プロローグ
―――――――ハア…ハア…。
『なあ、知ってるか?あの噂…。』
『ああ…あの巷で噂の殺し屋の話か?』
――――――…?
『そう、なんでもそいつに頼めば確実に獲物を仕止めてくれるらしい。どんなに偉い奴でも、厳重な警備を掻い潜って…誰も知らないうちに、いつの間にか死体だけが転がってるって話だぜ?』
『うえぇ、おっかねえ話だねえ。幽霊の仕業だって説もあるよな。確か依頼方法も変わってるんじゃなかったか?』
―――――――…。
『そう、それがさ…殺したい相手の名前と、そいつに関する情報を書いて、小切手と一緒に赤い封筒に入れて窓の隙間に挟んでおくだけなんだって。』
―――――――赤い…封筒…。
『それでさ、封筒にカモミールの香りをつけておくんだと。…もし封筒が消えてて、依頼が承諾されたときは、窓に青い石が置かれるらしい。』
『カモミールに青い石?にわかに信じがたい話だよなあ…。本当に存在すんのかねえ。名前だって神話に喩えてつけられたあだ名なんだろ?』
――――――…名前…。
『いいじゃねえか、殆ど姿を現さない幽霊みたいなもんなんだし。だけどな、実際に見た奴の話では、本当に長い銀髪だったらしい…。だからこう呼ばれてるんだ。神話に出てくる死者を冥府に誘う案内役、銀色の鴉―――その名をバロッシュ…ってね。』
――――――…バロッシュ。
*プロローグ
完