表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

初花月と、春告草と、カノープスの星

作者: 逢乃 雫

頬を流れる


風は季節からの手紙



透きとおる


凍て晴れの空へかざす



春待つ樹々の


枝はフルートのように



初花月(はつはなづき)の街に


今日を奏でながら




春告草の


小さな花がいつしか



枝にそっと


煌めきをちりばめて



春への鼓動に


心を澄ませながら



花を開き出す


星咲きのプリムラは



季節の扉を


いま、そっと開くように




初花月の空に


浮かび上がる紅の星



夕さりの風吹く


バーミリオンの大地を



南の地平線の彼方から


照らすカノープス



この(そら)の星で


シリウスに次ぐ


明るさのその星は



冬星を見上げながら


地上に寄り添い



やさしく瞬き


幸せを光にこめて




初花月の風に


咲く花のような星



東の彼方に


浮かび上がる  



レグルスは


眠りから覚めるように



夜空へと


少しずつ歩み出す


春の星がそこに




今は根を


はりながら待つ春も



心の中でそっと


あたためる春も



自らの瞳で


切り拓いていく春も



夜空に見つけた


春星の光も



水たまりに映る


空の青さも



雪解星(ゆきげぼし)のような


ひとしずくの煌めきも



そして


咲くことで


春という手紙を


心に届けてくれる花も



小さな春を


少しずつ重ねながら



今を、生きているから



遥かな地平線の  


彼方から



見守るように


寄り添うカノープスの


光を心に燈して



夢というつぼみに


未来を


あたためながら




頬を流れる


風は季節からの手紙



春告草の


白い小さな花が



春という煌めきを


枝にちりばめて



初花月の風吹く


今日という


一小節を大切に、奏でながら





















2月が見頃のカノープスは、神話の水先案内人の名で、シリウスに次いで明るい星ですが、地平線近くにあります。見ると幸せになる星ともいわれます。


プリムラは、ラテン語の「最初」に由来し、春が来て最初に咲く花、春の扉を開く「鍵の花」とされ、「運命を切り開く」という花言葉があります。


初花月はつはなづきは2月、春告草はるつげぐさは梅のことです。雪解星ゆきげぼしは、雪が樹木の周りから解ける様子で、その時期の星を表すこともあります。


季節の星や花をモチーフに詩を描かせていただきました。お読みいただき、ありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
冒頭の「頬を流れる 風は季節からの手紙」という言葉が素敵ですね。 寒さの厳しい時期ですが、ところどころで春の足音が聞こえてくるような気がしました。 小さな春が様々な形でやってくると思えて、楽しくなりま…
詩の中で描かれる様々な『春』や『花』が、『今を、生きているから』という言葉に勇気をもらいました。『カノープス』を一度見てみたいですし、『枝はフルート』など、詩の前半の描写も非常に趣深いですね。心温まる…
 凍て晴れの空、このお言葉だけで冬の凛とした空気感と、澄み渡った青空が浮かびますね。  プリムラは節目の花のイメージでした。今回花言葉を教えていただき、込められた気持ちをまた改めて受け取ったような思い…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ