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キャラハンと清明:結婚生活の準備編  作者: 木苺
第一章 婚約期間終盤:大詰めを迎えた新生活準備 (その1)清明とキャラハン
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コンコーネ公爵婚約者キャラハンの侍女探し①

(それにしても キャラハンの侍女探しは、予想以上の大事になりました)

清明の追憶は続く。


◇ ◇


・一般的には、上流階級の侍女と言えば、夫人の身の回りの世話をしたり、話し相手兼相談役も務める女性たちのことを言う。


・キャラハンは、子爵位継承者であるが、身辺自立の一環として、自分の身の回りのことは自分でこなしてきた。


さらに 父なき後は、弱っていく母の世話役を務め、母に代わって一家を切り回してきた。

 要は、本来なら執事や侍女・侍女長の仕事とされることもこなすことになったのだ。


 父が生きていた頃は、母もしっかりとしていたので、内向きのことに差配をふるい

 料理や裁縫・家事全般及び使用人のしつけ等についても、

 キャラハンに基礎・基本をしっかりと教えたが、

 父の没後のアレコレで心が壊れていく中で、それらの一切を放棄してしまい、

 経済的にも苦しくなったので、

 最終的には 家事のすべてがキャラハンに回って来た。


さらに、宮廷官吏として、またタウンハウスの管理人としての経験も積み、

タウンハウス管理組合の組合長も務め、

自分が設立したタウンハウス管理会社の社長にもなった。


それゆえ、今更 古典的な領主婦人として 侍女たちの手伝いなしには着脱もできないようなドレスを着て云々と言った生活をするのもなんだかなぁ・・

 ほんとに そんな必要あるの? とキャラハンは思った。


・一方、清明は、自分は クラン仲間のボロンに相談しつつ、

1年間の領主就任前研修の間に 自分なりの領主像を模索して、

コンコーネ家独自の人事形式も考えていたが、

こと 公爵夫人の生活に関しては、古典的理想的と清明が思い込んでいる領主婦人像に 

キャラハンに当てはめようとしていた。


最初のうちは、キャラハンも 夫となる人の希望に沿いたい、家長である清明の顔を立てなければと思い、清明の話をふんふんと聞いていた。


しかし そのうち だんだんと

「この人 もっともらしいことを言っているけど、

 それを実現するために確認が必要と思われ事柄についての質問には まったく答えない。

 もしかして、なにもわからず なにも知らないのに、ただこういうもんだと

 誰かに聞いた話をそのまま 私に押し付けようとしているのではないの?」

という疑問が湧いてきた。



結婚における『女性側の問題』に関する清明のポンコツぶりは、

婚活初期=出会いから婚約に至るまでの間に ミューズとスカイは、すでにしっかりと気づいていた。

 清明からさんざん話をきかされていたので。


 この頃の清明は、スカイの力を借りて 龍の庭にあるクランの本拠地で開かれる定例会に参加した時に、仲間たちに経過報告をしていたのだ。



一方、キャラハンは、これまで、自立した女性として、社会人として

己の力の及ぶ限りの範疇はすべて己の力で切り開いてきたが、

こと一般的な家庭問題・家庭生活における人付き合いについては、

幼い頃に父をなくしてから婚約に至るまで、身近に親しく相談できる相手が一人もいなかった。


それは、相談相手を見つけることのできなかったキャラハンの責任ではなく

彼女の生まれ落ちた環境に不具合が生じ、

彼女が人と関わることをことごとく阻み、暴力的な手段を使ってでも彼女の動きを封じる大人たちに囲まれて暮らすはめになったが故であり、

こればっかりは いくらキャラハンが頑張った所でどうしようもないハンディキャップであると、

コンラッド・スカイ・ミューズは理解していた。



キャラハンは幼い時から、困難を打開するために 必死で情報を集めて 利用できる公的機関の専門家に助言を仰いで、未成年期を乗り切って来た。


もっと端的に言えば

母を陥れ、子供であるキャラハンをだまして、彼女が持つ爵位継承権や信託財産を奪おうと画策を続ける親族に囲まれながらも、何とか自分と母の生活を守り切ったのは、

これ全て キャラハンの情報収集・分析力と 公的機関をフル活用するだけの、対人折衝能力の成果である。


が、しかし、個人的な親睦活動・子供同士の付き合いなどに関しては、公的援助が関与するところではなかった。 それらは 親子関係の延長線上に存在するものであるから。


 だが 肝心のその親が(わけ)ありの場合は・・

 学校や隣近所とのまともな一般的な関係を構築できるはずもない。

  良い悪いを抜きにして これが現実ってやつである。



なぜ クラン仲間が キャラハンの人となりを知ることになったかと言えば・・


キャラハンと婚約してからの清明は、

スカイが作った転移陣の助けを借りて、王都にあるクランハウスと 自分の領地との間を行ったり来たりしながら キャラハンとの仲を進める一方、


そのクランハウスに 転移魔法の使えるスカイ・ミューズ・コンラッドを呼び出しては、

何かと愚痴をこぼしたり こまめな相談をするようになったからである。


 その結果、ミューズとコンラッドは、ポンコツ清明の至らなさを補うために、

直接キャラハンと会って二人の仲が深まるように手伝うこともあった。


(スカイは、国王という立場上、クラン仲間として清明の手助けすることにも あれこれ気を遣わなければならないので、キャラハンを直接手助けすることはできなかった。)



なにしろ 本来なら 婚約者のために一番心を砕かなければならない立場の清明は、

これまで同様 今も、自分の人生を生きることに精いっぱいであるうえ、

婚活を始めるまで 女性という生き物についても 女性の生き方や生活実態についても ほとんど知らない男であり、

通り一遍の 男同士でかわす戯言ざれごと程度の話をうのみにしている状態なのだ。


そのことに、コンコン会絡みの清明の言動から、クラン仲間達は気づいてしまった。


「あー ほんとに ほっとけないよ、清明は。

 僕は 恋愛問題には疎いから、クランの本拠地の「龍の庭」を守る。

 なので スカイとミューズとコンラッドに 清明のことは任せた!」

というのが クラン長であるドワーフのボロンのお言葉。


「いや 任されても困る。

 わしは 人間の恋愛問題なぞ知らん!」

と神獣フェンリルのコンラッド


「同じく!」とよわい千年のエルフで時渡り(≒次元移動能力持ち)のミューズ


「それでも 僕よりは長く生きて 人とのかかわりの経験も豊富だろ、君たちは」ボロン


 と言ったいきさつもあって、最近では 何かといえば 王都のクランハウスで

清明の話し相手を務めていたミューズとコンラッドであった。



・ちなみに「龍の庭を守る」というのは、寂しがり屋の幼龍ゴンのそばに付き添うという意味である。

 いつもは 地上ではボロン、地底ではコンラッドが ゴンに付き添っていた。


 というのも 地上にある「龍の庭のクラン館」から、地下奥深くにある地底世界に移動するには

 安全確保のために 高い転移能力を持つコンラッドの付き添いが必要であったから。


  もっとも 複雑広大な地底世界の地図を完成させたのは、地上地下を問わず空間把握力に優れたボロンであったが。

 (コンラッドは神獣なので感覚が独特。ゴンは幼いので空間把握能力は現在形成中=未熟

  人間とエルフは 闇の中が苦手)


 ただ 腕白盛りのゴンが ドラゴンの力を目一杯使って飛び回るには、

 人族の眼を気にする必要のない 広大な地底世界が適していた。

 なので いつもは ゴンはコンラッドを背中に乗せて 地底世界を全力で飛び回っていた。


 ただ今回は

  「僕も いつまでもゴンの背中に乗って空を飛ぶのが怖いとは言ってられないね」

 と言って、ボロンも ゴンと一緒に空を飛びながら 龍の庭でお留守番をしていた。


  (まさか ドラゴンの背中に載って魔獣狩りを体験するとは思わなかったよ)とはボロンの弁。

   この場合の『魔獣』とは、龍の庭に放牧している牛型魔獣(大牛ほか)達のことである。


それはさておき・・


 スカイは 国王として、コンコン会メンバーの動向を把握し

大きな問題なく コンコン会の本来の目的=「縁の無さを嘆く 独身貴族と王宮官吏たちの婚活を促進し、次世代誕生の基盤を産み出す」の達成に向けて

いろいろと陰ながら コンコン会への支援活動を行っていた。

 なにしろ コンコン会は スカイ国王が起案したものだったので。


 しかも キャラハン(王宮官吏で独身貴族)と清明(独身貴族)の出会いも、コンコン会の会員活動の中から生まれたので、

二人の動向もおのずと スカイ国王の知るところであった。

(が、立場上 そうそう動けないので、心の中でやきもきしてしまうスカイであった。)



 というわけで 侍女選びについて、キャラハンと清明の見解が対立としているとミューズから聞いたスカイは、

キャラハンと清明の話し合いの場に コンラッドを派遣することに決めた。

というか コンラッドに 両者のとりもちかたがた立ち会ってくれるように頼んだ。


「クラン仲間としては、自分で動かず ほかの仲間に頼むなんてことはしたくないんだけど、

 一応 国王としては 公爵家の結婚問題は速やかに無難に片付いてくれないと困るし、

 コンコン会の主催者としても、コンコン会で一番人気の男性メンバーである清明のスキャンダルは避けたいんだ。

 

 しかも、国王として公正であるというイメージを保つためには、

 友人である清明のコンコン会活動に直接介入することはできない」スカイ


「まったく・・

  言っておくが わしは キャラハン寄りだぞ。」コンラッド


「僕とミューズの気持ちは 清明よりだから、 バランスが取れてよいじゃないか。

 とにかく ポンコツ清明が パワハラ夫にならないようによろしく頼むよ。


 彼、自分が理解できないときには 逃げ出すか、

 いきなり 刀を振り回しかねない(あや)うさがあるからね」スカイ


「男同士の付き合いはうまいが、こと夫婦問題になると・・ってタイプだな、清明は」コンラッド


「そうなんだ、あいつは徹底した主従関係か契約関係しか知らない。

 それも男中心社会で育ってるからなぁ、あいつは。


 奥さんになる人が誰であろうと 奥さんになった人は 苦労すると思うよ。

 そういう男の操縦術を子供の頃から仕込まれて育った女性でないと、」スカイ


「家庭外でつきあう女性に対する時と、己の家に迎え入れる女性に対する時とで

 コロッと己の全ての基準が切り替わることに違和感を持たずに育った男は 厄介じゃのう」コンラッド


「しかも あいつと、ぼくやミューズは、クラン仲間としては対等の間柄(あいだがら)だからねぇ。

 僕たちの意見なんて あいつの世界観と会わない部分はあっさりとスルーされるのさ。


 女性に対する清明のあんまりな態度に(ごう)を煮やした僕とミューズの二人がかりで

 あいつに水をぶっかけなければ あいつの眼が覚めなかったんだから」

婚約前の出来事を引き合いに出して説明するスカイ。


「まあな わしはよわい万年の神獣じゃから、

 清明は わしの魔力に一目(いちもく)置いておるのか、単なる敬老精神かは知らんが、

 わしの話に耳を傾けてくれるやもしれぬが

 果たして 今回 わしのことばを心に留めるかもどうかについては期待はせんように。」


と言って コンラッドは、清明とキャラハンとの意思疎通改善に協力することにした。

(はぁ 養い子(スカイ)たっての頼みとあらばしかたあるまい)と、しぶしぶながらも



・・補足・・

ちなみに、ドラゴンクランメンバーの魔力の強さについて言えば

 コンラッド(フェンリル)>ゴン(幼龍)>ミューズ>スカイ となっています。


もっとも 成龍とフェンリルは同等。

そして ミューズとスカイは 魔法使いとしてのタイプが全く異なるので、

日常では対等に付き合っています。

(ミューズの方が気を使って 実力を出さないようにしているともいえます)


こどもドラゴンのゴンからすると、

コンラッドとミューズが先生、ボロンは保護者、

そのほかのメンバーは親戚の叔父さんやお兄さんのような感じです。

※ 本日 夜8時、2回目の投稿として「閑話」を公開します。


 こちらは、キャラハンを例にとった ちょっとした説明のようなものなので

 めんどい話が好きでない方は スルーOKです。


※本文の続きは、明日の朝8時公開です。


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