その廃址に葬り、不滅の少女は
神与え、神奪い給う
永遠が約束された
清廉な泉に雷雨が迫り
邪気のない鏡が割れたとき
不滅の少女は血の化粧をした
黒き闇を俟つ束の間の夢
保護領の幾重もの連柵
森の静けさを破り侵入する
一本のロープを食い千切って
凶鳥の同居、知の愚者の血肉
雛をむさぼる犬歯で
綾をもぎ取るだけの刃で
両手首に傷をつけて
聖植物の像は壊された
輪郭のない水を形づくり
影に溺死した水子たち
わが二重心身をそこに見る
境界域を脱するもののけ
たましいのわずらい
拇指くらい保っておきたい
自分の影を踏むと死ぬというまじない
迷子になった腫れぼったい目蓋
殺された涙を数えて
罪を抱いて眠る赤子
母胎を遊泳し
いまこそ破水する
外気と触れ混じり
シャム双生児はついに別れた
水の精は獅子に喰われ
全身がひからびたとき
いまこそ魔の戦争を
その胃液で何を溶かすのか
裂け目にぬくもりを
さりげなく握る心臓を
名のない墓碑に捧げて
我は大人になる
無呼吸の園が廃されて
世界へ猜疑を
憎悪の魔女になるために
捨てねばならぬ名を
ひとかけらの赤土の地面
形而上的な天使が舞う
死は神話集を棄てて
魂は七たびよみがえり
屹立する塔から飛び降りる
その声を絶体絶命に震わせて
その唇で悪徳の蜜を吸って
少女は産み落とされた
永かった内戦が終結した
千年後にまた出会おう
遥か遠くまで旅をして
目を伏せずに耳を澄ませて
聖域から罪人の都へ
骨まで燃え上がるように
答えを探すように
いつまでも彷徨うけれど
忘れないで
また会えるから
君は大人になって
いつか振り返る
その場所を
かつて楽園のあった
母国を
その廃址を