えた知的生物だが、だからこそ期待していた分落胆も大きかった。
「ダメか…」
「同じ種族の知的生物に会ったことはなく、その他情報もゼロですね」
加藤達がため息を吐くなか、下がった朱色の巨大な鳥は、傷が癒えるまで異西町で過ごすことになった。
そして、急ピッチで作られた巨大な小屋には、朱色の巨大な鳥以外に中村と山口、佐々木、小林が居た。
「おかえりなさい!」
その言葉が正しいのかは分からないが、暫くの間朱色の巨大な鳥が過ごすのだから正しいとしよう。
普通他人の家なら「お邪魔してます」だという現実は目をつぶろう。
『ああ』
短い返事だが、一気に雰囲気が軽くなるのが分かる。
本当に懐かれていやがると小林は、ふんわりと花でも舞っていそうな朱色の巨大な鳥の変化に頭が痛くなる。
懐くならば、佐々木さんにして欲しかったというのが、小林の偽らざる本音である。
「どんな話したのー?」
『何やらよく分からぬ小難しいことを言っておった』
「ふーん」
すでに朱色の巨大な鳥に対してタメ口の中村。
そして、上との会話をよく分からないと判断する朱色の巨大な鳥は、知性はあるが、精々会話ができる程度で、頭はよくないのかもしれない。
「そういえばさ、名前なんていうの?俺は、中村翔太」
『あれらも言っていたが、ナマエとはなんだ?』
「え…」
その質問に思わず固まる。
「もしかして名前ないの?」
「他の方からはなんと呼ばれてるんですか?」
『呼び名か。森竜は、テスと呼んでくるな』
「ドラゴン!?」
朱色の巨大な鳥、改め、テスの言葉に四人は声を揃えて驚いた。
『ふむ』
「ドラゴン!なにそれカッケー!!もっと教えてー!」
「ちょっ」
重要な情報を軽く聞き取ろうとする中村に小林が慌てて止めようとするが、テスは頼られたことに気をよくしたのか、誇らしげに鼻を鳴らす。
『森竜というのは、森に住むドラゴンの総称だな。ドラゴンは魔族の中でも最高峰の強さを誇っている為、森の守護者として君臨しているのだ』
その新事実の多さに思わず混乱しそうになる。
だが一番気になるのは。
「魔族?」
魔族。
地球では、悪の化身として人と対立するか、逆に悪の化身として人に迫害されていることが多い。
この世界ではどうなのかとドキドキしてしまう。
『ああ』
「魔族ってドラゴンをさすの?」
『いや、ドラゴンは魔族の中の一つの種族だな』
「他にもいるってことですか?」
『ああ』
「魔族ってどんな種族があるの?」
『ふむ、種族として魔族と呼ばれるものはドラゴン以外、我は知らん。純魔族などそうそう居らんからな』
「純魔族って何?」
『純魔族とは種族として魔族のものをさす。魔族の大半は我のように魔物が突然変異で知能を持ったものが多い。それ故に個体差が多いのも特徴だそうだ』
「個体差?」
『我は森竜にすらすら喋る割には周りに関心が薄いせいか、頭が悪いと言われた』
森竜からのあんまりな評価に思わず、なんとも言えずに戸惑う。
その中で、佐々木と小林は、やっぱりコイツ馬鹿だったのかと納得する。
『だからお前達の知りたい情報は知らぬ。我は生きるための知識があれば充分だったからな』
「へー」
その後も中村と山口が質問した情報を佐々木と小林が上にあげるためにまとめていく。




