3.打ち出の小槌=(イコール)呪物
最強すぎて、あまりにもつまらないため饗人は元の洞窟に戻ることにした。
洞窟に入ると奥の方から光り輝く何かが見えた。
おもちゃのカナヅチ?
……もしかしたら、打ち出の小槌ってやつだろうか?
<饗人の打ち出の小槌の知識>
①一寸法師がもっている。
②3回しか願い事が叶えられない。
③何かに打ち付けて使う。
この知識を元に、饗人は打ち出の小槌を観察してみた。
①持ち手に、太鼓の縮小版みたいなものがついている。
②なんだか、色が鮮やか過ぎる。(悪趣味とも言う)
③持ち手に、丸くて光るガラスのようなものが3粒埋め込まれている。(これが光源となっているようだ。)
④持ち手の先に組みひもが付いている。
⑤どうやら、現在の自分のドラゴンの手では、組みひもをつめで引っ掛けるしか持ち運びができない。
⑥ということは、自在に使えない。
結論:試しにちょっと爪で引っ掛けて、振り回して使ってみよう。
本当に使って大丈夫かは分からないが、万が一何かが起こっても自分は竜の身体。影響は受けないだろう。
ということで、饗人は小槌を試しに使ってみることにした。
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饗人は近くの大きな湖にやってきた。
この湖に、小槌を打ち付けて使うのだ。
「この湖は、自分の見たい風景を映し出す水になれ!」
爪で引っ掛けた小槌をブルンブルンと振り回し、小槌を水面に打ち付けた。
すると、一気に水面に波紋が広がり、森の風景を映し出した。
しばらく、水面を見ていると斧や剣を携えた男女が歩いてきた。
つまらないので、一旦小槌をもって洞窟に戻ることにした。
10日後、湖に映っていた男女が饗人の元にやってきた。
4人組の男女は、洞窟の入り口にくると、指差して叫んだ。
「「人様にあだなす悪きドラゴンよ。退治してやる」」
どうやら、饗人を退治しに来たらしい。
「くらえ!!!」
斧を振り回す巨漢の男。
「メテオクラッシャー!!!」
ステッキを振り回し、光の玉をぶつけてくる女。
「この勇者の剣をくらえ」
細い剣で、饗人の身体を突っつく剣士。
「くたばりな!!!!」
ベチンペチンと叩いてくる、女性の武道家。
一人も、饗人に傷をつけることは無かった。
「そんなばかな!?」
「私の最強の技が通じないなんて…」
「勇者の剣が折れた(泣)」(そして、剣士のココロも折れた)
「アタイの拳がやられるなんて!?」
落ち込む4人だが、ステッキ少女が目ざとく饗人が持っている、打ち出の小槌を見つけた。
敵が目の前にいるのに、ひそひそ話を始める自称<勇者の一行>たち。
『あれって竜の宝じゃなくて?』
『もしかして、あれは竜の心臓かもしれん。』
『もうなんでもいい・・・・』
『あれは、何でも願いのかなう魔法の法具かもしれないわ。』
『あれで、倒せるかもしれない!!!』
「コモン・まじっく!」
ステッキ少女がステッキを小槌に向かって振りかざすと、小槌が一直線に少女の下に飛んでいった。
「うふふ。これで形勢逆転よ!『魔法の法具よ、わが願いを叶え、あのドラゴンを滅せよ!』」
すると、どうだろう。
打ち出の小槌が光り輝いたかと思うと、ステッキ少女を光が包み込み消えてしまった。
後には、小槌が残るだけである。
「エリッサ!」
斧を持った男が叫ぶ。
「この呪物は、持ち帰って厳重に保管するんだ!」
ココロが元に戻ってきた剣士が慎重論を言った。
「でも、エリッサが!」
武道家の顔も真っ青だ。
「そうするしか、方法はないだろう。エリッサが呪物から、また出てくるかもしれない」
直接触れないように、剣士が剣の先で組みひもを引っ掛けた。
すると、再び小槌は光り出し、光が勇者一行を飲み込んで消えてしまった。
後に残ったのは、小槌と饗人だけである。
このことから、饗人は小槌を極力使わないことに決めた。
長くなりそうなので、予定していた分の半分を掲載しました。