2.自覚するには時間がかかります
暗いです。
饗人が下を見下ろすと、ファンタジーな世界に出てきそうな、広大な大自然が広がっていた。
少し、全体的に小さいが。
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饗人は、気がつくと岩の洞窟の中にいた。洞窟の外に出てみると、大きな森と大河が広がっていた。
洞窟は、かなり高度の高いところにあるようだ。
そして、洞窟の岩はとても良く響く材質のようだ。
饗人が歩くたびにドスドスいっている。
ふと、饗人は足元を見てみた。
……何かの間違いに違いない。
自分の足が恐竜のようだ。
腕を伸ばしてみる。……伸びない。
洞窟は高度があるといっても、全体的に世界が小さく見えるので、飛び降りられるようだ。
飛び降りて、近くの湖を覗いてみた。
水面には、ドラゴンが映っていた。
東洋の龍というより、西洋の悪の象徴の竜である。
饗人は、ドラゴンになっていた。
ドラゴンになって、1週間。
なぜか、まったく、腹が減らなかった。
ドラゴンの体は意外と便利だった。
火を吐きたいと思えば、火が出る。
吹雪をすきたいと思えば、周りの物が凍る。
空を飛びたいと思えば、一気に空を移動できる。
しかし、饗人がひとたび歩けば、森が消えた。
羽ばたけば、周りの物が吹き飛んだ。
火を噴けば、森林火災がおきた。
氷を吐き出せば、解除するまで、永久凍土になった。
とても、ドラゴンは最強だった。
でも、とても孤独だった。
森に生き物はいる。饗人が目を向けただけで逃げる。実際、動くだけで踏み潰してしまう。
湖にも生き物はいる。火を噴いたときにみんな死んでしまった。
空にも生き物はいる。空を飛んだときに、一部の鳥が饗人の翼に巻き込まれてしまった。
他人を信用しないで今まで生きてきた饗人だが、こんなにも孤独だったことはなかった。
自分の求めた最強はこんなことではなかった。
饗人の求めた『強さ』は他の誰かがいてこそ、成り立つものだ。
饗人は、今まで、自分ひとりの力で生きてきたつもりだった。
でも、心の奥底に誰かに認めてほしいという気持ちがあることを自覚した。
予定では、後3、4話で終わります。
こんな暗さですが、ハッピーエンド目指して頑張ります。