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異世界転生からの異世界召喚~苦労人系魔王の新人冒険者観察~  作者: へたまろ
第3章:ジュブナイルとチョコのダンジョン攻略

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第11話:ビルドのダンジョン6階層~

「【小回復(ライトヒール)】ってどのくらいの怪我までなら大丈夫なんだろう?」

「お前は後ろな」


 いつの間にか先頭を歩き出したカナタの襟首を掴んで、後ろに下ろす。

 やはりガキだな。

 片手で持ちあげられる程度に軽……軽すぎじゃね?


「えーっと、軽い裂傷くらいなら塞がります。骨折や、深い傷は無理ですね……まあ、深い傷であれば何回かかければ治りますが、傷跡が残ります」

「ふーん」

「おいっ!」


 いつの間にか、掴んでたのが人形に変わっていた。

 カナタと顔にデカデカと書かれた。

 聞いた事あるぞ。

 変わり身の術って奴だな。

 うん、無職もとい忍者!

 ちょっと待て!


「お前、絶対に無職じゃないだろ?」

「うーん? 無職だよ?」


 のほほんと、腕を頭の後ろに組んで振り返る少年。

 意外と様になってるが、正しい戦力を把握しないといざという時に困るぞ?

 俺が。


「じゃあ、ちょっとは無理しても大丈夫?」

「えっ? いえ、私の魔力量だと精々3~4回が限界かと……」

「ああ、それは大丈夫! マジックポーションいっぱいあるから」

「えっ?」

「はっ?」


 マジックポーション。

 文字通り魔力を回復させるポーションだ。

 目玉が飛び出すほどではないが、高級品だ。

 たくさんある?


 2~3本くらいか?


「えっと、そんな価値のあるものを無駄遣いするわけには」

「大丈夫大丈夫、鞄にいま500本入ってるし。足りなければ、どんどん作れるし」

「言ってる意味がわからん」

「おじさん馬鹿なの? 鞄に500本入ってるの! で、無くなったら作ったら良いじゃん?」

「そういうことじゃない」


 思わず頭を抱えたくなる。

 言葉の意味くらい分かるわ!

 分からんのは、どうすれば500本もマジックポーションが手に入るかってことだ。

 あと、作るとか……


「おまえ! 薬剤師か! そのスキルはドーピングか?」

「やっぱり馬鹿だった……無職! これ3回目!」

「マジックポーションって、結構製法が面倒らしくて大きなお店でも在庫が100本あれば良い方って……」


 良かった。

 チョコはコッチ側だった。


「まあ、作れるならたくさんあってもおかしくないか」


 いや、無職が作れる時点でおかしいだろ!

 チョコもあかん奴だったわ。


「そろそろ敵のランクが上がって来るね? 気を引き締めて」

「誰のせいだ!」


 思わず怒鳴ってしまった。


「おじさん……大声出しちゃだめだよ?」

「知ってる!」


 また怒鳴ってしまった。

 そして、聞こえてくる足音。

 速度が結構ある。


「コボルトの職持ちだね?」

「ああ……俺がや「じゃあ、チョコさんメイス構えて」」

「えっ?」

「はっ?」


 なんでもない風にチョコに押し付けようとするカナタ。

 ちょっと待て。

 駆け出しの治療師にどうこうなる相手じゃないだろ。


「大丈夫だって! 僕に任せてよ!」

「ああ、手伝ってくれるんですね」

「いや、低レベルの無職と治療師でどうこうなる相手か? っていうか、カナタ武器は?」

「うん? やるのはチョコさんだけだよ? 僕は指示するだけ」

「えっ?」

「はっ?」


 何がどう大丈夫なんだ?

 いや、無理だろう。

 仮にカナタが加わっても……なんとかなりそうな気がしてきた。

 いや、そうじゃない。

 

 チョコ一人で、職持ちのコボルト……しかも一体じゃねーぞこれ!


「いや、ふざけんな! 死ぬぞ! 俺も「大丈夫だって」」


 イラッ!

 もういい、こいつの事は無視して俺も手伝う。


「あっ、チョコさんメイスを上に振り上げて」

「えっ? はいっ!」

「ギャッ!」


 カナタに言われた通りに、チョコがメイスを振り上げた瞬間に上から不意打ちを狙った吸血蝙蝠が落とされる。

 思わずあっけに取られる。


「来るよ!」


 っと、ぼうっとしてる場合じゃない。

 てか、思ったよりかなり早い。


「いま上げてるメイスを、振り下ろしながら一歩下がって」

「えっ、はいっ!」


 チョコが言われた通りにメイスを振り下ろしながら、後ろに下がる。


「ギャッ!」

「痛い!」


 チョコのメイスが剣を持ったコボルトの頭を粉砕すると同時に、チョコの頬のあたりをすでに突き出されていた剣が掠める。


「回復」

「えっ? この程度の怪我で?」

「口答えしない! 回復!」

「はいっ! 【小回復(ライトヒール)】!」

「左足を下げて半身を反らして、メイスを斜め上に振る!」

「はいっ!」

「ギャッ!」

「痛い!」


 遅れて来たコボルトの突きを躱すような形で、チョコのメイスのドラゴンの翼がコボルトの喉元に突き刺さる。

 同時に死ぬ間際に放たれたコボルトの突きが、鼻先を掠めて怪我をするチョコ。


「回復」

「えっ?」

「あっ?」

「ひいっ! 【小回復(ライトヒール)】」


 すぐに次のコボルトがやってくる。

 今度のコボルトは斧を持っている。

 どうするんだ?


「前に出ながら、メイスを振る!」

「前って! 斧が!」

「ああもう、一旦下がって!」

「はいっ!」


 チョコが下がったところを斧が通り過ぎる。


「すぐに前に出て、メイスを突く!」

「えっ!」

「ああ、下がれ」

「ひっ!」


 またも、カナタの前に出ろって指示に躊躇したチョコが、慌てて後ろに下がる。

 コボルトの持つ斧が空を斬る。


「1秒後に前に大きく一歩出て、メイスを振る! いま! 行けやグズが!」

「ひっ!」

「ギャッ!」

「いたーい!」


 チョコのメイスがコボルトの額をかち割る。

 と同時に斧がチョコに襲い掛かる。


 だが、当たったのは刃の部分ではなく柄の部分。

 側頭部に当たって、よろめいている。


「回復! あと、残り2体くるからおじさん宜しく! チョコさんにマジックポーション飲ませるから」

「お……おう」


 すぐ後ろに控えていた槍と剣を持つコボルトに対して、攻撃をしかける。

 コボルトの振り下ろしてきた剣を柄頭で弾いて、そのまま首を狩るとコボルトの持つ剣を奪う。

 そして、槍を構えていたコボルトの額に投げつける。


「ギャッ!」

「流石!」


 後ろから、賞賛の声が聞こえてくる。

 カナタが手を叩きながら近づいてくる。


「あ……、ああ、有難うよ……ていうか、チョコ怪我してるじゃないか! お前の指示に従ったのに!」

「怪我してないよ?」

「いや、二回も斬られて、最後は思いっきり殴打されて「怪我は、してないよ?」」


 う……怖い。

 ガキの癖になんてオーラ出しやがる。


「チョコさん、どこか怪我してる?」

「えっと、頬、鼻先と「今の話」」

「いえ、今は回復したので怪我はないですが」

「ねっ?」


 ねっ?

 じゃねーよ!

 結果的に怪我してないだけで、思いっきり怪我してたじゃねーか!


「だが、一歩間違えたら大怪我どころじゃ「流石に一歩は間違えないよ?」」

「ん?」

「数cm……いや、数mmくらいの誤差は……無いか。1μ(ミクロン)くらいの誤差はあるかもしれないけど、流石に間合いを1歩分間違えるとか、ある訳ないじゃん!」

「えっ? いや、そういう意味じゃ……」

「丁度、【小回復(ライトヒール)】一回分の怪我だしね? 回復量の確認のためにちょっとずつダメージ増やしてたけど、結構大丈夫じゃん」

「えっ? あの……はっ? 馬鹿野郎! そんな事して、怪我じゃすまなかったら「はいっ」」

「ん?」

完全回復薬(フルポーション)、これがあるから大丈夫! 部位欠損だろうが、状態異常だろうがこれを飲むか掛ければ、即完治! なんなら、古傷だって治しちゃうやつ! それに、いくら即死つっても完全に生命の活動が停止するまで数秒の余裕はあるから、その間にこれを振れば良いし。だから、基本的に死なないよ?」


 カナタの手に握られた緑色の液体……緑色?

 どこかで……


「ブッ! おまっ、それ俺の脛の怪我直したやつじゃねーか! そんな高級品だったのか!」

「沢山あるし」

「あ……ありえん」


 部位欠損まで治せるタイプのフルポーションなら、一本ででかい街に屋敷が買えるんだぞ?

 それが、たくさん?

 もう、普通にそれ売って暮らしてけよ。


 ってそうじゃねー!


「どういう意図がしらねーが、俺達パーティ組んでんだよな?」

「うん、そうだね」

「仲間を簡単に危険に晒すような奴と、組めるか! 俺は下りるぞ!」

「えー? 駄目だよ!」

「ガキが調子に乗ってんじゃ……」

「ガキじゃない。冒険者だ」

「チッ……」


 なんてガン飛ばしやがるんだよ。

 思わず、目を背けちまったじゃねーか。


「チョコちゃんは、もう嫌だ?」

「えっ?」


 遠くでへたりこんでたチョコが急に話題を振られて、戸惑う。


「正直に言ってやれ!」

「わ……私は……」


 チョコが思わず口ごもる。

 カナタがどうせ脅してるんだろう。

 このガキは。


「おじさん、目が怖いよ? チョコちゃんが怯えて返事出来ないって」

「いけしゃあしゃあと!」


 あっ……いや、俺もチョコを睨みつけてたわ。

 カナタは……笑ってるけど、目が笑ってねー。

 こえーよ!

 睨んでた、俺が言えることじゃないが。

 うん、ここは優しい微笑みで、チョコの緊張を解きほぐして本音を引き出す場面だな。

 ついでに、俺もリタイアできるしな。


「ひいっ!」


 ……微笑みかけたら、後退りやがった。

 よし、無かったことにしよう。


「すまん。正直に言ってくれ」

「私はもう少し、頑張りたいです!」

「そうだよな……限界だよ……ん?」

「よく言った! これからも僕と一緒に、頑張ろう!」

「はっ?」


 チョコが何かを決心したかのように、顔を上げてはっきりと答える。

 色々と予想外すぎるわ!

 怪我して、魔法を目いっぱい使わされて、普通なら酷い目にあったと思うはずだが?

 やっぱり、頭のネジも緩いのか?

 そして、一緒に頑張ってないだろうカナタお前は……


「冒険者になりたてのころに、お情けで数回スライムの止めを刺させてもらっただけの私が、ゴブリンやコボルトを退治出来てるんですよ?」

「あ……ああ」

「しかも、ずっと2だったレベルが今の戦闘で9にまで上がったんです! 回復魔法だって覚えたし!」

「そ……そうだな」

「確かに怖いです。斬られたり、叩かれたりして痛かったです」

「だよな!」

「でも! 初めて冒険者らしく冒険してるって感じたんです」


 だめだ。

 チョコのやつたまたま(・・・・)上手くいっただけなのに、簡単に敵を倒したりレベルが上がった事で舞い上がってやがる。


「違うよ? たまたまじゃないし……」


 たまたまじゃない?

 頬を斬られたり、殴られたりしたのも計算してってのか?

 なら、無傷で勝てるようにしろよ!


「ライトヒール一回分。これが最終ライン、そして、スキルや魔力は限界まで使用した方が伸びが良いんだ」


 だったら、お前が怪我しろや!


(それが、僕じゃ本気でコボルトに斬られても怪我しないし……あと痛いのやだし)


 ボソッと、とんでも無い事を言いやがった。


「それに、必要でしょ? レベリング?」

「まあ、そうだが……」

「大丈夫、もっと深いところに行ったらおじさんにもやってもらうから」

「ひいっ!」


 怖いわ! 

 やだよ!

 というか、いまこいつ俺の頭の中と会話してなかったか?


「それにさっきみたいな、ちょっと時間が欲しい時とかにおじさんが居ないと僕が動かないといけないじゃん」

「最低だ!」


 イースタンってのは、皆そうなのか?

 クズだった。


「まあ、制覇したら笑い話に「ならねーよ!」」

「私は、まだまだいけます!」

「ほらっ!」


 ……

 くそっ!

 ここで、チョコのワンテンポ遅い返事が上手い具合に噛み合いやがるのか……

 さっきまで決意表明の後に、感慨に耽ってフリーズしてやがったくせに。

 敢えて、このタイミングで再起動とか……


「わーったよ! もう少し付き合ってやるわ! でも、次に無理だと判断したら、俺はチョコを連れて出るからな!」

「はいはい、おじさんは顔は怖いけど、優しいからきっと最後まで付き合ってくれるよ」

「いや、すでに帰りたいんだが?」


 取りあえず、カナタの不気味さが鰻昇りだ。

 なんで、こんな奴と関わってしまったんだろう……


「チョコちゃん、頑張ろうね」

「えっ? あっ、はいっ! てかちゃん……」


 途中からチョコさんからチョコちゃんに格下げされてるし。

 なんとなく、呼び捨てにされる日もそう遠くないような気もするが。

 まあ、チョコがやる気あるうちは付き合ってやるか。


――――――

「むーりー!」

「本当に、無理な人はむーりーなんて言わないんだよ?」

「まあ、確かに……」


 その後、散々職持ちのコボルトを狩らされたチョコが根をあげるのはわりと早かった。

 ただ、カナタの指示が的確すぎてなんとも言えない。

 毎度、ライトヒール一回分の怪我で倒せてるとか。

 マジか……


 マジで、毎回ギリギリの軽傷で勝たされてやがる。

 なんか、俺もチョコもいらない気がしてきた……


(僕一人じゃ、1時間で完全制覇できちゃうし……そんな冒険3行で終わるし面白くないじゃん)


 なんか、目がそう言ってる。

 気のせいだと思いたい。

 てか、3行とか……言葉の意味が全く分からん。

 

(ダンジョン入る。)

(最下層に転移。)

(ダンジョンマスター倒す。)


 あーあー、何も聞こえない。

 そして、それは一時間も掛からないやつじゃないか?


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