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異世界転生からの異世界召喚~苦労人系魔王の新人冒険者観察~  作者: へたまろ
第2章:北風とカナタのバジリスク退治!~アリスの場合~

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第8話:エストの村のゴブリン退治5

「アリス、起きてよー!」


 ウルサいなー。

 昼間っから寝れるわけないじゃん! 

 てことで、さっきようやく眠りに落ちたと思ったら、カバチがめっちゃドアを叩いてくる。

 折角あと一撃で、南の森の獣王こと、獣の魔王を倒す直前だったのに! 

 あっ、夢の話しね。

 結構、良い所で起こされて不完全燃焼の私はドアをガッと開けて、カバチの頭に杖を落とす。


「痛い!」

「ウルサい! もう少し静かに起こせないの!」

「最初は静かにノックしてたのに、アリスが全然起きないからじゃん!」


 あっ! そうだったの? 

 それは失礼しました。

 とでも言うと思ったか! 

 もう一発杖をお見舞いする。


「カバチの癖に、口答えとか生意気!」

「ええ! そんなあ」


 カバチが頭を押さえて口を尖らせているが、知ったこっちゃない。

 まったく、寝不足は美女の大敵だっていうのに。

 仕方なく着替えようとして、ふと視線を感じる。

 カバチがまだ入り口に立ってた。


「この!「ちょっ! まだドアも閉めてないのに着替えるとか、アリス頭大丈夫?」


 叫ぼうとしたら、機先を制された。

 カバチが見ようとして立ってた訳じゃなく、私の不注意だって事もバレバレだと思う。

 だけど……


「とっとと出てって、扉を閉めろ! このスケベ!」

「ええ!」


 カバチを部屋から蹴飛ばして、慌てて扉を閉める。

 扉の向こうから


「今までだって、僕たちが部屋に居ても気にせず着替えてたくせに……それに、ちっちゃいころからずっと一緒にいるのに今更……アレクみたいにガッシリ体形が変わってたらあれだけど、アリスって成長してるのかな……不思議……」


 とぼやくようにしてカバチが立ち去っていくのが聞こえる。

 本気で凹む。

 確かにアレクはメチャクチャ筋肉付いたよ? 

 もう痩せマッチョ通り越して、プチマッチョくらいにはなってるし。

 男の身体になったと思う。

 カバチも色々と大きくなったけど、相変わらずぷにぷにしてる感はある。

 子供がそのままサイズアップした感じだ。

 そのカバチに、成長してないとまで言わせる私って……


 しかも、良い訳や捨て台詞的なものじゃなくて、カバチが本気で不思議に思っていることは長年の付き合いで分かる。

 だからこそ、余計に凹む……


――――――


 アレクが夜に見張りをして、ゴブリンが来たらその後をつけると言い出して、まだ昼過ぎだというのに全員に強制就寝命令が出された。

 そして、昼間っから寝れるか! とか思いながらどうにか眠りについたわけなんだけど、結局殆ど眠れなかった私は、中途半端な睡眠時間のせいで荒んだ心のまま、集合場所である宿のロビーに移動する。


――――――

「アリスおそーい!」

「女は色々と準備があるのよ!」

「だったら、その分早く起きればいいのに!」

 

 ああ、いつものやり取りだけど、若干いつもよりカバチが強そうに感じる。

 クソッ! カバチの癖に! 


「まあまあ、今回はカナタさんも居るんだし、そのくらいにしとこうか」


 くっ……外見だけじゃなく、内面も一番成長してやがる。


「ガルルルル!」

「えっ! なにっ?」


 思わずアレクにまで吠えてしまった。

 アレクがちょっと驚いた様子で後ずさる。

 ふん! まだまだね。


「もう良いか?」


 そこに宿のロビーのソファに座って、新聞を広げコーヒーを飲んでいたカナタに声を掛けられる。

 あっ、居たの。

 というか、こいつ本当に同じ年なのかしら? 

 えらく、様になっているというか、どっからどうみてもナイスミドルなオッサンのように見える。

 まあ、見た目はムカつくことに美少年寄りだけど。

 そのギャップに萌え……ないよ? 


「グルルルル!」

「どうどう」


 こいつにも思いっきり唸ってやったが、カナタは新聞をすっと折りたたんで普通に立ち上がると、すれ違い様に私の頭をポンポンとしただけで普通にスルーされたわ。

 アレク以上に大人の雰囲気を身に纏うこいつは、絶対に年齢詐称してるわ。

 30代から40代、50代と言われても納得できる。


「そうそう、カバチにはこれを渡しとかないとな」

 

 それからそのままスタスタとカバチの方に近付いて行くと、何やら仰々しい盾を手に持っている。

 何それ? 女性の顔が書いてあるけど、イージスの盾とかじゃないよね? 

 

「なにこれ?」

「ん? イージスの盾のレプリカだよ?」

 

 なんだ、レプリカか。

 じゃあ、別にその女性の目を見たからって石化したりするわけじゃないのね。

 そんな事を思っていると、カナタの口から不穏な言葉が飛び出す。


「一応、その盾に掛かれている女性はゴルゴンじゃなくて女神的なものだからね。ただレプリカに悪戯心で女神の顔を彫っただけだから御利益があるかどうかは分からないけど、それで皆を守ってね」

「ふーん、じゃあ女神さん皆を守ってね、宜しくね」

『ブッ』


 思わず私とアレクが噴き出すが、カバチは特に分かった様子もなく盾の女性を撫でている。

 カバチが笑顔で盾を撫でた瞬間に、確かに女神が微笑んだ。

 絶対に微笑んだ。

 レプリカとかって言ってるけど、それ絶対凄いやつだ! 

 なんでこいつそんなもん持ってんの? 

 というか、ポイポイ人にあげちゃうわけ? 

 思わず私もカナタをジッと見つめてしまった。

 別に何か欲しい訳じゃないよ? 

 タダ、ワタシニモナニカアリマセンカネエ? ダンナ? 


「アリスも何か欲しいのか? じゃあ、これをやろう」


 そう言ってカナタが石ころを寄越してくる。

 いや、確かに何か欲しいけどこれは違う。

 絶対にただの石ころだ。


「これ……何?」

「それは、【絶対零度(アブソリュートゼロ)】が封じられた、ただの石ころだ。握って【発動(インボケーション)】と念じたら3秒後に発動するからな? すぐに対象に投げろよ? 範囲は触れているものだ。そのまま握ってると自分が凍って砕け散るぞ? それと対象を外して地面に堕ちたら、地面が凍るからな? 本当に気を付けろよ?」

『ブッ! 』


 またも私とアレクが噴き出す。

 こいつなんて物騒なもんを。

 しかも、天災級の魔法をただの石ころに込めんなよ! 

 どこの物好きの変態の仕業だよ! 

 どこか釈然としないものを感じつつ、4人で村の外れの牧草地に移動する。

 そこでは、数頭の牛がノホホンと寝転んでいる。

 

 暇だ……

 見張りを始めてすでに3時間くらいは経っている。


「まだ、36分18秒しか経ってないぞ?」

 

 さいですか。

 すいません。

 ただ、ボーっとしてるだけっての本当に時間が長く感じるんだよ! 

 きっと、このままおばあちゃんになっても不思議じゃない。

 そんな事を思いながらも、カナタの方を見る。

 こいつ寝てない? 


「寝てないぞ?」


 さいですか。

 目を閉じて、ジッとしてるから寝てると思ってました。

 というか、心の声にいちいち返事しないでくれませんかね? 

 心臓に悪いというか、もはや隠す気ねーだろお前! 

 このカナタという少年、見てるだけでも色々と削られてイラッとするので、カバチの方に目をやる。


「ZZZZZ……」


 こいつは、間違いなく寝てやがる! 

 イラッとして、杖を取り出そうとしたらカナタに手をそっと握られた。

 なにこれ、急展開? 

 あっ、叩くとカバチが大声出すから止めろ? 

 それと、急に起こしても叫ぶかもしれないからそっとしとけ? 

 さいですか? 

 というか、貴方カバチに甘くないですか? 

 私……一応女性なんですけど……


 仕方なし、アレクに目を向ける。

 うわっ……

 めっちゃ目を見開いて、ジッと森の方を見てるよ。

 真面目か! 

 ああ、そう言えばあなたはそういう人でしたね。

 正直、私とカバチが死なずにご飯食べられるのって、殆どあなたのお陰ですもんね。

 すいません、真面目にやります。

 うん……そろそろ1時間くら……


「まだ38分22秒だよ?」


 さいですか……

 まだあれから2分しか経ってないんですね。

 暇です……


 辺りを静寂が包み込む中、遠くの方でホーホーという梟の泣き声が聞こえてくる。


「これはミミズクだよ」


 さいですか……

 五月蠅いですよ? 

 えっ? 冒険者として獲物の種類や、魔物の種類に精通していないと致命的なミスを起こす? 

 別に梟かミミズクを狩るような依頼なんてありませんが? 何か? 


 それから空を見上げる。

 満点の星空、何気に頬を撫でる風も気持ちいい。

 うん、カバチの気持ちもなんとなく分かるわ。


「ZZZZZ……」


 相変わらず、小さくて可愛らしいいびきを掻く、この幼馴染にちょっとイラッとする。

 アレク曰く、私のいびきよりよっぽど女の子らしいとのこと。

 ウルサイわ! ほっとけ! 


 それからしばらくして、ガサガサという音が森の方から聞こえてくる。

 慌ててそっちに目を向けると、一匹のゴブリンが様子を伺うように顔を覗けている。

 流石に、ずっと夜の外に居ただけあって目も慣れて来たうえに、月明りもあるのでその姿がはっきりと見える。

 姿かたちが普通のゴブリンであったことにホッと胸を撫で下ろしつつ、アレクの手による指示で身を低くする。


 結構大きな音を立てながら、森からそのゴブリンがゆっくりと出てくる。

 そしてその後ろを2匹のゴブリンが付いて出てくる。

 ああ、この場でサクッと仕留めたい。

 3匹が固まって行動している今なら、魔法の一撃で同時にいけるのに。  


 そして、3匹がゆっくりと牧場に近づいてくる。


「アレク……あっち」


 だが、カナタは3匹とは全然違う方向を指さす。

 そっちに目をやると、丁度ゴブリンが牛の喉を掻っ切っているところだった。

 ご丁寧に声が漏れないように一匹が目を押さえ、もう一匹が口を押えている上に、さらに別の一匹が袋のようなもので手ごと口を覆っていた。


 えっ? 

 どういう事? 


「あっちは囮だよ、万が一見張りが居たら、あの3匹を狙うように仕向けたって訳。で3匹に見張りが向かって行った隙に、違う部隊が牛を掻っ攫っていくって作戦かな? 流石に、そろそろ人間も手を打ってくると警戒したみたいだね」


 えっ? なにそれ? 

 頭良すぎませんかね? 

 そんなゴブリンの生態聞いた事無いんですけど……


「これが、リーダー、もしくはジェネラルが居る群れって事だよ。とはいえ、ここまでの行動だったらジェネラル以上で確定だな」

「やっぱりですか……、ちなみに今回は3匹の方に誰も向かわなかったから、すぐに別働隊が出て来たって事ですね」

「ああ、ほらっ、囮の必要が無くなったから3匹があっちに行って運ぶの手伝うみたいだ」


 えっ? さっきまでガサガサと音を立てていたのに、いまは耳を澄まさないと分からない程度の草を踏みしめる足音しかしない。

 本当に陽動だったってこと? 

 これ、カナタ居なかったら、普通にあの3匹を仕留めて依頼達成って喜んでるところだったわ。

 そして、消えた牛の謎だけが残ってたわ。

 そんな事を思っていたら、カナタが何やら魔法を唱えている。


「【静寂(サイレンス)】」

「えっ? カナタさん魔法使えたの?」


 まあ、使えるだろうね。

 あんななんも無い所から、剣やら盾やら出してくるくらいだし。


「ああ、攻撃魔法とか回復系はからっきしだけど、便利そうな半端な生活魔法ならね」


 そう言って、ウィンクするカナタ。

 うぜーーー! 

 というか、絶対に他の魔法も使えるよね? 

 私の中で、カナタの胡散臭い度が急上昇しつつあるが、取りあえずカバチを叩いとく。


「痛い!」


 まあ、【静寂(サイレンス)】の効果があるから、声がゴブリンに届くわけじゃないしね。


「ゴメン! 寝てた?」


 そして空気も読まずに、大声で謝って来るカバチ。

 うん寝てた。

 アレクが怪訝そうにこっちを見ているけど、良いじゃん。

 どうせ、聞こえないんだし。

 

「そろそろ、こっちも出発しないと置いてかれるよ?」

「っていうか、ジェネラル以上が確定したんなら、一旦町に戻って救援呼んだ方が良くない?」


 途端に不安に駆られたので、取りあえず勇気ある撤退をカナタに提案してみる。

 よくよく考えたら、初心者3人+実力不明、自称役立たずとでジェネラルに挑むとか無謀以外の何者でも無い気がしてきた。

 というか、無謀だよね? 


「それじゃ、間に合わないかもね? 相手は、どんどん種族危機に追い込まれてるから、その間にさらに進化したりして」


 そう言っていたずらっぽく笑うカナタ。

 絶対、こいつ楽しんでるわ。


「それに……俺達だけで、なんとかしたら……英雄になれるぜ?」

「英雄……」

「僕たちが……」

「ちょっ! 死んだら終わりだから! それって蛮勇だから!」

「英雄アレク」

「英雄カバチ」

『いいかも……』


 ダメだこいつら……

 完全にトリップしてる。

 縋るような想いでカナタに視線を送ると、凄くいやらしい笑みを浮かべてた。

 もしかして、こいつゴブリンのスパイとかじゃないよね? 

 そして、えらく興奮したアレクとカバチに引っ張られるように森に連れていかれた。

 カナタだけは、ノホホンとした表情で付いて来てたけど。



感想、評価、ブクマお待ちしてます。

このペースでいけば、いつサブタイ回収できるのだろう……

章ごとに主人公が変わっていく予定ですが……2章が終わらない(;^_^A

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