第1話:プロローグ パーティ追放されたった
「聞こえなかったか? もう、お役目御免ってことさ」
「ああ、ミコ……あんたにゃ、役不足ってことさ」
「俺たちA級冒険者パーティ、英雄戦線のポーターが一番のお荷物なんて笑えねーんだよ」
ああ……なんで、こんな酷いことを。
今まで、一生懸命頑張ってきたのに。
「だからさ……ここで、お別れだ」
「痛い!」
すがりつく私を振り払うリーダーのリチャードさんの目は、まったく感情を伴っていない冷たいものだった。
「せいぜいこっから一人で帰れるように、神にでも祈るんだな」
そう言って、私はダンジョンの奥に置き去りにされた。
置き去り……置き去りではあるけど……
英雄戦線の人達は、さらに深部を目指して進んでいったから……
置き去りは、置き去りか。
置いて帰られるよりは、マシなのかな?
「酷いなあ……仲間を置いていくなんて」
「誰っ!」
そして、背後から声を掛けられて驚いた。
こんなところで、一人ぼっちの元ポーター。
最悪なことに、邪魔になりそうな荷物は私に押し付けられている。
だから、多少なりとも使えるものを持っている可能性は高い。
こんな場所で、声を掛けてくるなんて怪しい人に違いない。
「に……荷物は、渡すので許してください」
「はっ? いや、何か勘違いしてるみたいだね?」
「えっ? 私の荷物が目的じゃないんですか? それじゃあ、もしかして私の身体が!」
「君は、男の子だろ?」
「いや……まあ、その……はい」
なんか、微妙な気持ちになった。
女でポーターって、馬鹿にされることが多いから。
男みたいな格好してるけど。
そのまま受け取られたのが、久しぶり過ぎて。
なんか、不本意。
「まあ、いいや。とりあえず、どうする? 君一人じゃどうにもならないでしょ」
「その、貴方は?」
「ん? カナタっていう、しがないB級冒険者さ」
そう言って、一瞬だけギルドカードを見せてくれた。
ステータスまではよく見えなかったけど、四桁っぽいのが並んでた気が……
「どうせ暇だから付き合ってあげるよ」
「えっ? ナンパ?」
「うん、そうだよ! デートプランは二通り用意してるからね? このまま、真っすぐダンジョンの出口に向かって帰るパターンと……」
なぜ、そこで溜める。
怖いんだけど?
「このまま、先に進んであの人たちを観察して、ニラヲチするパターン」
「いや、ニラオチってなんですか?」
「ん? これから七難八苦が降りかかるだろう彼らを、影ながらニヤニヤしながら見守ることだよ」
なんかこのB級冒険者、性格が悪そうなことを言ってるんですけど?
大丈夫なのかな?
年齢は40後半くらいかな?
胡散臭いよね。
まず、服装。
タキシードにシルクハット。
天然パーマの黒い髪の毛と、無精髭が殊更胡散臭さを演出している。
手には、鷲の乗ったステッキとまで来た。
そもそもこんなところにいるのに、なんで手袋が純白のままなのかが気になって仕方ない。
「この先に進めるんですか?」
「ああ、俺なら荷物が一人くらいいても、問題なく進めるさ」
胡散臭いけど、この先には興味がある。
リチャードさんたちが、ちゃんとやっていけるのかとか……
洗濯もまともに出来ない、料理もできない。
お片付けもちゃんとできない人たちが……
ダンジョンで、食料の管理が適切に行えるかも怪しい。
下手したら、傷んだものとか食べそうだし……
装備の脱着も、一人じゃ怪しいのに。
セーフルームで、休むのも無理っぽい。
魔法使いのアシュリーさんとか、色々と困ることが多いと思うんだけど。
女性一人になるわけだし、そして家庭的なことが何もできない人なわけだし。
剣士のフーガさんも、いい加減だからなあ。
剣とか、すぐに錆びさせそう。
なんなら、このダンジョンにいる間にすら……
「色々と、心配そうだね?」
「はい……出来れば、先に進んで……彼らを見守りたいです」
そして、私はこの言葉を後悔することになる。
その先で、感謝することにもなったけど……




