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第十三話「ゲーム実況のための動画編集(紹介文作成)」8/9(2)


 玄関の扉を開けた瞬間に、拓真はぎゅっと優利の胸に抱き着いてきた。仕事帰りのままのスーツ姿で、この様子だと本当に帰宅直後に連絡をしてきたのだろう。

「ごめん、僕めっちゃ面倒くさい奴してた」

 優利は片手で扉を閉めながら、もう片方の手で拓真の頭をよしよしと撫でてやる。

「お前とカズがどんな関係でも、俺はどこにもいかんから。頼むから、試すようなことすんな。こんなんで嫌いにはならんけど、けっこう傷付くんやぞ?」

「うん……言い訳みたいになってまうけど、ほんまにカズとセックスしたんは最近やから。優利くんと、シてからやから……」

「……めっちゃ最近やん……なんで? 今、聞いてもええ?」

 玄関で抱き合いながら、拓真の顎に手をやってこちらを向かせる。潤んだ瞳に理性が飛びそうになるのを抑えて、その口が開くのを……珍しく言葉を選ぶ様を見詰める。

「……優利くんのこと……とられたくなかった」

 予想通りの表情で、少しだけ予想外のことを言われて驚いたが、これでようやく合点がいった。揺るぎのない愛情というやつを、こいつは自分にも求め“だした”のか。

「誰に?」

「カズに」

「なんで? カズと俺がヤッてもたら、拓真とはもうせえへんって思ってんの?」

 拓真の身体から力が抜けてしまったので、靴を脱がせてキッチンに続く廊下のフローリングに抱き合ったまま座り込む。こんな時でもしっかりとセットされた髪の毛が動く。ふるふると頭を左右に振って、拓真は小さく白状した。

「違うけど……優利くんもカズも、二人共僕に見せてへん顔してるんかなって……考えたら、なんか……嫌になった」

「嫌って、嫌いって意味?」

「違うし。何回も大好きって言ってるやん優利くんのア――」

「――俺も好き。こんな面倒なことされても殴らんくらい大好き。わからん? 俺が拓真に“なんでも”許してるん」

「……優利くんのそういうとこ……いつもかっこいいって思ってる……」

「じゃあ、なんで【一問一答】にはそう書いてくれへんかったん? 俺の好きなとこにも書いてへんかったけど?」

 【一問一答】の回答データは全て優利の部屋のパソコンに入っている。つまり全員の回答がいつでも優利は観覧可能ということで。拓真からの優利への回答も、もちろん既にチェック済みだ。

「そんなん……ほんまに思ってることなんて書けへんやん。こんなとこ書いたら、逆に嘘みたいに見えるし。いや、もちろん嘘は書いてへんけど……」

「なら今教えてや。ほんまの【好きなところ】と【相手のことをかっこいいなと思ったエピソード】」

 少し驚いたような表情で拓真がこちらを見上げたので、優利はくすっと微笑みを返してやる。するとみるみるその頬に朱が差して、これは珍しいものが見れたと優利はほくそ笑みそうになった。なんとか表情筋は微笑みを宿したままで耐えられた。

「……ほんまは大切な相手にだけ、世話焼きで尽くしてくれるとこが好き。何言っても受け止めてくれる、そんな男前なとこも好き。僕のこと……いつでもわかってくれてるん、ほんまに大好き」

「うん、そんで? かっこいいなーって思うところは?」

「男前がだらしない顔すんなよ。正直、いっつもかっこええよ。言うたことは絶対やりきるとことか、ほんまに尊敬してる。今やから言うけど、優利くんやから『動画配信したい』って誘ったし。優利くんとなら、僕でも目標までやりきれるかなって思って」

「お前、仕事やとちゃんとやれるのになー。拓真の目標は? 指輪代だけ?」

「指輪代はちゃんと返すって。そうじゃなくて、僕さ……優利くんとクルーズ旅行行きたいねん。ま、カズも入れて三人で、でもええけどー」

「それもう乱交クルーズやろ」

 そこでもう我慢が効かなくて、二人で大笑いをしてからキスを交わした。フローリングに転がったまま舌を絡ませて、他の男から贈られたジャケットを脱がせる。

「泊ってく?」

「ん……朝早めに出て一旦帰るけどー。さすがに着替えんと“いろいろ”職場で言われるしー」

 独身やねんから何しててもええやんなー? と笑いながらもう一度キスをねだる拓真に応えてやってから、優利も「目標の船旅に向かって稼がなあかんからな」と笑った。


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