第72話 屋敷の整備について
目の前では三匹が仲良くじゃれ合っている。
フェニはひよこを従えてボスを気取っているし、パープルはロックの兄貴分として振る舞い、ロックもそれに従っている。
兄貴分として面倒を見ているようで、二匹の間には信頼関係のようなものが築かれており、三匹の間には良い空気が流れていた。
庭ではしゃぐ従魔たちを見ながら小屋掃除を終えて出ると、ちょうどセリアが朝食を作ってくれた。
ほんのり狐色のついたトーストにはバターがたっぷり塗られていて、美味しそうな香りが漂ってくる。
現在住んでいる屋敷の近くにある市場から買ってきたもので、新鮮な乳を使ったバターは風味も豊かで俺もセリアも気に入っていた。
朝から可愛い従魔の戯れる姿を見て、最愛の妹と朝食を摂る。とても幸せな時間だ。
そんなことを考えながらセリアを見ていると、彼女は食事を終え俺と目が合うと笑ってみせた。
「そろそろ学校に行ってきますね」
食器を重ね片付けるセリア。既に制服に着替えを終えている。
ロックが近付き俺たちの皿を受け取ると、屋敷へと運んでいく。最近、後片付けはロックの仕事になっている。
たどたどしい動きを二人して見守ると、
「なら俺も一緒に出るとするか」
馬車乗り場まで見送ることにした。妹の登校を見守るのは兄の大事な仕事だ。
「兄さんは優しいですね」
上機嫌で顔を覗き込む彼女を見て、俺は安らぎを覚えるのだった。
「そういえばクラウスさん。屋敷の方はどうですか?」
セリアを送ったあと、納品をしにテイマーギルドを訪れた俺は、精算が終わるなり係員さんに話し掛けられた。
「どうとは?」
俺は係員さんの漠然とした質問に首を傾げる。
「サギンさんの話だと、庭が随分と荒れ果てていて屋敷も古びているとか……。手入れに苦労してるんじゃないですか?」
彼女は頬に手を当てると、サギンさんから耳にしている情報を俺に告げる。
「実のところその通りなんですよ。屋敷はフェニの浄化の炎で綺麗にしたんですけど、庭は雑草が凄いので……」
屋敷を買って以来、暇を見つけては雑草を刈っているのだが、庭の手入れなど俺やセリアには知識がないのでどうすることもできない。
結果として、屋敷周りの雑草だけ取り払って放置している現状だ。
「業者を入れたりしないんですか?」
「フェニやパープルやロックの件もありますからね」
係員さんの質問に俺は即答する。
一般の業者ではモンスターがいるのを怖がって引き受けてくれない。
業者を入れるとなると、その間、フェニやパープルやロックをどこかに預けなければいけない。
「でしたら、うちの関係者なら良いのではないでしょうか?」
関係者というと真っ先に思い浮かぶのは職員さんたちだ。
パープルが進化する前に何日も徹夜で調べ物を手伝ってくれたので、人柄に関してはよく知っている。
「フェニちゃんやパープルちゃんのことも知ってますし、クラウスさんが懸念しているような問題は解消できるかと」
確かに、係員さんの言う通り、テイマーギルドの職員であればこちらとしても頼むことに文句などないのだが……。
「でも、大丈夫なんですか?」
あの時も散々無理を強いてしまったが、彼らには通常業務もあるのではないか?
「今はそれほど業務が詰まっているわけではないので彼らも手が空いていますし、こうした作業に適した人材もテイマーギルドにはおりますので」
係員さんはそういって人を入れることの有用性を俺に説いた。
「それなら、お願いできます?」
向こうがそれでよいというのなら断る理由もない。
「それでは、私の方でギルド内で声を掛けて人を集めますね」
俺は手配にかかる費用を彼女に預けると、テイマーギルドをあとにするのだった。




