初花月と、春告草と、カノープスの星
頬を流れる
風は季節からの手紙
透きとおる
凍て晴れの空へかざす
春待つ樹々の
枝はフルートのように
初花月の街に
今日を奏でながら
春告草の
小さな花がいつしか
枝にそっと
煌めきをちりばめて
春への鼓動に
心を澄ませながら
花を開き出す
星咲きのプリムラは
季節の扉を
いま、そっと開くように
初花月の空に
浮かび上がる紅の星
夕さりの風吹く
バーミリオンの大地を
南の地平線の彼方から
照らすカノープス
この宙の星で
シリウスに次ぐ
明るさのその星は
冬星を見上げながら
地上に寄り添い
やさしく瞬き
幸せを光にこめて
初花月の風に
咲く花のような星
東の彼方に
浮かび上がる
レグルスは
眠りから覚めるように
夜空へと
少しずつ歩み出す
春の星がそこに
今は根を
はりながら待つ春も
心の中でそっと
あたためる春も
自らの瞳で
切り拓いていく春も
夜空に見つけた
春星の光も
水たまりに映る
空の青さも
雪解星のような
ひとしずくの煌めきも
そして
咲くことで
春という手紙を
心に届けてくれる花も
小さな春を
少しずつ重ねながら
今を、生きているから
遥かな地平線の
彼方から
見守るように
寄り添うカノープスの
光を心に燈して
夢というつぼみに
未来を
あたためながら
頬を流れる
風は季節からの手紙
春告草の
白い小さな花が
春という煌めきを
枝にちりばめて
初花月の風吹く
今日という
一小節を大切に、奏でながら
2月が見頃のカノープスは、神話の水先案内人の名で、シリウスに次いで明るい星ですが、地平線近くにあります。見ると幸せになる星ともいわれます。
プリムラは、ラテン語の「最初」に由来し、春が来て最初に咲く花、春の扉を開く「鍵の花」とされ、「運命を切り開く」という花言葉があります。
初花月は2月、春告草は梅のことです。雪解星は、雪が樹木の周りから解ける様子で、その時期の星を表すこともあります。
季節の星や花をモチーフに詩を描かせていただきました。お読みいただき、ありがとうございます。