第24話:エピローグ~帰還そしてやっぱりカナタは失踪~
第二章完結です。
「取りあえず、予定を大幅オーバーしたけど2時間19分11秒でクイーン含めてバジリスク33匹撃破なら及第点だね」
「いやいやいや!めっちゃ頑張ったよ?というか、結界って20分で切れるんじゃなかったの?」
私の言葉に対してカナタが、プププといった様子で俯いて噴き出している。
やっぱムカつくわこいつ。
だが、それ以上に他の皆が私の言葉に対して、一斉に顔を背けた事が余計に腹立たしい。
こいつら、結界が切れたの気付いて居てわざと静観してやがった。
「いや、ほら最初こそ危なかったけど途中から割と余裕ぽかったし?」
「はっ?20分過ぎてからも結構致命的な攻撃を受けたのですが?」
ジャンの言葉に、思わず噛み付く。
「受ける方が悪いし、というか結果無傷なんだから良いじゃん?」
それに対して、いま怪我をしてないのだから問題ある?と言った様子で首を傾げるカナタ。
「【火炎嵐】!」
「ああ、熱いから止めてね」
思わず放った覚えたての上位火炎魔法をあっさりと、それこそいつの間にか手に持った扇子でかき消された。
解せぬ。
相変わらず、こいつの自称無職が全く当てにならないことを再認識させられただけだった。
とはいえ、上位魔法を放っても全く魔素切れを起こさない自分の成長がちょっと嬉しかったりもする。
レベルもやばい事になってたりする。
レベル5→33
HP21→351
MP45→1215
筋力11→21
魔力31→923
体力9→29
敏捷13→15
うん、生命力のみレベル通りの上昇値だけど、魔素量と魔力がヤバい事になってる。
それに対して、筋力や体力、敏捷等のフィジカル面が全然育っていない。
あれだ……致命傷と魔素切れを強引に回復させての、レベル上げでそこが特化して育ったんだと思う。
というか、魔素に至ってはマイナスだったんじゃないかな?
体内の魔素を絞り尽くしたうえで周囲の魔素を、杖の力で強引にかき集めて身体に宿してた感じがするし。
もしこんな感じで特化的に鍛えられたのなら、アレクもかなりの体力馬鹿にされてそうだ。
ちなみに4桁は人をやめた領域と言われている。
いわゆるA級冒険者に届く人たちのレベルだ。
魔力ももう少しでそこにいけそうな気がする。
使える魔法も、カナタのお陰で大分増えた。
いや、カナタのお陰じゃない。
杖のお陰だな。
「師匠と呼ばせて頂いても?」
「いやいや、友達!友達だから!あと、基本初心者だから!」
テオラがキラキラした目を向けてくるが、取りあえず面倒くさい事になるのは目に見えてたので友達を強調しておく。
案の定……
「はっ!そうでしたわ!私とアリスさんはお友達ですもの。でしたら、一緒に仲良く魔法の鍛錬をしてあげても問題無いですわね」
「……」
回避失敗。
どうしてこうなった?
貴族の思考は良く分からない。
「取りあえずさ、町に戻ろうか?皆心配してるだろうし」
カナタがその場を仕切りだす。
おい、リーダー!お前空気になってるぞ?
その当のアレクはというと……
「はい、師匠の言う通りですね」
完全に使い物にならなくなってた。
大丈夫かな?
というか、そう言われると私にとっての師匠もカナタ?
いやいやいや、無いでしょ。
バジリスクの群れに放り込まれただけだし。
――――――
「お待ちしておりました」
ギルドに戻って最初に出迎えてくれたのはマスターではなく、モッズさんだった。
マスターは?
「ずっとそこで待ってたの?」
「いえいえ、町に入った時点で連絡が私に来るようにしてましたので」
うん……カバチの質問にサラッと答えたけど、なんとなく存外にマスターは要らないと言ってるように聞こえるよ?
見た目はかなり爽やかで、人の良さそうなナイスミドルなのに腹黒そうなんだよね……モッズさんって。
「ご心配をお掛けしました」
「いや、無事だったなら良いよ。ただ、詳しい話は聞かせてほしいかな」
そして、少し離れたところで再開を喜ぶジョシュア様とクリスさん。
うん、イケメンで爽やかな二人の感動のご対面。
眼福眼福。
「あの……先日は失礼な真似をして申し訳ありませんでした」
「本当にすいません」
そして、カナタに対して頭を下げている暴走魔法少女のミザリーと、剣に手を掛けた人。
剣に手を掛けた人の名前ってなんだっけ?
あれ、教えて貰って無い?
そうだった。
「本当にな」
おいっ!
お前には場を取り繕おうという気は無いのか?
カナタが尊大な態度で応じているのを見て、アレクが胃の当たりを押さえている。
「カバチさん、無事に帰って来られて良かったですね。どこか怪我とかされてないですか?」
「大丈夫だよ!心配してくれてありがとう」
そして、カバチに駆け寄る嫌いな相手には渋いお茶を淹れる、ギルド職員のメアリーさん。
そういえば、カバチにだけ普通のお茶を出してたし、なになに?カバチみたいなのがタイプなのかな?
貴族の娘っぽいし、優良株じゃん!
やったねカバチ!
そして、一番活躍したはずなのにボッチな私。
なにこの扱い。
「あら、私がいましてよ師……アリスさん」
うん、ありがとう。
なんとなく面倒臭いテオラさんでも、近くに居てくれて有難い。
「それにしても流石ですね……レイクポートでの噂通りの有言実行っぷり」
「ふーん……なんとなく、その有言実行の噂の出どころが知りたいな」
どうやら、レイクポートではカナタは言った言葉を必ず実行するようなイメージを持たれているらしい。
確かにそうだな。
非戦闘員の無職を理由に戦わない宣言をした出会った当初から、こいつはずっと戦ったところを見た事が無い。
というか、基本的に何も……してないことも無いか。
今回の準備だってカナタがしたわけだし。
前回のゴブリンの時も、カナタの交渉のお陰でなんとかなったわけだし。
アレクにジェネラルを討伐させたり、クリスさん達を見つけたり。
いや、でも……
「ああ、今回クリスさん達を見つけたのは、私とカバチですよ。それとバジリスクはカナタさん以外の全員で倒したので、彼に礼を言う必要はないと思います」
「ふふふ……その辺りも噂通りか」
私がチクりとチクってみたが、その言葉に対してより嬉しそうに頷くモッズさん。
なんで?
それから、後でステータスチェックさせてくださいと言われた。
なんで?
「恐らく、北風の皆さんは大幅にレベルアップされてるのでは無いでしょうか?それも必要なステータスが常識を超えて成長するレベルで」
「凄い!良く分かりましたね!自分はレベル28になったんですよ!しかも剣技スキルが色々と発現したんです。それにレアスキルの超反応が身に付いたお陰でかなり戦えるようになりました」
「おめでとうございます」
「いいなあ、僕なんてレベル19にしかならなかったよ。ただ盾スキルが最上位になってるけど」
「私はまあまあかな」
「そうですか……鑑定が楽しみですね」
なんか、モッズさんに見破られてる感じが否めない。
「流石カナタさんですね」
そして、私達が強くなったことでなんでカナタの評価が上がったのかが一番不明だ。
これは、詳しい話を聞く必要がある。
「いや、大した事してないですよ」
「ふふ、ご謙遜を。まあ、貴方なら確実にペルセウスを見つけられると思ってましたので、例の品は用意してありますよ」
「助かるよ、ありがとう」
「いえいえ、フフフ」
「ああ、ハハハ」
ちょっとそこの二人?
かなり薄ら暗い雰囲気を出しているんですけど?
「帰って来たのか!」
その時奥の方から大きな扉が開く音と、大声が聞こえる。
出たなハゲ。
「ええ、マスターにもご心配をお掛けしました」
「こちらの北風の皆さんのおかげで、無事帰還できました」
クリスさんとジョシュア様が、マスターに無事を報告する。
「お前ら、よくやった!」
「いや、このくらい」
「このくらいなもんか!B級指定のバジリスクの居る場所に救援に行って無事に戻って来れるなど、パーティレベルでB級、個々でもC級くらいにはしないとな!ハッハッハッハッ!」
ハゲが機嫌良さそうに笑っているが、モッズさんが咳払いをした瞬間に大人しくなる。
この数日の間に何があった?
「一応代表のカナタさんから、その件は辞退を受けております。能力に対して経験と心構えが足りていないとのことで、暫定D級への昇格止まりです」
「はっ?」
モッズさんの言葉に思わず呆けそうになってしまった。
また、カナタか!
なんで、勝手に人の昇格を断るんだよ!
カナタに文句を言おうと思って周囲を見渡すが、どこにも姿が見えない。
「そのカナタはどこに行った、一応不本意ながら礼を言わんとな」
「約束を守った相手に礼を言うのが不本意というのは、人としてどうかと」
マスターの言葉に的確な突っ込みを入れるモッズさん。
でも、今はそれどころじゃない。
そのカナタがどこにも居ないのだ。
「カナタさんなら、私から報酬を受け取ったあとすぐに消えましたよ?ああ、比喩じゃなくて文字通りふわっと」
『はっ?』
モッズさんの言葉に、その場に居た全員が思わず呆けてしまった。
ジョシュア様だけが、ちゃんとお礼をしたかったと残念がってたけど、他の人達はそうでも無かったようだ。
むしろ、居なくなってホッとしたような表情を浮かべている。
アレクは苦笑いだったけど。
カバチはボロボロ泣いてた。
まあ、結構懐いてたからしょうがないか。
劣化イージスの盾の女神が一生懸命カバチを慰めていたのが絵的にシュールだった。
私は怒りの矛先が消えた事でかなりストレスが溜まったけど、別れも言わずに消えた事で余計に怒りが沸いた。
「いつか見つけ出して、石をぶつけてやる!」
(はは、それは怖いな、でも当分はこの世界に居るつもりだから、また会いにいくよ)
心の中に、カナタの声が聞こえた気がした。
でも、奴のことだからこれは気のせいでもなんでもなく、きっと本当になんらかの手段でこっちの様子を見て反応したに違いない。
「首を洗って待ってなさい!それと……まあ、一応その色々と楽しかった」
(ふふ、そう素直になられるとそれはそれで怖いな。でも、まあ俺も楽しかったし……また会いに行くよ)
なんだか本当に不思議な奴だった。
いきなり現れたかと思うと、私達のレベルじゃ考えられないような冒険をさせられたうえに、またパッと消えるとか。
この約2週間の間がまるで夢だったんじゃ無いかと思うような出来事だった。
ちなみに、その後結構な時間を経てジェネラルはキングに進化して、エストの村の領主になったとの噂を聞いた。
そのジェネラルだが、私達がエストの村に訪れると主の仲間として丁重にもてなしてくれる。
どうやら、彼等の中で何もしていないカナタが主らしい。
これも謎だ。
あとモッズさんから聞いたけど、レイクポートのダンジョン制覇の時もカナタは表立っては何もしてないらしい。
ただ、一緒に行動した二人のうちの一人はほぼA級クラスのステータスを持ったC級、もう一人もB級に足を突っ込んだD級にまで成長したらしい。
うん、私達と同じようだ。
という事を認めると、私の文字通り死ぬような努力?苛め?が彼の手柄になりそうなので、あくまでカナタは私の中では何もしなかった人として折り合いをつけた。
アレクは妄信してるみたいだけど。
また、遠くない将来本当に会えそうで楽しみだ。
本当はエンとレイドのその後や、アレクの地獄の特訓を閑話に入れたいのですが、たぶん3章に突入すると思います。
3章の内容は自分でも書いてみたいので。
ちなみに4章のターゲットまでは構想済みです。
仕事が落ち着いたので、またボチボチ投稿します。




