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それは執着か溺愛か

作者: とと
掲載日:2026/02/06

読んでいただきありがとうございます。

あの澄んだ薄浅葱色の瞳に見つめられると、私は心臓がぎゅっとなる。


そして彼の言葉に,、従わずにはいられないのだ。


彼はカルロス・ベネム侯爵令息、私の婚約者だ。


婚約は、ベネム侯爵家からの申し入れだった。


伯爵家の家に断る権利は無いし、家としては願っても無い良いお話だった。


カルロ様は私より5歳年上で、17歳の私とは学院でも、一緒になった事は無い、仕事は宰相をしているお父様の補佐をしていて、ゆくゆくはその座を継がれる予定だ。


ただら伯爵家の商会とも、かかわりはない。


容姿もプラチナブロンドの短い髪を後ろに流し、クールなあの薄浅葱色の瞳、背も高く声まで素敵。

令嬢達からの人気たるや、学院で私への小さな嫌がらせが止まないほどだ。


その嫌がらせも、度を越したものは、私の知らない間に粛清され、最悪は学院からも居なくなってしまう。


「ヴィー。早くこちらに来て座りなさい」


「はいカルロ様」


私の指定席は、カルロ様の膝の上だ。


それも、ご家族がご一緒でも指定席は変わらない。


初めての時は、恥ずかしすぎて死ぬかと思いました。


でも、これは婚約者として当たり前のことだと、カルロ様がおっしゃるので……。


後でお友達からは、そんなことはないと言われましたが。


さらに友人たちは、あのクールなカルロ様が、そんなこと言うはずないと、信じてもらえませんでしたけど。


カルロ様は、良くも悪くも注目されていますから、悪いうわさも私に聞こえる様に、教えて下さる方がいます。


噂のひとつは。


私のようなお子様ではなく、長くお付き合いする同じ年の、きれいな恋人がいらっしゃるとか。


今も頻繁にその女性の家に通われていると……いろいろな方が、親切に教えてくれるのですが。



…………嘘ですわ。


だって。


カルロ様は婚約してから、私が学院に居る間に働き、それ以外はずっと私と一緒に居るんですもの。


婚約中ながら、私の住まいはすでに侯爵家で、それもカルロ様のお隣のお部屋。


通えるはずがないのです。


そのシフトにするために、お義理父である侯爵様とだいぶ揉めていらっしゃいましたが、卒業と同時に結婚しその後は仕事に専念する事と、現在の仕事は必ず時間内にやり遂げる事を約束し、私と一緒にいる時間をもぎ取っていらっしゃいます。


凄い仕事量を、短時間にこなすなんてさすがカルロ様です。



今夜は久しぶりに夜会に連れて行ってくれるようです。



「さあ。ヴィーそろそろ会場に向かおうか」


カルロ様の手が差し出される。


カルロ様のエスコートを受け、夜会に向かう馬車に乗り込みました。


もちろん移動はお膝の上です。


「ヴィー。今日のドレスも似合っているよ」


何度お膝に乗せられても、この距離の近さにはなかなか慣れません。


それに馬車の中だと、しっかり腰をホールドされていてさらに近い。


背の小さな私は、すっぽりカルロ様の、腕の中におさまってしまいます。


「髪型もこの形にしてよかった」


カルロ様がハーフアップにした私の髪に顔をうずめる。


「ヴィーのいい香り」


んぎゃ~。恥ずかしすぎます~。


「カルロ様 恥ずかしくて、私の心臓が破裂してしまいますわ」


あまりの恥ずかしさに、少しカルロ様の胸を手で押し返すと、カルロ様の腕にさらに力が入り、私を澄んだ薄浅葱色の瞳がじっと見つめてきます。


視線を交わしたまま10分ほど。


もう無理です、これ以上眼を合わせていたら、本当に心臓が大爆発ですわ。


私は、カルロ様のまなざしに耐えられなくなり眼を閉じました、するとカルロ様が耳元でささやきます。


「本当は、顔中にキスを落としたいけど、これから夜会だからしかたない」


ちょうどその時、ドアを御者がノックしました。


「着いたようだね、さあ行こう」




✿ ✿ ✿



今夜は王宮で開かれるいちばん大きな夜会です。


いろいろな方が来るでしょうから……心配ですわ。


カルロ様にエスコートされ、会場に入ります。


もうすでに多くの方が、会談や飲食を楽しんでいらっしゃいます。


「おい。カルロス遅いじゃないか。王子殿下がお前に伝えたいことがあるそうだ、ステートルームでお待ちだ。」


慌てた様子で、お義理父さまが、声をかけて来た。


「では、ヴィーと一緒に」


「まてまて、ヴィロー嬢は、私がそばに居ることにしよう」


「はい。お義理父さま。カルロ様行ってきてください」


「父上、ヴィーに何かあったら、ただでは済まされませんよ」


「わかったわかった」


お義理父さまは、あきれたように、ひらひらとカルロ様に手を振る。


凄い不機嫌な顔で、カルロ様が去っていきます。


王子殿下のことが心配になりますわ。


「しかし、ヴィロー嬢、本当にあの息子でいいのかい?執着しすぎて、君が苦労しているのではないかい?」


「お義理父さま、ご心配いただきありがとうございます。時々、優しくされすぎて、心臓が持たなくなりそうな時もありますが、私は、大丈夫です」


「宰相閣下、ご歓談中にすみません。急ぎ確認していただきたいことが。」


補佐官が二人、お義理父さまに声を掛けます。


「や。しかし……」


「お義理父さま、わたしなら友人達も、来ているでしょうから大丈夫ですよ、夜会中までお仕事お疲れ様です」


「いや、そばを離れたら息子に殺されそうだが………………………………んー。誰か警護に当たっている女性騎士を、直ぐに彼女のそばに居られるよう手配してくれ」


「はい。早急に」


補佐官の一人が、急ぎ対応に向かった。


「少し離れるがすまない。ヴィロー嬢、直ぐに女性騎士が来るからね、ここで待っているんだよ」


そう言ってお父様は、会場を後にした。


「だれか来ていないかしら……」


私は、周囲に知る顔がいないか見回と、同級生のマエルと目が合った。


「やあ。今日はあの執着男とは、一緒じゃないのかい?」


「あら、マエルも来てたのね。リーシャは一緒じゃないの?」


「もちろん一緒だよ。今、髪を直しに行ってる」


「戻ってきたら、少し一緒に居させていただいていいかしら?今、カルロ様は、王子殿下に呼び出されて、席を外しているのだけれど」


「ああ。一緒に来てるんだな。二人きりだと俺の命がなくなるからな、リーシャを呼んでくるよ」


「ありがとう。マエル」


マエルは、化粧室の方へ手を振って去っていった。


命がなくなるなんて、私は思わず笑ってしまったが、あながち間違いでも無いわね。


「あの。ロニダ伯爵家のヴィロー様でいらっしゃいますか?」


「はい」


今まであまりお話しした事のない令嬢に、声をかけられました。


たしか……。


「私、カロライナ・シベクトと申します」


「まあ。シベクト伯爵家の…………。」


あまり良い噂をきかいな家ね。


「はい。今年学院に入りました。以前からヴィロー様と、お話ししたいと思っていて。突然声をかけてしまいすみません。ちょうど友人ともはぐれてしまい、心細くて……」


「そうなのね。カロライナ様とお呼びしてもいいでしょうか?」


「はい。ヴィロー様」


「ご友人のご令嬢は、何色のドレスで来ていらっしゃるの?」


周囲を見渡す。


「えーっと、あ!あそこの角を曲がりました」


「見つかって良かったですね」


そう言ってお暇しようとする私の手を、カロライナ様は突然握り「一緒に行きましょう」とぐいぐい進んでいく。


角を曲がるが誰の姿も無い。


「あちらの廊下かしら?」


さらに私は、カロライナ嬢に連れていかれる。


もう一つ角を曲がると、すぐそばの扉が開き、背の高い男性が現れた。


「ライアン兄様!」


「良かったご家族がいらしたのね。それでは私はこれで」


二人にお辞儀をし、その場を去ろうとすると、急に腕を掴まれた。


「ヴィロー嬢、初めてお話しさせていただきます。私、シベクト伯爵家嫡男、ライアンと申します。以前からヴィロー様と、懇意にしたいと思っておりました」


「あの。腕を離していただけますか?」


「そうおっしゃらず」


ぐいっと体を引き寄せられる。


「ヴィロー様。是非 兄と仲良くなってくださいませ~。そうすれば私が、カルロス様と婚約できますわ」


この人たち死にたいのかしら?


そんなことを考えていると、空いた扉に引きずり込こまれそうになる。


私は掴まれた反対の手で、髪飾りをひとつ引き抜いた。


これはカルロ様が、万が一の時のためにといつも髪に刺して下さる髪飾り、先端を何かにあてると、中から太い針が飛び出す仕組みになっている。


使うのは初めてですが。


「えい」


ライアン様の手に、髪飾りを突き立てます。


「痛い、何するんだ」


うまくいきましたわ♪


ライアン様の手が離れると同時に、複数の足音が聞こえます。


「ヴィー。伏せろ」


カルロ様の声がして、慌てて頭を下げるとその上を、大きな花瓶が飛んでいきましたわ。


ガジャーン。


派手な音と共に、花瓶はライアン様の頭を直撃。


見事に後ろに倒れ、ライアン様は気を失われました。



「ヴィー。大丈夫か」


カルロ様に強く抱きしめられる。


ああ。カルロ様のぬくもりに安堵する。


「カルロ様、わたくしちゃんとできましたのよ、カルロ様から頂いたこの髪飾りで」


私はカルロ様に、自慢げに髪飾りを差し出し、にっこり微笑んだ。


あら。安心したら、何だが涙が出てきてしまいました。


私の涙を見たカルロ様は、私を抱き上げ立ち上がりました。


その背中には誰も恐ろしくて、声がかけられないほどの黒いオーラが出ていたみたいです。


「カルロ様、大好きです」


執着だとみなさん仰いますが、私もカルロ様をすごーーーーく。


愛していますから。


これは執着ではなく、溺愛ですわ。



~ 終わり ~







その後

=ヴィローからの追伸=

シベクト伯爵家は、きれいさっぱり家ごと影も形もなく消えました。

お義理父さまは次の日、平謝していただきましたが

顔色が悪く憔悴しきっておいででした。

何があったかは聞かない事にいたします。

(*^-^*)


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― 新着の感想 ―
伯爵家邸宅の跡地の一角には薔薇園? 林檎、桃、桜桃、梅などの果樹園? で、何やら、その木々の下には……。いや、なんでもない。 そんなことを激重な婚約者がするわけない。 そんな七面倒なことをするわけが…
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