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キャラハンと清明:結婚生活の準備編  作者: 木苺
   (その2)妻の同僚(部下も含む)
17/33

キャラハン・タウンハウス管理会社をめぐって

キャラハンにとって 自分の名を冠した「タウンハウス管理会社」の社長の座は 非常に意味のあるものであった。


なにしろ タウンハンス管理会社の起業は、

単なる金儲け事業ではなく、

むしろ 不遇にめげず生き抜いてきたキャラハンの人生の勝利宣言・不屈の意志の存在証明のようなものであったから。


しかし、コンコン会に参加を決めた頃のキャラハンにとって、この「キャラハン・タウンハウス管理会社」は、彼女のしがらみの結晶のようなものでもあった。

 つまり 親の因果を背負わされた娘として、精一杯『宿命』とやらにあらがいつつ、

己に課せられた義務とやらから逃げることなく、己の人生を切り開いた結果そのものであったから。


それゆえ、もし 良き縁を新たに結ぶことができるならば、この会社もすっぱりと売り払って、新生活の糧にするとともに 過去のしがらみとも決別する証にもしたいと思っていた。



ところがところが、婚約者となった清明は、「キャラハン・タウンハウス管理会社」を売却することなく、社長業を続けることを薦めてきた。


曰く

「私には、その管理会社は キャラハンさんの半生の証のように感じます。

 なにも結婚するからと言って 結婚前の人生すべてを捨てることはないのでありませんか。


 私は あなたのすべてを大切にしたいと思います。

 だから あなたにも もっと あなた自身を大切にして欲しいと思うのです」


そのとき、「結婚前の人生を捨てる」と言われたことには引っかかった。


なぜなら、過去の悪縁(しがらみ)を断ち切りたいというのがキャラハンの一番の願いであったにもかかわらず、

己に課せられた『宿命』なるものとの妥協の産物である会社を売って、新しい人生を歩む糧とすることを、「自分の人生を粗末にしている。捨てるな」と言われてしまったのだから。



ただ キャラハンは、 これまで自分の心の一番深い感情を口に出しても、一度もそれを他者から受け入れられたことはなく 常に批判もしくは非難にさらされてきた。


なので 今回もまた、『己の心の底からの願い=管理会社を売って、自分で自分の門出を祝うこと』を「自分の半生を捨てることである」と断じられても、


「あー やっぱりの私の心の奥底からの願いをわかってもらえなかったな」と哀しく思いつつ、


「これ以上アレコレ説明して清明との関係をこじらせるよりも、スルーをしたほうがまし、

いつか 私のことをもっとよく知ってもらってから 改めて説明したらわかってもらえるかもしれないが、今は 何と説明しても受け入れてもらえないのはしかたがない」と、感じた。


むしろ、「あなたのすべてを大切にしたい」という清明のことばに ホロッとしてしまった部分もあるキャラハン。


本気で清明がそう言っていると感じたから。

(知的に理解してもらえなくても 大切にしたいと思ってくれる清明さんの気持ちにこたえたい)と思ってしまったのだ。




そこで、キャラハンは、自分がタウンハウスの管理人として出会った人達と紡いできた縁・信頼関係について語り、

自分にとっては「信頼関係」というものが 非常に大切だからこそ、会社運営においても 中途半端なことはしたくない、

しかし コンラート領に引っ越せば、「タウンハウス管理会社」の社長業を続けることは無理なので 会社を売却すると 懇切丁寧に説明した。


すると 清明が「なぜ 無理なのです?」と食い下がる。


仕方がないので、キャラハンが具体例を挙げて困難な事由を説明すると

「ようは 土日に キャラハンさんが王都に戻ることができるように転移陣を私が用意すれば問題解決ですね」と宣言する清明。


 あとから ふりかえれば、これもまた 清明の「しきりたがり」発動である。


なので単純に「私の会社のこと(プライバシー)に 口出すな!」とキャラハンが一蹴すればいいところを

糞まじめに 清明の言葉一つ一つにキャラハンが反応してしまい

結局、清明の思い通りに キャラハンの領域(=この場合は キャラハンタウンハウス管理会社の運営について)をとりしきられてしまうという いつものパターンが ここでも発生していたのであった。



が その時のキャラハンは、何か変な流れになったと思いながらも 清明に押し切られてしまった。


これは、まだ 二人が 正式に婚約する前、婚約を前提として 結婚後の生活の擦り合わせをしていた頃の出来事である。



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