ラジオ
包丁を使うのは、本当に追い詰められた時でいい。
それに、あくまで脅すためだけだ。
何か言われて、かっとならないようにしないと……
そんなことを考えながら、気づけば深夜だ。
「ふぁ~あ…… 俺はそろそろ寝るからよ、朝までにはしっかり書き上げとけ」
その日の狐火は、いつもと行動パターンが違った。
部屋から出ると、鍵をかけて外に出た。
「……家に帰ったのか?」
いつもなら隣の部屋で寝ているのに……
俺は、まさか狐火に包丁のことを勘づかれているのでは? と思った。
寝ている時は無防備だ。
その瞬間に襲われないようにしたんじゃないか?
「……でも、何でバレた」
盗聴器……
しかし、あの時俺は包丁という言葉は出していない。
となると、監視カメラか。
「調べてみっか……」
俺はカーテンを開けて、包丁を取り出し、月明かりを反射させて部屋を照らした。
すると、チラと光が跳ね返った。
「……くそヤローが」
不自然に飾られているモナリザの絵。
光ったのはその目の部分だ。
あそこにカメラが仕込まれているらしい。
「ダメだ…… 書くしかない……」
多分今後包丁での奇襲は通用しない。
警戒されてたら、あいつに敵うわけがない。
深夜1時。
俺は、気晴らしにネットを開いてラジオをつけた。
今泉レモンの下ネタラジオだ。
「これ、結構エロいんだよな」
学校でも聞いてるやつは多い。
このラジオのせいで、翌日寝不足って学生は多いハズだ。
「今週の朗読は、ちょっと変わった小説を読みま~す。 タイトルは、魔法使いで成り上がり」
俺は思わず声を上げた。
「おい、マジかよっ」
この小説にエロシーンなんてねーぞ!
そんな叫びをよそに、今泉レモンは朗読を始めた。