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異世界転生からの異世界召喚~苦労人系魔王の新人冒険者観察~  作者: へたまろ
第1章:仮冒険者と魔王様、冒険者になる!~エンの場合~

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第24話:29階層~結局最後はカナタさん~

 その後レイドと2人で仕切り直しとなった。

 元々何人パーティでも挑めるという事もあり、2対1でも構わないと言われた。

 ただ、カナタさんの参加は認めないとの事だった。

 というより、カナタさんなら1対1でもお断りだとキアラさんが言っていた。

 素通りして良いレベルらしい。

 ますますカナタさんに対する謎が深まるばかりだ。


「今度はこっちの番ですね」

「えっ……もうそろそろ……」

「えっ? ヤリ逃げですか?」


 ちょっ、それ意味が違う! 

 やりの部分をカタカナで言っちゃ駄目だから! 


 18回目のキアラさんのターンだ。

 レイドのお陰で結構良いのが入ったりしてるんだけど、流石ヴァンパイア! 

 タフネスが半端ねー。

 んでもって、相手の攻撃も結構強烈だったりする。


「そろそろやや本気の1撃いきますね……【ブラッドショット(血の一撃)】」


 彼女の掌から血のように赤い矢が飛ばされる。

 結構早い……見切りでどうにか直撃は免れたが、肩を掠めて袖を血が染める。

 痛い……掠り傷だけど地味に痛い。


「ふふっ……まさかこれも避けるなんて、貴方本当にF級?」


 はいF級ですけど何か? 

 流石にこれはカナタさんに感謝しないとな。

 ここに来たばかりの僕なら、確実に18回は死んでるからね。

 うん……最初から間違いなく死んでるって事だけどね。


「じゃあ、次は貴方達の番ですよ!」

「なあ……俺も参加していい?」


 まだ続けるのかと思ったら、カナタさんが不意に口をはさんで来た。

 これに対して1番えっ? というような驚きの表情を浮かべてたのキアラさんだった。


「わ……私の負けです」


 負け認めちゃったよ。

 まだ、カナタさんが何もしてないのにすでに負けを認めちゃったよ。

 でもやめて! 

 もし、ここでキアラさんが負けを認めると僕とレイドは何のためにいままで死と隣り合わせのような戦いをしてきたのって事になるんだけど。

 ねえ、レイドもそうおも……って、ダメだコイツ! 

 凄くキラキラした目でカナタさんを見つめていた。


「さ……流石師匠です!」


 駄目だって! 

 この人に弟子入りなんかしたら、帰ってこられないってば! 


「えー! 別に俺、そんなに強くないのに」


 カナタさんが1人ぼやいているが、キアラさんは首を横に振っている。


「いや……絶対に飽きたんですよね? この戦いを終わらせたいのは良く分かりましたよ。その……参加していいと言った時点ですでに、終わってたじゃないですか……」


 何が? 

 ああ、参加しちゃ駄目って言ってたからね。

 だから、参加していいと言った時点ですでに終わってたって事ね。


「ん? なんのことかな?」

「とぼけても駄目ですよ! その指先に集めた魔力で「俺は魔法は使えないよ?」


 ………………


 その指先に集めた魔力での続きはなんですかねえ? 

 カナタさんが、笑顔で被せ気味に答えた瞬間に、辺りが水を打ったかのように静かになった。

 キアラさんの顔色がかなり悪い。

 もともとそんなに血色の良い顔では無かったが、マジで真っ青という言葉がピッタリな色をしている。

 そして、小刻みに震えている。

 あの……カナタさん何をしようとして、いま何をしたんですか? 

 マジで! 

 教えて! 

 すげー、カナタさんの正体が気になってもうしょうがないんですけど。


「じゃあさ、このダンジョン制覇ってこと?」

「え……ええ、次は最終階層になります。ちゃんとお参りしてくださいね。さらにその下の階層でメルス様との面会も可能です……あの、出来ればメルス様を消さないで頂ける助かるのですが。」

「えっ? エンとレイドにはちょっと無理じゃないかな」


 うん、その意味の無いすっとぼけをいつまで続けるのかなぁ? 

 キアラさん、めっちゃカナタさんに向かって言ってると思うんですけど。


「ちなみに無職で、剣も魔法も使えない俺にはまず無理だよね?」

「ハ……ハイ、無理デスネ」


 可哀想に、カナタさんの笑顔の恫喝に完全にキアラさんの声から生気が失われてしまった。

 まあ、元々生者かどうか怪しい部分はありますけどね。

 という事でどうやら僕たちはこのダンジョンの制覇に成功したらしい。


「うんうん、2人が頑張ってくれたお陰でダンジョン制覇出来たね」

「いえ、僕はそんなに役に立ってなかったかも」


 レイドが謙遜気味にそんな事を言っているが、たぶん1番役に立たなかったのは僕だろう。

 ただ、1番頑張ったのも僕だと思うけどね。

 というか、全然頑張って無い人も1名いるけどさ……1番役に立ったというか、僕たちにとって最も助けになったのも彼だ。

 いや、でもさ? 元を辿ればすべて彼のせいでこんなに苦労をしたとも言える訳で。

 そこんとこを考えると、素直に感謝することは出来ない。


 ただね、ステータスもそうだけど、色々な知識や技術を得ることが出来たのは間違いない訳で、その点では感謝してやらない事も無いでは無いが……

 削られたものが多すぎて、なんとも言えない。


「まあ、エンも一人前の冒険者っぽくなってきたし、同時に冒険者になったのに置いてかれちゃったな」


 カナタさんが殊勝な事を言っているが、絶対にそんな事を思っていなさそうなのが腹立つ。

 何より腹立つのは、そんな事を思っていなさそうに全く感じさせない雰囲気で、思っていないことを分からせる無駄な器用さが腹立つ。

 言動や雰囲気はかなりの人格者である事は間違いない。

 僕に対しては結構酷い事を言ったりもするが、その原因を作っているのが僕だということを理解しているから、文句も言えない。

 ただ、この人の場合本音が全く見えないから怖い。

 本気で褒めてくれてたり、本気で心配してくれているのは分かる。

 言動が無茶苦茶だったり、人を貶めるような事を平気で言ってくるくせに、本気で心配してくれてるんだなと感じさせる事が出来るのだ。

 そのため、本気で心配してくれていると感じた瞬間に、もしかして精神汚染くらってねーかこれ? といったようなあらぬ心配までしてしまう始末。

 きっと、どんなに頑張っても彼の掌の外に行く事は出来ないだろう。


「もうちょっとエンは素直に物事を考えた方が良いな……単純なくせに難しく考え過ぎだ」


 ほらみろ! 

 これだよこれ! 

 この人のなんの躊躇もなく、人の心を読んじゃうところとかさ! そういうところが、心からカナタさんを信用しちゃ駄目だって僕の頭に警鐘を鳴らしてくるんだよね。


「まあ気にするな! いよいよ、泣いても笑っても最後の階層なんだから、心して行こうか」

「そうですね、師匠! 最後までご一緒出来て嬉しいです!」


 ああ……僕の知ってるレイドはもう居ない……彼女はこのダンジョンの途中に色々と置いて来てはいけないものを置いて来てしまったようだ。

 僕がもっとしっかりしていれば。


「プッ……」


 いきなり吹き出したカナタさんに対してジトっとした目を向けるが、無駄に超ハイクオリティな口笛で誤魔化された。

 というか、誤魔化すのに口笛吹く人を久しぶりに見たが、その口から奏でられるフルートのような音色と、幻想的な音楽に聞き惚れているうちにどうでも良くなってしまった。

 これって、完全に精神になんらかの影響を与えるスキルだよね? 

 口笛の音色か、音楽のどっちかにそういった効果を乗せたに違いない。

 本当に油断ならない人だよ! 


 ああ、もう一回さっきの口笛の音楽聞きたい……

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