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ある日突然世界がゲームになった件

第1話:絶望の覚醒


 カナタは30歳、貧乏サラリーマン。

 RPG大好き、中二病気味のオタク体質。

 顔は意外と整っているが、職場では少し浮いた存在だ。

 妻・美咲、娘・彩花と、決して裕福ではないが、幸せな日常を送っていた。


 朝の台所はいつも通りの匂いに包まれていた。

 トーストの焦げる香り、インスタントコーヒーの香り。

 彩花はぬいぐるみを抱え、床に落ちた靴下をくるくる回しながら歩く。

 カナタは「昨日のゲームのボス戦、あの必殺技が決まれば…」と独り言。

 美咲がふっと笑って、「また妄想?」とつっこむ。


 ほんの一瞬の微笑み。

 家族と過ごす時間の温もりが胸を満たす。

 彩花の寝顔、手を振る姿、笑い声――その全てが愛おしい。


「行ってらっしゃい、カナタ」

「いってきます」

 彩花も小さく手を振る。

 カナタは弁当を受け取り、短く呟いた。

 『剣に雷を纏わせたら…魔物を一掃できるのに』


 通勤路。青信号を待つカナタの目に、違和感が走る。

 街灯が揺れ、影が歪む。

 耳鳴りのようなノイズ。


 次の瞬間、世界が崩れた。

 人々の目が赤く光り、唸り声をあげる。

 街は魔物の巣窟となった。


 会社。コピー機も電話も、普段の喧騒もない。

 同僚の目は赤く光り、肌は灰色にひび割れている。

 爪が机を引っ掻き、心臓が凍る。


 カナタは必死に逃げた。

 書類や椅子を蹴散らしながら、出口を目指す。

 「夢だ…夢だ…夢であってくれ……」

 痛み、恐怖、混乱。独り言が止まらない。

 『どうして…どうしてこんなことに……!』

 嗚咽が漏れ、頭が真っ白になる。


 外は雨と雷。荒れ狂う街を、帰るべき家に向かう。


 家。扉は半壊。空気は重く湿っている。

 美咲の肌は黒くひび割れ、目は赤黒く濁る。

 彩花は母の腕の中で冷たく、動かない。


 カナタの目に、ほんの一瞬、昨日の笑顔が蘇る――

 彩花の寝顔、美咲の優しい声。「行ってらっしゃい」と手を振る日常。

 胸が痛む。叫びたい。止まらない。


「彩花……っ……!」


 飛びつこうとするカナタ。

 美咲は理性を失い、鋭い爪で襲いかかる。


 痛み、恐怖、絶望。

 『ダメだ…守れない…守れないんだ……』

 嗚咽と怒り、恐怖が混ざり合い、カナタの胸を引き裂く。


 かすかな声。理性の残滓――


「……カナタ……お願い……殺して……」


 怒りと憎しみ、絶望が胸を裂く。

 白髪、赤目、全身に雷――覚醒。

 力が集まり、暴れ出す。


 雷光が美咲を包む。

 魔物の奥にあった理性が戻り、涙と微笑みを残して絶命した。


 雨と雷の轟音。

 壊れた笑い声、嗚咽、狂気、悲しみが入り混じる。


 神の声が響いた。


『これは遊戯だ。我が戯れを紛らわせるための盤上にすぎぬ。

 世界を変えるも、元に戻すもお前たち次第。

 さあ、もがき、苦しみ、我に辿り着くがよい。クク……ハハハハハッ!』


 カナタは壊れた笑い声を漏らし、嗚咽を混ぜながら、震える声で口を開く。


「美咲……ごめん……彩花……ごめん……

 絶対に、お前たちを……奪ったこの世界を……そして、神を……殺してやる……!!」


 荒廃した街を背に、カナタの復讐と生存の旅が、今、始まった。

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