烏野サイド7
ハレトークの平均視聴率は約10パーセント。
1パーセントで約40万世帯が見ているから、ナツメ君の小説は、大体400万世帯の目に止まることになる。
その中でも、ラノベに興味ある人間は1パーセントにも満たないだろうが、それでも4万だ。
僕はそこから4人に1人は買ってくれるだろう、という期待を込めて1万部、印刷することに決めていた。
もし、この作品がヒットする、とラノベファンが察知したら、これは間違いなく買いだからだ。
そして、十分にそのおぜん立てはできたと思う。
僕の理想としては、ライトノベルで書籍ランキングの1位を狙うことだが、処女作で、しかも有名な章も取っていないこの作品では、やはり厳しい、というのが本音だった。
それでも、ラノベでヒットといわれる5万部は無理にしても、1万部なら売る自信はある。
経済産業省の調べで、全国にある書店の数は約12500、都内には約1500の店舗が存在する。
僕は、この都内にできるだけ本を置くことにした。
やはり、流行の発信地は東京の秋葉原であり、ここから口コミが広がり、全国に拡散していく。
秋葉原の店舗にはできるだけ多くの本を置いてもらうことにした。
そして今日、書店に本が並ぶ。
今僕は、秋葉原にある書店の前に立っていた。
「さあて、今日は記念すべき、ナツメ君のデビューの日だ!」
僕は書店に入り、早速ラノベコーナーに向かった。
この秋葉原の書店は、割と一般の客層ばかりで、ラノベコーナーは言うほど大きくはない。
「あったぞ……」
僕は、平積みされている魔法大国で成り上がり、を見て、震えが来た。
ここから、ビッグウェーブが来るんだ……
漫画化から始まり、アニメ化、ゲーム化、フィギュア化、トレーディングカード、映画、その他もろもろ。
我ながら、よくここまでこぎつけたと思う。
そりゃあ、文章を書いたのはナツメ君で、宣伝したのは仲良先生だ。
でも、僕の力がなければ、ここに本は並んでいなかっただろう。
僕は、さりげなくこの本を手に取り、他のラノベの上にそっと置いた。
全ての平積みされている本が、魔法大国で成り上がり、になった。
「……絶対に、売れるんだぞ!」
それから1週間が経過した。
魔法大国で成り上がり、のブックマーク数は4万に達した。
当初僕の思い描いていた通りの数字だ。
内容は面白い。
だから、少なく見積もっても1万部は余裕で売れるはずだ。
僕は、自宅のマンションのソファに座りながら、ある所に電話をかけた。
「もしもし? あ、私、烏野と申します」
僕がかけたのは、例の書店だ。
どの程度本が売れたのか、待ちきれずに電話をかけてしまった。
「はい、魔法大国で成り上がり、の売り上げをお聞きしたいのですが……」
この書店には10冊、おいてもらっていた。
1週間もあれば品切れのはずだが……
僕はドキドキしながら、書店員の返事を待った。




