監禁
俺は狐火が買い出しに行ってる隙をついて、逃げ出そうとした。
しかし……
「な、何だよこの扉……」
サムターンが付いてない。
つまり、鍵が無ければ内側から開けられない仕組みになっている。
「くっそ、だったら」
今度は2階から飛び降りてやろうと、窓を開けた。
が、下はアスファルト。
落ちたら骨折は免れないだろう。
部屋にはロープの代わりになる物もない。
最悪だ。
後15分もしたら、狐火が帰ってくる。
10万字を書ききる自信がなかった俺は、最後の望みに賭けた。
隣の壁をドンドン叩き、助けて下さい! と叫び声を上げたのだ。
すると、隣から声が聞こえた。
「……頼むから、静にしてくれ」
……!
反応があった!
木造なのが幸いしたのか。
俺は、隣に聞こえるよう、事情を説明した。
「助けて下さい! 今、監禁されているんです! 小説を書かなければ、ここから出れないんです」
くぐもった声はこう言った。
「……じゃあ、書けばいいじゃないか。 僕は受験で忙しい。 もう、後がないんだ」
浪人生なのか?
せめて、警察に連絡さえしてくれれば……
「あの、だったら警察に連絡してくれませんか? 携帯無くって……」
「僕だってないよ。 直接警察に行く暇なんてないし」
隣の住人が寄りにも寄ってこんな薄情なやつだったとは……
だが、このまま黙っては引き下がれない。
俺は、助けてくれないなら叫び続ける、と脅した。
「……それだけはやめるんだ。 分かったよ、君の部屋の郵便受けにある物を入れておくから、それで何とかしてくれ」
しばらく経って、ガシャンという音がした。
俺は、郵便受けを調べ、隣りの住人が投棄したものを手にした。
それは、包丁であった。




