1.世界からの高飛びした
ちょっとシリアスです。
黒神饗人は、海外へ高飛び中だった。
現在、その高飛びから一時帰国のため、飛行機内にいた。
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黒神饗人は、犯罪組織のリーダー兼、経理担当だった。
彼のグループは、スリや置き引き・空き巣などの窃盗から、オレオレ詐欺などを含めた詐欺など、日本で起こせるあらゆる犯罪の斡旋をしてきた。
『犯罪の初心者』にコツを教え、その後上納金を得る。時には、殺人の隠蔽工作を行うこともあった。
あらゆる犯罪といっても、麻薬だけには手を出さなかった。
……確実に売人もクスリに落ちていく。売り物のクスリに手を出されるのが嫌だったからだ。
この組織は、換算なる秘密主義で、余計な情報は流れないようになっている。
特に組織の下っ端には、饗人の姿はおろか、幹部の人間の姿すら見たことがないだろう。
しかし、情報は漏れるときには、漏れるものだ。
組織の幹部が、大失敗をして警察に捕まった。
つかまった幹部は、自分の刑を軽くするために、組織の情報を漏らした。
組織の幹部は漏れなく、警察に捕まった。
饗人の情報も警察に売られ、指名手配となった。
ただ、饗人の場合、居場所と顔については幹部たちにも隠していたため、すぐにはつかまらなかった。
運よく、別人な名前で取得しておいたパスポートがあり、
顔もばれていないので、今のうちに海外に逃亡をしてしまおうと思ったのだ。
計画は、成功した。持ち出した資金を使い、シンガポールに新たな拠点をつくった。
しかし、10年たった今、問題が発生した。
パスポートである。
今は、商業ビザを使っているが、10年経ったので、パスポートの書き換えが必要になったのだ。
饗人は部下たちを信用していなかったので、幹部たちにも顔を知られないようにしていた。
危ないのは声くらいだが、マスクでもすれば十分隠せるだろう。
パスポートも元々いた人間になりかわってつくったので、本物である。
(成り代わった人間は身寄りが無く、誰にも知られないように、コンクリートにつめた。)
日本に戻るのに、なんら問題はない。
そう、問題は無いはずだ。
でも、さっきから感じる悪寒はなんだろう。
饗人は、自分の勘を信じるようにしているが、逃れようにも空の上……
そうしているうちに、機内が闇に包まれた。
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饗人は真っ白い世界にいた。
どこをみても白く、自分の影すらない。
白い中で、さらに白いもやのようなものが作られた。
白いもやの中から、人が二人現れた。
「こんにちは、人間。」
「こんにちは、ヒト。」
服装も髪も真っ白な人と、いろいろな動物が混ざったような色の服を着た生意気そうな少年が現れた。
「あなたは、今の世界に戻れなくなりました。そのため、違う世界に行って頂きます。」
真っ白い人は、感情のこもらない声で、そういった。
饗人は真っ白い人の脳内を疑った。
絶対なんかへんだ。
「よーするに、行けば分かるって!」
少年が言ったが、余計わけが分からない。
「で、ヒトは、どんな風になりたい?」
少年が面白そうにきいた。質問の結果に興味があるようだ。
だから、饗人は自分の理想を答えた。
「最強の存在になりたい。」
つよくなりたい。
自分の思い通りに世界を動かしたい。
力が欲しい。
「んんーーーーわかった!それだけでいいの?」
「それだけでいい。」
「人間、欲しいものはないのか?」
今度は白い方が言った。やはりこちらも、饗人を試すような視線を向けている。
「御伽噺のような、心躍るものはほしくないのか?」
「じゃあ、とりあえず、三回願いが叶えられる『打ち出の小槌』かな。」
饗人は適当に答えた。
「人間、そなたの願いは分かった。今から、異世界におくる。」
叫ぶまもなく、饗人の体は白いもやに包まれた。