烏野サイド 2
ナツメ君と別れた後、僕はある人物に電話をかけた。
その相手というのは、とある週刊誌の記者で、名前は虻川だ。
「久々やんけ。 どないした?」
「実は、あるネタを手に入れてね。 是非使ってほしいんだけど」
「マジか! ちょうどネタ尽きてて困ってたんよ。 ナイスタイミングやで」
僕は、仲良先生が多額の投資までしてデビューさせたい作家がいる、ということを説明した。
「あの売れっ子作家の仲良がか? めっちゃ気になるやん!」
名前は今の時点では言えないが、イニシャルはN、とだけ答えておいた。
「仲良が目を付けたイニシャルNの謎の作家か。 これは、世間の注目度は結構高いんちゃう?」
「ああ、よろしく頼むよ」
その翌週、週刊誌の紙面にその記事が載った。
「謎の新人作家現る! 仲良が自費出版を支援!?」
自宅のマンションのベランダで、僕は週刊誌を読んだ。
「この調子だ。 後は、ナツメ君が話をどんどん更新してくれればいい」
スマホで小説家に〇ろうを開き、お気に入り作家の更新状況を確認するも、魔法大国で成り上がり、が更新されていないことに気が付いた。
「……どうしたんだ。 ナツメ君」
自費出版とはいえ、書籍化がほぼ約束されているのに、モチベーションが上がらないのか?
その時、着信が入った。
「仲良先生からだ…… これは、思惑通りの展開になって来たぞ」
電話に出ると、これはどういうことですか? と問い詰められた。
もちろん、週刊誌の件のことだ。
「……週刊誌の書くことなんて、真に受けても仕方ないですよ」
「よくそんなことが言えますね。 僕の名前を使って、あんな記事を書かせるなんて…… あなたのような人に、出資はできません」
「……いいんですか? 仲良先生、僕はあなたの絶対に知られてはいけない秘密を知っている。 あなたが売れるきっかけになった花火。 あれは、元カノの彩子さんの作品だったんですよね?」
「な、何でそれを!」
仲良先生の急所を突いた。
これで、仲良先生は僕の言いなりだ。
「先生と彩子さんは元々本が好きで意気投合し、付き合うことになった。 しかし、作家としての才能は彩子さんがずば抜けていた。 あなたは、彩子さんが応募しようとしていた作品の花火を盗み、先にそれでデビューしてしまった。 ショックを受けた彩子さんはあなたの元を去った。 すべて、知っています」
なぜこのことを知っているのか。
これは本当の偶然だ。
彩子さんは小説家に〇ろうに登録しており、僕がお気に入りしていて、たまにメールのやり取りをしていた。
ある日、彩子さんは自分が実は仲良先生の元カノで、花火は自分の作品だった、ということを話してきたのだ。
「仲良先生、このことを踏まえて、一つお願いがあります。 次のハレトークで、小説大好き芸人に出演されますよね? そこで、ナツメ君の話を出してもらいたい」
「それで…… 秘密は守ってくださるんですね?」
「もちろんです」
これヤバイですかね?汗
不快に思った方がいたら、消します