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第一章 突然の政略結婚

香川奈々、24歳。ごくごく普通のOLだ。特別美人というわけでもないし、突出した才能があるわけでもない。


ただ、誰にでも優しく、おっとりした性格が、何故か周囲の人間を和ませるらしい。本人に自覚はないが、意外とモテる。


それでも、奈々はこれまで、ごく普通の恋愛をして、ごく普通の幸せを手に入れるものだと思っていた。



そんな奈々の日常が、ある日突然、音を立てて崩れ去った。


「奈々。お前には、五十嵐グループの五十嵐涼介さんと結婚してもらう」


父の言葉に、奈々は呆然とした。五十嵐グループと言えば、誰もが知る巨大財閥だ。そして五十嵐涼介。奈々も彼のことは知っていた。


雑誌やネットニュースで、その名を目にしない日はない。若くしてグループの中核を担い、その手腕は神業と称讃される。


そして何より、恐ろしいほどに美しい顔立ち。完璧な容姿に、冷徹なまでの仕事ぶり。まさに「高嶺の花」という言葉が相応しい男だ。


だが、奈々にとって、涼介は遠い世界の住人だった。そんな彼と自分が結婚する?まるで夢のような話しに、奈々は現実感が持てなかった。


父は、会社が経営危機に陥っており、五十嵐グループからの援助を受けるための政略結婚だと説明した。


奈々には、拒否権する選択枠など最初からなかったのだ。


涼介との顔合わせは、高級料亭の一室で行われた。重苦しい空気に、奈々は息が詰まりそうになる。


そこに現れた涼介は、写真でみるよりもはるかに整った顔立ちをしていた。


しかし、その瞳は氷のように冷たく、奈々をチラリと見ただけで、すぐに視線を逸らした。


「香川奈々さん‥‥ですか。仕方ありませんね」


涼介は、低い声でそう呟いた。その言葉に、奈々の胸はズキンと傷んだ。彼にとって、この結婚は「仕方なく」受け入れるものなのだと、奈々は痛感した。


ああ、そうよね。私みたいな平凡な人間が、あんな素敵な人隣に立つなんて、無理に決まってる。


悲しみが、奈々の心に深く刻まれた。



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