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異世界転生からの異世界召喚~苦労人系魔王の新人冒険者観察~  作者: へたまろ
第4章:役不足だからとパーティを追放されたミコとカナタの観察記

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第3話:氷の魔術師アシュリー

「どうする? 引き返した方が良いんじゃないか?」


 フーガさんが、リチャードさんに問いかけているけど。

 リチャードさんは、首を横に振る。


「いま引き返したら、ミコに追いついちゃうだろ? なんか、恥ずかしくないか」

「いや、恥ずかしいとかじゃなくて荷物もそんなにもってないし、帰りのことを考えたら食料も心許ないからさ」

「リーダーが、食料を大量にミコの鞄に突っ込むから」


 アシュリーさんが呆れたように突っ込んでいるけど、そうなのか……

 私の鞄には、大量の食糧が入れられているのか。

 えっ?


 じゃあ、フーガさんの鞄に入ってるのって……


「いや、一人じゃ大変だし……敵を避けながらだと、時間が掛かるだろ? だから、食料は多めに入れておいた」


 そうなんだ。

 なんだかんだで、リチャードさんは優しいんだよね。

 でも、ここでその優しさは命取りじゃないかな?

 だって、私は一人だし。

 私が持ってきた食料は四人分だし。

 その大半をこっちに渡すって、どうなの?

 私も流石に、来た時の四倍の時間を掛けるつもりはないし。

 そもそも、道は完璧に分かるから来た時ほど時間は、掛からないし。


 うん、リチャードさんは優しいけど、抜けてるところがあるから。

 

「そんなに心配かな?」

「うん、心配というか……別れて、一時間も経ってないのに不安しかない」

「一人にされたことがか? 俺がいるのに」

「いや、リチャードさんたちが、ちゃんと生きて戻られるかが不安……いや、ちゃんと生活できるかすら不安」

「すっごく、馬鹿にしてない?」

「馬鹿にしてるんじゃありません! ただ、生活能力が恐ろしく低いんです」


 私の返事に、カナタさんがあきれ顔だ。

 まあ、ソロの冒険者からすれば、自分のことが自分でできない人達なんて論外なんだろうけど。

 そのために、私たちポーターという仕事があるのだ。


「いやぁ、ミコちゃんは過保護すぎると思うよー」

「見てきたようなことを、言わないでください」

「いま、現在進行中でその結果を見せられて、噛み締めてるんだけど?」


 そう言われると、反論できないかもしれない。

 だって……


「ミコ、ごめんファンデ取って」

「俺でごめん……あと、ファンデってなに?」

「あっ……」


 すでに、アシュリーさんが自分の化粧品を、フーガさんに頼んでる。

 私と勘違いして。


「いや、なんでダンジョンで化粧直し?」

「あー……アシュリーさんの場合、乾燥肌なので保湿効果の高いファンデーションが必須なんです。肌が乾燥すると痒くなって、集中力が乱れるとかなんとか」

「余計に悪そう。保湿クリームでも塗っとけばいいのに」

「そこは、女の子ですから」

「冒険者なのに」


 カナタさんが、すっかり呆れた様子です。

 いや、私も最初の頃は少し呆れてましたが。

 詠唱途中に痒い所を掻いて、詠唱を中断するのを見て色々と気を遣うようになりました。

 こういうのは、本人にしか分からないんだと思います。


「てか、ミコがいないとやっぱり不便」

「そもそも、ダンジョンで置き去りにする意味あったか? 何のために」

「あー……あいつ自己評価が低いだろ?」

「そうか?」


 フーガさんの疑問に、リチャードさんが頬を掻きながらポツポツと答えを返し始めます。

 というか、自己評価が低いとか思われてたのは、心外です。

 私のことを買いかぶりすぎですよ。

 見たままの評価で、十分です。


 なんですか、カナタさん?


「ん-? いや、あの金髪の言う意味が、よく分かるからさ」

「何を言ってるんですか? 出会ったばかりの人が」


 そもそも、カナタさんの前で卑屈になった姿なんか、見せてもいないのに。

 何を言ってるんでしょう?


「あれだけの大荷物を持って移動して、どこでも美味しい料理が作れる」

「ああ、ミコの料理は絶品だったな」

「それに、私のケアも抜群」

「いっつも、マッサージしてもらってたもんな」


 なぜ彼らはダンジョンで、思い出話を始めたのでしょうか?

 緊張感をもって行動しないと、怪我に繋がりますよ」


「俺たち、危ない場面にあったことないだろ?」

「ああ、まあそこそこ実力があるからな」


 そうです!

 彼らは新進気鋭の若手のホープ。

 A級冒険者パーティ、英雄戦線なのです!


「事前にミコが注意してくれてたからよ! 散敵能力も以上に高いし」

「罠の察知能力も、正確だし」

「ポーターならそのくらい、普通じゃないのか?」


 そうです、普通ですよ。

 あと喋りながら歩いていると危ないですよ?

 フーガさんの目の前に、落とし穴が仕掛けられてますが。

 気付いていなさそうですね。


「うわっ!」

「ちょっ、【氷壁(アイスウォール)】!」


 落ちてすぐにアシュリーさんが氷で足場を作ったおかげで、酷い事にはなりませんでしたが。

 そういうところですよ、フーガさん。

 いつも注意力が散漫で、負わなくてもいい怪我を負いそうになるのが玉に瑕ですね。


 なんですか、そのジトっとした目は?

 カナタさんが私を見る目が、少し厳しいです。


「ミコが優秀で、甘やかした結果だな」

「私のせいですか?」


 それこそ、心外です。

 私なんかいなくても、彼らは凄いんです!

 ほらっ、凄いところを見せてください。


「とりあえず、休憩にするか。いつもより、疲れやすい気がする」

「まあ、いつも丁度良いタイミングで、いつもミコが水とか渡してくれてたからね」


 アシュリーさんが、自分で水筒を取り出して水を飲んでます。

 ほら、やればちゃんと出来るんです!


 ……カナタさんの視線が、かなり冷たいですね。

 アシュリーさんの氷魔法より、冷たい気がします。


「飯はどうする?」

「ん? 干し肉とパンだけだぞ?」

「ええ? なんで、そんな冒険者みたいな食事なんだ?」

「誰も料理が出来ないからな。調理道具も、ミコの鞄に入れておいたし」


 私、一人で帰らないとなのに荷物多すぎませんか?

 いや、だいぶフーガさんの鞄に移したから、重くはないですけど。


「重くないって……50kgはあるぞ、その鞄」

「人の心の声に、返事しないでください」


 この人も、大概変態だと思います。

 なぜ、こうも思ったことに対して、的確な返事が返せるのか。

 謎ですね。


「しかし追放側がざまぁ対象にならないと、面白味が無いな」

「人の危機を、面白がらないでください」

「お人よしだなぁ……」


 何が言いたいのか分かりませんが、人の不幸を楽しんじゃだめですよ!

 怒りますよ。


「なんか、ミコちゃんって……」

「なんですか?」

「お母さんみたいだね」

「……そんな歳じゃないです」


 そういう意味じゃないって顔をされてますが、子供なんか持ったことも無いです。

 失礼ですね。


「ミコは、一人で大丈夫かな」

「大丈夫よ! さっき、リーダーたちに渡した身代わりの護符。 あれ、五枚ほどこっそり鞄の生地の裏に、縫い込んでるから」

「えっ? 俺たち、一枚ずつしかもらってないけど……」

「当たり前でしょ! あんな高価なもん、一枚でも貰えただけ感謝しなさいよ」


 ……いま、たぶん私は物凄く驚いた顔をしていると思います。

 身代わりの護符……一定量以上のダメージを、代わりに受けてくれる護符です。

 元となる護符が、金貨で10枚……

 それに魔法使いの方が、魔力を相当量込めないといけないアイテムです。

 アシュリーさんでも、一枚作るのに三回は魔力枯渇に陥るレベルです。

 そののちに教会で祝福を受けて、聖水に浸して乾燥させて完成です。

 さらに対象の登録に、対象者の身体の一部が必要だったはず……


 うん、前髪を切ってくれましたね。

 このダンジョンに挑む前日に……そうですか。

 

「チッ、愛されてるなー」

「いや、最初の舌打ちはなんですか?」

「もっとこう、ふざけて調子に乗った奴らが、コミカルに痛い目に合うのを想像してたのに」

「なんて、嫌な性格をしてるんですか!」


 カナタさんと一緒に、リチャードさんたちを追いかけたのは失敗だったかもしれない。


「ミコ! 足、マッサージして! むくんで仕方……「それは、流石に俺じゃ代われんぞ?」」


 そして、アシュリーさん……いい加減、私がいないのを理解してください。

 普段から、どれだけ人任せだったのかがよく分かります。


「人任せなんじゃなくて、ミコが甘やかしすぎた結果だぞー」

「うるさいです!」


 あっ……初対面の人なのに、怒鳴ってしまいました。

 本人がニヤニヤとしているので、思わず肩にグーパンしてしまいました。


「流石の膂力だな……プロボクサークラスだ」

「ちょっと、何を言ってるのかが分かりませんが、褒められていないことは分かります」

「褒めてるんだけど? やっぱり、自己評価低いじゃん」


 

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