婚約を解消しましょう
部下の採用予定が決まったので、約束通り コンコーネ領の清明の館まで報告に来たキャラハン。
彼女が、週末にコンコーネ領に来るのは久しぶりだ。
◇ ◇
「会いたかったです♡」
転移してきたキャラハンを抱きしめる清明。
まだまだハグに慣れないキャラハンは どぎまぎした。
しかし、今は 結婚前の業務整理で忙しく、分刻みのスケジュールをこなしてまくっている最中なので、ハグの交換が終わると、てきぱきと 本日の本題『採用報告』に移った。
◇ ◇
キャラハンの侍女としてマリリンを採用したことについては、しっかりと 清明は耳を傾け、
マリリンをコンコーネ領に受け入れるための準備も 滞りなく手配することを約束してくれた。
しかし、キャラハンの秘書として、ダドリーを採用することを知った清明は 思わず言ってしまった。
「えっ? 男を雇う必然性がどこにあるのです?
普通 公爵夫人の秘書は 女性なんじゃないですか?」と。
「まるで 物語の中の後宮みたいなことをおっしゃるんですね、清明さんは」キャラハン
「後宮というのは、一夫多妻制の場合の呼び名であって
一夫一妻制でも、妻の個人的使用人は女性に限るのが妥当では?」清明
「それって まるで、妻が浮気することを前提みたいな話ですね。
清明さんは、私が浮気するとでも?
私は 男ならだれでもいいと思うような女だとお考え??
失礼な!!」
「いや しかし 男の側があなたに夢中になるとは思いませんか?」清明
「あきれた。
そういう ふざけた考えの人達がいるから、男女が同じ職場で働くことが、ややこしくなるんです。
今どき、宮廷官吏でも 会社でも 商店でも、男女一緒に働くのが当たり前の世の中で何を言ってるんですか、あなたは!」キャラハン
「いや、しかしですね、
妻の個人的使用人ということは、妻の身近に居るわけですし」清明
「あのねぇ、私の身の回りの世話、つまり私的な生活の場にも関わる仕事をするのが 侍女です。
秘書というのは 私が公爵夫人として公的な場で仕事をするのをサポートするのが役目です。
これは 男女どちらでも務まります。
ちなみに 今現在、官吏として あるいは起業家として働いている私の観点からすると、まだまだ 女性が公の場で働くには いろいろと制約があります。
たとえば あなたのように、私が女性であるという理由で、男を誘惑するんではないか?男からの誘惑に載るんじゃないか?と考える馬鹿男も いるわけですから。
なので まだまだ 男に伍してバリバリ働いている女性の数は 少ないのです。
まして 地方に引っ越すとか、王都にとどまって私の代理人を務めるだけの能力があるとかって条件が付くと・・その基準に達する女性は応募者の中に居ませんでした。
それに 私は バカじゃないですから、
女性上司に対して 邪な思いを抱いたり、 不埒な態度をとるような人間を、
私が選んだりしません。
そりゃ 100%相手の腹の中までわかるわけではないですけど
少なくとも そういうことをしなそうな 信頼できそうな人を選んでいますし
それでも この先 なにか そういうことがあれば 即座に解雇するに決まっているではありませんか。
なのに 私が男性を雇用することを否定するあなたは
私という人間の 人事管理能力・人を見る目を 根本的に否定していることになるって、気づかないのですか?」
「うーん 理詰めで来られると困るなぁ。
しかし 婚約者としては、妻となる方が雇う秘書が男性ならば
事前に私の審査を受けて頂かないと 納得できませんね」清明
「だったら 結婚するのをやめましょう。
私が 公爵夫人としての役割に専念するために、
私が設立した会社を売ると言えば反対し
公爵領で私が召し使う人間は すべてあなたの選んだ人間でなければだめと言う。
あげく 私が 公爵領に居る間に、私の会社を切り回す人間まで
あなたの許可した人間でなければだめ
すべて 私のやることなすこと あなたの支配下に置こうとする
そんな人と まともな結婚生活が送れるとは思いません
私は あなたとの婚約を解消します」キャラハン




