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【書籍化&コミカライズ】女神から『孵化』のスキルを授かった俺が、なぜか幻獣や神獣を従える最強テイマーになるまで  作者: まるせい
二章

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第70話 錬金術師ギルド見学⑥

「ううう……まだ鳥肌が収まりません」


 セリアは青ざめた顔をすると自分の両腕を手で擦っている。


「申し訳ありませんでした。クラウス様がテイマーなのでてっきり耐性があるのかと思っておりましたわ」


 ロレインが苦笑いを浮かべながらセリアに謝罪の言葉を述べる。口元が緩んでいて、先程のセリアの取り乱しようが余程面白かったのだろう。


「兄さんと一緒にしないでください。私は……兄とは違うので」


 珍しく感情的になったセリアはロレインを睨みつけた。普段、家族以外の前ではある程度自分を取り繕う彼女にしては珍しい。


 先程の絶叫で取り繕っても仕方ないと思ったのか、ロレインに気を許しているのか、いずれにしても妹に友人が増えるのはよいことだろう。


「あんなのが一杯いるなんて……私、やっぱり錬金術師になるのは無理です!」


 ああいった生き物が苦手なのは昔から知っているが、パープルが進化する前はマジックワームだったと話をしたらどうなるのだろうか?


「まあ、人間どうしたって苦手な生き物というのは存在しておりますわ。わたくしにもありますもの……」


「ロレインさんでも苦手なものがあるのですか? あれほど落ち着いていたのに?」


 セリアはロレインの顔をまじまじと見た。


「ああ、そう言えば、グールの指を怖がってたよな?」


 俺は国家冒険者試験の際、ロレインに頼まれてグールの指を回収したのだが、指が入った袋を差し出した時の彼女の引きつった表情を思い出す。


「あれは……女性なら誰でも嫌がるかと。そうではなくて……まあ、これ以上は愚痴になってしまいますので止めておきましょう」


 ロレインは何かを思い出すと一瞬嫌そうな気配を出し、表情を改めた。


「それより、次の施設に移動しましょう」


 ロレインにせっつかれてせわしなく移動をする。


 それだけ錬金術師ギルドの敷地内が広いということもそうだが、多くの施設を見せてくれるつもりらしい。


「次の建物はこちらになります」


 ロレインが入口を開き中に入ると、


「あの……、妙な魔力を発していたり、妙なモンスターを飼育していたりしないですよね?」


 先程のことがトラウマなのか、セリアが警戒心を引き起こし確認した。


「安心してください。過剰な魔力もマジックワームもおりませんから」


「そ、そうですか……」


 あからさまにホッとした様子を見せるセリアに……。


「もっとも、ここは錬金術の最先端。妙な……という部分は否定をしませんけど」


 ロレインは口元を隠すとクスリと笑う。安心させておいてから落とすというのは中々な意地が悪い。


「またそうやって! お、脅かさないでくださいよぉ〜」


 二人の掛け合いに自然と笑みが浮かぶ。ロレインは人の懐に入り込むのが上手いのか、セリアを手玉に取っていた。


 セキュリティを抜けて中に入ると、


「ここは、錬金術の工房のようだな?」


 田舎街の錬金術の店でも見たことがある、俺でも知っている各種調合器具が揃えらえている。


 中ではギルド員が何らかの調合を行っているのが見えた。


「手前で調合しているのはポーションですね。こちらではポーションを作って冒険者ギルドや国などに卸しております」


 先程の農場で栽培したハーブをここでポーションにして販売しているのだとロレインは説明した。


 つまりこれも錬金術師ギルドが活動資金を得るための大事な作業ということ。


「クラウス様に見ていただきたいのはこの奥の施設です」


 ロレインは迷うことなく奥に進むとセキュリティを解除した。ここから先は重要機密があるのだという雰囲気が漂ってくる。


「外の工房とは違い、こちらにあるのは一級品の魔導具と触媒。レアアイテム。それらを用いて様々な効果を持つアイテムの研究をしております」


 今通ってきた工房のように大勢の錬金術師はおらず、代わりに魔導具が稼働している。


「こちらではポーションを作るのに必要な過程のかなりの部分を魔導具が肩代わりしてくれます。精密な計量なども自動なため、ギルド員の役割は触媒の準備と魔力を注ぐことくらいですね」


 言われてみれば、作業テーブルでは白衣を着てマスクを被ったギルド員がすり鉢で何かを潰していた。


「あちらではグールの爪をすり潰しています。御存じの通りグールの爪はとても硬いので大変な作業のようです」


「もしかして、あのグールの爪って……」


「はい、クラウス様に倒していただいたグールの爪ですね。せっかくなので見ていただこうと思いまして、先程カフェにいる間に準備しておいてもらいました」


「兄さん、グールなんて倒したんですか……?」


 セリアが少し引いた表情で俺を見る。これまでは依頼の話をぼかしていたのだがショックを受けたらしい。


「ええ、クラウス様の戦う姿はそれはもう凛々しかったですわ」


 ロレインは当時を思い出したのか、頬に手を当て微笑んでみせた。


「……そう言えば私、兄さんが戦う姿ってみたことありません。今度見せてもらえませんか?」


 眉根を寄せじっと俺を見つめるセリア。


「……わざわざ危険な場所にお前を連れて行く必要はないだろ?」


 王都近郊のモンスターならそれ程危険はないが、わざわざ探索してまで見せるようなものでもない。


「……そんな危険な場所に一人で出向く癖に」


 何やら不満そうな言葉を口にするのだが、こちらが話し掛けようとすると顔を逸らされてしまった。


「それで、ロレイン。魔導具はどうやって使うんだ?」


 少し気まずい空気が流れる中、それを変えようと俺はロレインに質問をする。


「はい、まずこちらに触媒と素材を入れます。後は水をセットして魔力を注いで起動する。そうすれば自動的にポーションが完成しますわ」


「素材はさっきのグールの爪として触媒というのは?」


「錬金術で作れるポーションは多岐に渡っておりまして、素材と触媒の組み合わせで出来るポーションも違ってまいります。今回はグールの爪と例の黒い粉を用いて上級解毒ポーションを作ります」


 ロレインはギルド員からグールの爪をすり潰した粉を受け取ると魔導具にセットした。


 それとは別に、見覚えのある黒光する粉を引き出しにセットする。


「爪は消耗品ですが触媒は再利用可能なので洗浄して何度も使いまわします。この時に使う触媒と注ぐ人物の魔力の親和性が効果を高める鍵となります」


 エルダーリッチの粉とグールの爪をセットして透明な容器に水を注ぐと、ロレインは魔導具の中心にある魔石に触れると魔力を流し始めた。


「凄いです。流し込むこの魔力の量は上級魔法に匹敵していますよ」


 魔法のことは専門外なのでよくわからないが、セリアの真剣な表情からしてロレインが相当凄いことをやっているのだと理解する。


 数分の間、俺とセリアはロレインが魔力を注ぐのを見続けた。


「はぁはぁ、ここまでが限界です。私の魔力総量では一つ作製するのが限界ですね」


 ロレインが手を離した後も魔導具は動き続ける。


 しばらくして、魔導具の下にセットした容器に黒い透明な液体が注がれた。


「こちらが、上級解毒ポーションです。高ランクモンスターからの猛毒をも解毒することができる、自慢の一品ですわ」


「グールの爪の猛毒を闇属性の触媒で反転させて解毒効果に変えたんですか?」


「ええ、その通りですわ」


 セリアの分析があっていたのかロレインは頷く。


「凄いアイテムだな、冒険の際に一本あるだけで生存率が跳ね上がるんじゃないか?」


 解毒魔法が使える治癒師がいれば問題ないのだが、その場にいないことの方が多い。解毒できずに命を落とした冒険者の話は枚挙にいとまがない。


「今のところ素材や作れる錬金術師の人数が限られておりますので、卸し先は王侯貴族で埋まってしまっておりますわ」


 良いアイテムほど生産数が少なく手に入り辛いのが現状だ。

「もっと広く世に普及してくれればな……」


 いくら素材が集まっても作製できる錬金術師の人数が足りていない。


「解毒ポーションはまだ良い方かと。石化解除ポーションはさらにレアですから、当家にも一本しかありませんし」


「ロレインさんは作製できるのですか?」


 セリアの問いかけに彼女は首を横に振る。


「石化解除ポーションともなると、扱えるのは錬金術師ギルドでも片手で足りる程度です。膨大な魔力と錬金術の経験、このような魔導具の設備がないと作製できませんの」


 口惜しそうな表情をするロレイン。やったことがない俺には錬金術がどれだけ難しいのかわからない。


「もしよかったら、錬金術の体験をしていませんか?」


 彼女は表情をコロリと変えるとそんな提案をしてきた。


「いいんですか?」


「触媒はまだ使えますし、グールの詰めの粉末もまだ残っておりますから」


 ここにある魔導具は高価だと言っていたので触れさせてもらえるとは思わなかった。


「何事も経験ですから、この先違う道を選ぶとしても錬金術の一端に触れるのは良いかと思います」


「せっかくだからやらせてもらえよ」


 不安そうに俺を見てくるセリアを後押しする。


 セリアは頷くと、初めてのポーション作りをするため魔導具の前にたった。

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「触媒はまだ使えますし、グールの詰めの粉末もまだ残っておりますから」 詰め× 爪〇 最後のほう
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