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第98話 そう思う理由

「えっ?」


 冗談を言っているわけではない真剣な瞳に俺は驚く。


「フェニックスもレインボーバタフライもクリスタルコカトリスも成長していけば人類では太刀打ちできないおそろしい強さを持つ存在になる」


 SランクやAランクの幻獣だ。今は可愛くて強い従魔だが、将来は騎士団総出で戦わなければ勝てない程に成長するだろう。


「そんな想定は無意味でしょう!」


 だけど、フェニやパープルが理性を失って暴れるようなことはない。

 二匹とも俺に懐いてくれているし、セリアや他の人間とも仲良くしている。たとえ成長して強くなったとしても、国に牙を向くとは考えられない。


「俺の従魔は無関係な人を襲うようなことは絶対にしない!」


 そこだけは誤解して欲しくなく、俺は胸に手を当てるとキングス四世に断言した。


「なるほど、クラウスという人物のことが少し理解できたな」


「えっ?」


「どうやらお前は自分よりも従魔に価値があると思い込んでいるようだな?」


「ち、違うのですか?」


 これまでの流れからてっきりフェニやパープルが警戒されていると思っていたのだが……。


「希少なモンスターや素材よりも優れたテイマーは貴重な存在だ。もし君が、仮に他国へと出奔したとすれば、将来どれ程の痛手となるか……」


「初代リントがこの国にテイマーという地位を確立してから百年。従魔を従えることができる才能を持つ者は少ない」


「中でもCランク以上のモンスターを従魔にできる者はテイマーギルドでも数十人しかいない」


 それぞれが事情を語ってくれた。だがやはり心配のしすぎな気がする。


「何か言いたいことがあったら言ってくれ」


 キングス四世に促され俺は思っていたことを口にする。


「皆さんがなぜそこまで警戒するのかわからないのですが、俺が国を出るわけないじゃないですか?」


「わからんだろう! 我々以上の条件を出されてそれになびくかもしれない」


 ニコラスさんが眉根を寄せ険しい表情を浮かべそういった。


「国に不満を抱いて出ていくかもしれない」


 ドワイトさんが不穏な仮定の話を口にする。


「ドワイト! 陛下 の前で不敬だぞ!」


 そしてそれをエグゼビアさんが嗜める。


「仮の話ではないか! 最悪を想定しておかなければ思わぬところで足を掬われるぞ!」


 言い争いをする二人を尻目に、キングス四世はじっと俺を見る。彼も俺が国を出るのではないかと疑っているのだろうか?


「なぜ、国を出ないと断言できるのか教えてくれ」


 為政者として知っておきたいのか、彼は俺が国を出ない理由を聞いてきた。

 そんなのは決まっている。


「俺はこの国が好きだからですよ」


 言い争いをしていた二人も言葉を止め、全員で俺の言葉に耳を傾けていた。


「父や母や妹が平和に暮らしている。従魔と仲良くするというテイマーの存在を認めてくれ、国家冒険者という国民に寄り添う立場の人間を厚く採用している。スタンピードの時、城の防衛を薄くしてまで地方に住む民のために騎士や兵を動かし平和を守る」


 これまで見てきたこの国のあり方だ。


「大切な人が安心して暮らせ、従魔を大切にするこの国が俺は大好きなんだ」

 だから、どのような条件をあげられたところで出ていくなんて考えられない。俺は思いを告げるのだが……。


「決めました、陛下 。クラウスを私の娘と婚約させましょう。それならばうるさい貴族の言論を封じ込めることができる」


 ニコラスさんが立ち上がり国王に直訴を始めた。


「ええぃ、黙れ! クラウスは私が編成する混合騎士団に入ることを推薦する。そこで手柄を立ててからでも貴族になるには遅くないはず」


 ドワイトさんが負けじと国王に詰め寄る。


「それよりも、国の中枢に入るべきでしょう! 彼の人柄なら難しい外交相手でも心を開くかと」


 しまいにはエグゼビアさんまでが主張をし、キングス四世もその勢におされている。

 自分のことだが、あの三人に詰め寄られている国王に同情し、どうやって収集をつけるのか見ていると意外な人物が口を開いた。


「そこまでにしたらどうだ?」


 ダグラスさんの声が会議室にとおる。彼らは振り向くと一斉に矛先をダグラスさんへと向ける。

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