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キャラハンと清明:結婚生活の準備編  作者: 木苺
   (その2)妻の同僚(部下も含む)
20/33

困惑する清明

アー困った 困った


困った時の神頼み、もといクラン仲間、とばかりに、清明は龍の庭にいるボロンとミューズを頼った。


キャラハンとの経緯を聞いたボロンは言った。

「まったく君ねぇ、今こうして君が愚痴っている間も、

 キャラハンさんは 一人で苦しんでいるんだよ。わかってる?」


「だからこそですね、私は 彼女にとって頼れる男になりたいんです。


 さらに言えば、彼女のそばに 男を寄せ付けたくないんです!!」清明


「もしかして、ほかの男が 彼女のそばに寄り添うと、

 彼女の心が その男の方にグラっと行くんじゃないかと心配なのか?」ボロン


「もしかしなくても そうならないって保証がどこにもない以上どうしようもないではありませんか!!」清明


「こりゃ 重症だ」両手を上げて お手上げ(降参)のポーズをとるボロン。


「あのさ、だからこそ キャラハンは 『言葉の意味』を真剣に考えて欲しい、って言ったんじゃないか?」ミューズ


「どういうことです?

 どの言葉が 一番重要なんです?」清明


「つまり そもそもきっかけは、

  『男に伍してバリバリ働いている女性は少ない』

  『採用基準に達する女性が応募者の中に居なかった』

 だから 男性を採用した

 ってことに君が異を唱えたことにあるんじゃないか」ミューズ


「つまり その男でないとダメだったってことでしょう!」声を荒げる清明


「馬鹿だなぁ。

  採用基準に達する女性が居たら そっちを採用していたって彼女が言外に言ってるんだって なんで気が付かないわけ?」ボロン


「え~~~~~!」清明


「そもそも キャラハンほど有能な人なら、君の性格や考え方や感じ方を考慮して

 基準に達する女性が居たら そっちを採用していたに決まってるじゃないか。


 でも居なかった。

 そして みつけることも 現状ではむつかしいってことを

 あれだけ懇切丁寧に説明しているのに

 そのことにも 裏にある彼女の気持ちや配慮にも、気が付かない君はバカだねぇ」

ボロンとミューズの二人が口々に言うのを聞いて 頭をテーブルにぶつける清明。


「そんなこと そんなこと 私にわかるわけないじゃないですか!

 どうして あなたたち二人には わかるんですか!!」


「そりゃ 社会経験の違いだね」ボロン


「そうそう 僕はよわいウン千年のエルフ」


「僕は 一応 ギルド支部長もつとめた郵便屋。

 つまり これまで接した人の数も種類も 君より豊富だと思う。


 君の仕事は 護衛が中心だったみたいだから、

  つまり 個人で一定の期間一人か一組の人と接する仕事をしていた君よりは


 不特定多数の人々を一度に、あるいは短時間で次々と応対してきた僕の方が

 接した人の数と種類は多いんじゃないかな」


「それに ボロンの方が 君の倍以上生きているし。」ミューズ


「えっ そうなんですか?

 ボロンさんって 私とおつかつ(=大差ない)じゃないんですか?」清明


「精神的には そうだと思うよ。

  つまりドワーフ基準を人間基準に直せば 君も僕も青年期の終わり中年の始まりぐらいだよね。


 ただ 生きてきた年数だけで言えば、ぼくは 君の倍以上の年だね」ボロン


「え~ 私 すでに 中年の始まりですか・・

  気分的には まだまだ若いつもりなんですが」清明


「それを言えば 僕だって♫」ミューズ


「こらこら 脱線しないの」ボロン


「あー それでは おたずねしますが キャラハンさんはどうなんです?」清明


「どうって なにが?」ボロン


「キャラハンさんも 中年ですか?」清明


ぷっと噴き出すミューズ

「彼女 歳 いくつ?」


「えーと 確か31才。つまり 私より10歳くらい年下ですね」清明


「つまり まだ ピチピチの青年だねぇ。もちろん人間基準で」ボロン&ミューズ


絶句する清明


「あのさ、男どうしだと、生きてる年数の差は 蓄積した経験量の差になるかもしれないけど、

 それでも 学校の違いとか 生まれた地域の違いとか 仕事のちがいで、経験する内容が どんどん違ってくるわけじゃないか。


 まして 男女間になると、同じ年齢でも、見ている世界が違うこともあるだろうし、まして歳が違うと、もっともっと見ている景色が違うこともあると思うよ。


 だって この半世紀、王国でも 女性の社会進出が激しいから。


 10年前と今とでも 人間達の間では女の人の働く環境がずいぶん変わってる。

 

 だから 君が持ってる「女性の生き方・働く環境」イメージと

キャラハンが抱く「職業観・労働環境へのとらえ方」が大きく違っていても 不思議はないんだ。


 だから 彼女の仕事に関しては、彼女自身の経験からくる考え方・観点を尊重しないと、結婚生活は成り立たないんじゃないかなぁ。」ボロン


「この人、実家が 家族関係のもつれの相談やらなんやらをやってたから、耳年寄りなんだよ」ボロンのフォローに回るミューズ


「うー 子ども扱いしないでください」清明


「してないよ」ボロン


「めんどいなぁ

 僕たちの人生経験を当てにして 相談にくるくせに

 忠告されると プライドが~なんて ごねるのは」ミューズ


「よろしい 勝負しましょう!」

  刀を引き寄せる清明


「武道では 歯が立たないので遠慮するよ」ボロン


「同じく」ミューズ


「理解はできましたけど

  むしゃくしゃするので 発散してきます」


清明は そう言って 龍の庭の竹林に入っていった。


 ◇ ◇


竹藪で 刀を振り回し すっきりとしてから 清明は帰って行った。


一方、ミューズは、乱伐された竹藪の成れの果てを見て

 「うーん 清明の八つ当たりにも困ったものだ。


  今後は ストレス発散は 居合切りではなくて、拳法にするように忠告しよう」


「だれが 清明に 拳法を教えるんだい?」ボロン


「僕♪」ミューズ


「えっ 君 戦えるの?」ボロン


「一応 護身術として、

 というか エルフに武道は無理なんて 君 思ってたんじゃないよね?」ミューズ


「ごめん。 なんとなく」ボロン


「まあねぇ 

 エルフの体格は ドワーフや人間に比べると ほっそりとしてるから。


 だからこそ 体を効率的に使う拳法とか

 柔よく剛を制すの柔術とかは エルフのたしなみなんだよ。


 ただ それを 多種族には公表していないだけ。


 やっぱり 体重差とかで 肉弾戦になると不利になりやすいから。

 でも 何も知らないわけじゃない。」


「おみそれしました。ごめん。

  (=誤った低い評価をしていてごめん)


 よかったら 僕にも拳法や柔術を教えてくれる?」ボロン


「いいよ。 でもどうして?」


「うーん、

 ドワーフはさ、人間に比べると手足が短いから

 拳法や柔術を身に着けても無駄だと思ってたわけ。


 ドワーフどうしだと 争いは全部 話し合いで解決するから、特に護身術を習う必要もないし。


 ただ 人間と付き合う上で、いざという時に拳法や柔術を身に着けていたら役立つかなって

 つまり 意外性という意味で護身の役に立つかもって、君の話を聞いて思った。」ボロン


「なるほどね。

 これまでは、人間は ドワーフに対しては厳ついイメージをもっていたから そんな不意に襲ってくることもなかったかもしれないけど

 今後 ドワーフと人間との距離が近くなると、ドワーフに乱暴を働く人間が出てくるかもしれない。


そういう時に近接戦で 拳法とか柔術を遣えれば護身の役に立つかもしれないね。


エルフは わりと 華奢なイメージが持たれていたので、

不埒な人間に絡まれることも 治安と風紀の悪い国ではあるかもってことで

僕たちは 多種族に接する前には護身術を習うことが必須科目になってたんだよ。」ミューズ


「そっかぁ

 エルフって 悪い人間からは 女性的=暴力的支配下における存在と見られることもあるんだぁ」ボロン


「ここでは そんなことないけど、別の世界では そういう所もあった」ミューズ


「君も いろいろ苦労してるんだね」ボロン


「そりゃ 長く生きていれば、そして よそ者として放浪していれば

 いろいろあるさ」ミューズ






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