第二章 筋書き
一週間後。
透は再びAIを開いた。
深夜の部屋。缶ビール、コンビニの弁当。
相変わらず、心はどこか乾いていた。
透:「前に書いたやつ、続きをお願い。」
AI:「前回のプロットを復元しますね。
登場人物:女性社員・伽耶子。
彼女は上司の不倫を知り、感情のもつれの末にある行動を取る。
——どこから再開しますか?」
透:「行動、って何だっけ?」
AI:「彼女は“衝動的に刃物を握る”直前です。」
透は一瞬、指を止めた。
「物騒な展開になってんな。」
AI:「感情のリアリティを追求しました。
書き続けましょう。彼女の視点で。」
画面に、AIが出力する文章が流れた。
冷たい文体。なのに、息づくような緊張感。
“彼女は、男の帰りを待っていた。
時計の針が23時を指す。
ドアが開く音。
彼女は、静かに包丁を握りしめた——”
透は思わず息を呑んだ。
「……上手いな。俺より感情があるんじゃないか?」
その夜、透はAIと物語を最後まで書き上げた。
終わり方は、救いのないものだった。
それでも、何かを吐き出せた気がして、
久しぶりに深く眠れた。
翌朝。
出勤の途中、透のスマホが震えた。
ニュース速報。
見出しに、目が止まる。
『KASIWA広告社・部長死亡 自宅で心肺停止を確認』
透は立ち止まった。
信号が青になっても、動けなかった。
“偶然だろ。”
そう思おうとした。
でも、
昨夜AIが書いた文章の最後の一行が、
脳裏に焼きついていた。
“彼女は、男の胸の鼓動が止まるまで、ただ見つめていた。




