ケビンとマリーゴールド(タウンハウスの管理人夫妻)
注)過去作「清明の結婚」では、キャラハンのタウンハウスの管理人夫婦は、『ハーフドワーフの夫と人間の妻』としておりましたが、今回『ハーフドワーフ夫婦』に改めました。
それにあわせて「清明の結婚 33話」の該当部分も修正しました。
・ドワーフは一般的に、人間よりも背は低いが、その分 体格はがっしりとして頑健・力持ち・耐久力に優れていると言われている。
それゆえ 鉱山開発や建築業に力を発揮し、インフラ整備もお手の物。
さらに 人間よりも長寿なので 根気よく技術を磨いて優れた職人として名を馳せる者も多い。
また 男女の体格差がほとんどない。
力持ちのドワーフ女性もいれば (ドワーフ基準で)ほっそりとした華奢な男もいる。
つまり 体格差は個人差であって 男女差ではなかった。
・ドワーフ女性のミランは、がっしりとした体格を活かして「道づくり」チームの親方を務めていた。
「道づくり」チームというのは、各地の領主の依頼を受けて 未開の地を切り開いて道を作って、既存の町と新しい町の建設予定の場所とをつなげる作業チームである。
しかし 王国の都市開発ブームも一段落つき、新しい道づくりよりは、既存の街や街道整備が依頼の中心となった頃、
ミランは そろそろ 自分も一か所に落ち着いて家庭を持とうと考えた。
そんな時に出会ったのが、人間の大工のエドである。
エドは 細やかな心遣いと穏やかな性格の真面目で律儀な男であった。
二人は 互いに、プロとしての腕を認め合うとともに
ミランは エドの人柄に
エドは ミランの腕っぷしの強さと 優しさ・包容力に惹かれた。
かくして ミラン120歳とエド25歳は結婚した。
この二人の間に生まれたのが ケビンである。
◇
ケビンは、父であるエドから大工仕事を、
ドワーフである母からは ドワーフの心得を学んだ。
ケビンは、母に似て背は低く、人間の男の中でも華奢であった父からその体格を引き継いでしまった。
「なんで 人間らしい背丈か ドワーフらしい頑健・パワフルな肉体のどっちかを引きつかず、
よりにもよって低身長で華奢な力なしという、
人間社会におけるドワーフリスクと ドワーフ社会における人間リスクの両方を
引き継いでしまったんだろう・・」
ケビンは 嘆いた。
「ドワーフの身長と 人間の体力・パワーを引き継いだと思えば
なにも損はしてないわよ」ミラン
「それを言われると ますます泣きたくなるね。
どうせなら 得になる組み合わせが欲しかった」ケビン
「こればっかりは 天の采配だからなぁ」エド
とまあ、家の中では 愚痴ったりぼやいたりしながらも、
ケビンは 王都からほどほどに離れたある領で スクスクと育った。
父親のエドが元気なうちは、父と一緒に 大工仕事をして暮らした。
父が60歳になり大工を隠退した時、ケビンは32歳、ミランは155歳だった。
「ケビンは 母さんに似て いつまでも若々しい肉体だなぁ」エド
「ドワーフのように長命かどうかは、まだわからないけれど
今でも17・8の若造に見られるので、地元の人間仲間とのつきあいには
苦労しているよ」ケビン
「だったら 王都のドワーフギルドで仕事を探してみてはどうだい。
最近 王都ではタウンハウスの管理・修繕の仕事が増えているらしいよ」ミラン
というわけで、ケビンは 母の紹介で 王都のドワーフギルドに席を置いて
大工を続けることにした。
◇
王都のドワーフギルドには マリーゴールドというハーフドワーフの女性職員がいた。
マリーゴールドは、人間並みの背丈と ドワーフの骨格とパワーを持った女性だった。
仕事仲間として 親しくなった二人は、ある時 懇親会で一緒に飲みながら雑談をした。
「うーん 子供の頃の僕が憧れた遺伝子の組み合わせだなぁ、君は。」ケビン
「そりゃぁ 肉体派の男性ならそうかもしれないけど
女性でこの体格だと、
人間の男からは、ごつごつして女らしくない とデスられ
ドワーフの男性からは、背が高いなぁ とあきれられるから
あんまり うれしくないのよ」マリーゴールド
「そっかー、 君もいろいろ 気苦労の多い生活なんだねぇ。
こればっかりは 天の采配っていうけど・・
お互い 遺伝上の体格的組み合わせ《くじうん》は いまいちだったみたいだね。
でも 僕にとっては 背の高い女性と結婚したら、高い所のモノをとってもらえるかもって 期待してしまうし
しかも 彼女が 僕以上の力持ちなら・・甘えちゃって荷物運びを頼んでもいいかな?
それとも やっぱり そういうの 頼まれるのは嫌かい?」ケビン
「人によるわね。
お互い 助け合うことのできる信頼できる関係なら それもありかな。
でも 利用されるのは嫌。
それに 親しくもない人から、あれこれ頼まれるのも嫌よ。
『金持ちだから おごれ~』なんて言うのがはしたないのと同じで
『お前デカいから 荷物持てや~』なんて言われたくはないわね」マリーゴールド
「確かに 言えてる。
そうだよね。
外見だけで 最初っから付き合い方を決め付けられたくないよね!」ケビン
「そうよ そこ! それ大事!」マリーゴールド
それやこれやで 徐々に親しくなった二人は 結婚した。
そして二人は、キャラハンが住んでいたタウンハウスの住み込み管理人となった。
補足)管理人夫婦の設定の変更について
2023年9月に「清明の結婚」を投稿した時には、シリーズ作品の第1作42話に出てくる
ボロンの知人の息子(ハーフドワーフで 服飾ギルドに就職した若者)を意識して、
タウンハウスの管理人を、「服飾ギルドに勤めるハーフドワーフと人間の夫婦者」設定としました。
しかし 時系列などを勘案すると、ボロンの知人の息子とキャラハンのタウンハウスの管理人夫婦を関係づけても 発展性のある物語を展開できないと気づき
むしろ、「様々な夫婦の形」として ハーフドワーフカップルを描く方が、「キャラハンと清明の結婚」にふさわしいと考えなおし、今回の修正となりました。
人間だれだって、大人になるまでに 一度は 自分の生物学的条件について、「親に似てよかった」とか「これはなぁ」なんて 鏡を見て思うことはあるのではないでしょうか。
それやこれやもひっくるめて 自分の人生を築いていくわけですが
そこには 生家由来のあれこれと、今巡り合ったパートナーとこれから築く生活とが含まれるわけで・・
そう言う意味で これから先 新たに出てくるかもしれないカップルについても、いろいろと設定を工夫していきたいと思います。




