表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Αの女神とΩの娘  作者: 真咲 楓
本編
1/38

1 男なんて滅びればいいのに

 世の中、大抵のことは突然起こる。


 赤ん坊が生まれてくる時も、女の子の生理が始まる時も、男の子の精通が始まる時も、たまに人を好きになることも。

 病気になることも、お気に入りの洋服を見つけることも、そう、大抵のことは「突然」で済まされる。


 しかし、いくらなんでもあれはないだろうと、ユカリは後から思い返すだにため息をつくのだった。





                  ********





 つるり、がさがさがさ、ざばん!


 その時の状況を音で説明するならこうだろうか。

 とりあえず、ありえないとだけ先に明言しておこう。


 彼女が落ちた小さな崖の下には、池はおろか水たまりなどないはずなのだから。しかも温かい――お湯だなんて!


 何だかいい香りのするお湯の中でざぱざぱともがいていると、力強い腕で引き上げられた。



「珍しいこともあるものだ。――人間ではないか」

「ほう、どれ」

「なるほど。確かに人間の乙女だ」



 咳きこむ合間に、そんな会話が頭の上でされている。それにつられて、ユカリはそろりと顔を上げた。

 

 そう、上げてしまったのだ。

 それがすべての始まりとも知らずに。



「…………っ、きゃああああああぁぁぁぁぁぁ!!」



 そこにあったのは、男の裸、裸、裸、裸、見渡す限りの男の裸体。視界に強烈な肌色の嵐に、彼女は反射的に悲鳴を上げていた。

 動きにくいお湯の中を必死に逃げ回っても、腕は次から次へと伸びてくる。

 顔を上に上げればにやけた男の表情。下を向けば人生で初めて見る性器の群れ。

 伸びてくる腕は時折その性器を握らせたりもして、未知の感覚に全身鳥肌が立った。


 ユカリはといえば、花の高校生、青春真っ盛り。上から下までびしょ濡れで、身体の線がはっきりと目立ってしまっている。

 それがまた恥ずかしくて、必死でもがき続けた。



「はははは、初々しい」

「やはり乙女は愛らしい」



 そこ! 下品に笑ってる場合じゃないから! こっちは本気で嫌がってるから!!

 心の中で盛大に罵倒しつつ、ユカリはもがき続ける。


「そのままでは動きづらいだろう」などと言って、服を無理矢理剥ごうとする腕もあった。言葉だけでは思いやりだが、声が完全におもしろがっていた。


 犯される。


 その単語で頭がいっぱいになった。力の限りに悲鳴をあげる。





「誰か……助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!」





 忌まわしくも記念すべき、ユカリが男嫌いになった瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ