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作家の条件  作者: oga
13/15

オンエア

 ようやく20話が仕上がり、俺はアパートから出ることが許された。

外に出て、ふうーっと深呼吸する。


「なあ、家に帰ってもいいよな?」


「……約束だからな。 ここで次の話を書いてっても構わないけどな」


 冗談じゃない!

俺はとっとと家に帰ることにした。

二度とこんな所には来ない。

しかし、俺の中で、もう一つの感情が芽生えていた。


「あの本を読んだ人は、どう思うんだろう……」


 途中まではありふれた内容だけど、オチがぶっ飛んでいる。

作者は頭がおかしいんじゃないか? そんな風に思われるかも知れない。


「……やっべ、ちょっと反応が楽しみだわ」


 まるで、友達にイタズラを仕掛けた時の快感に似ている。

今までにないストーリーを公開するのが、こんな楽しいとは思わなかった。

第21話で行き詰まるかも知れない、そんな怖さがあったものの、考えてみれば、小説は何でもアリだ。

俺は、次の話を早く書きたい、という衝動を抑えられずにいた。





 今日はハレトークのオンエアの日だ。 

自室でその時を待っていた。

本は既に仕上がっており、オンエアの翌日に書店に置かれることとなる。

そして、番組がスタートした。


「さて、続きまして、この一冊! のコーナーです」


 芸人がおすすめの一冊を持ち寄って紹介するコーナーで、最後に仲良先生の番だ。

俺は食い入るようにテレビの画面に見入っていた。


「えー、僕がおすすめするのは、魔法大国で成り上がり、です」


 司会の2人が表紙に食いつく。


「意外っすね。 何か、アニメちっくな絵ですやん」


 仲良先生と言えば、昔の文豪の本だったり、そういったものを好んで読んでいる印象だ。

まあ、これは仕込みで、実際仲良先生のおすすめする本ではないのだけれど……


「そうですね。 最初読み始めた時は普通だったんですけど…… 初めに言っときますと、読後感、最悪です」


 仲良先生が苦笑いしている。

これは素の感想に違いない。


「えっ!? 何でそんな本おすすめしたんっすか」


「ただ、面白いは面白いんです。 このナツメって作者は、頭のネジが飛んでるんだと思いますね。 ラノベなら何してもいいんかいっ! て思います。 でも、面白いんです」


 ……おい、暴言吐きすぎだろ。

でも、面白い、を連呼してる。


「この作品、見かけたら是非手に取ってみてください」


 こうして放送は終わった。

いよいよ明日、本が書店に並ぶ。

今夜は、眠れそうになかった。






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