第65話 ロレインとの再会
「まずはクラウス様。国家冒険者資格取得おめでとうございます。クラウス様ならば問題なくクリアされると思っておりましたが、改めてお祝い申し上げます」
「ありがとう。俺がこうして合格できたのは皆の助けがあったからだ。勿論、ロレインも含めてね」
試験の一つ一つに意味があり、関わった人が誰一人欠けていても合格できなかっただろう。俺は彼女に礼を返した。
「それで、ロレインはどうしてここに?」
彼女はアカデミーの生徒なので、錬金術師ギルドにいるとは思わなかった。
「わたくしは、この錬金術師ギルドの準ギルド員ですから……」
ここにいる理由を聞いたところ、ロレインはそう答えた。
「ステシア王立アカデミーでは、一部の優秀な生徒は在学中でもギルドに出入りすることが許されるんですよ」
後ろから、セリアが耳元でそっと囁く。帰路でロレインに色々と錬金術について話を聞いたが、既に現役のギルド員だったとは……通りで詳しいわけだ。
「ところでクラウス様、そちらのお方なのですが……」
ロレインは視線を流すと俺の後ろにいるセリアに瞳を向ける。
「俺の妹のセリアだ。一緒に田舎街から出てきていてな。今は王都の学校に通っている」
俺がセリアを紹介すると、ロレインは意味ありげな視線を彼女に向ける。
「初めまして……ではございませんよね?」
「やっぱり、あの時の方でしたか」
二人のやり取りに俺は首を傾げる。
「知り合いだったのか?」
俺がセリアに聞くと、
「以前話したじゃないですか、デビュタントの際、私に嫌がらせをしてくる人たちを咎めてくれた貴族令嬢がいたと」
「ああ、そういえばそんなこと言ってたな」
セリアがそんなことを言っていたのを思い出す。
「別に、セリアさんのためだけに咎めたわけではありませんので、そこまで恩義を感じていただく必要はないですね」
ロレイン曰く、メリッサと敵対している派閥の生徒がセリアに絡んでいたので見るに見かねて割って入ったのだという。
「彼女にも今度礼を言わないとな。ロレイン、セリアを助けてくれてありがとう」
「ふふふ、お気になさらずに」
ロレインは口元に手を当てると俺の言葉を受け取った。
「それにしても、クラウス様の妹君とは……本当に奇妙な縁ですね」
それがわかっていれば、国家冒険者の護衛試験の時にもっと早く打ち解けることができた。
「テイマーで国家冒険者のクラウス様同様、相当優秀なのでしょう?」
ロレインは探るような目でセリアを見るとそう質問した。
「いえ、私は兄に比べたら全然……王立アカデミーには入学資格ありませんでしたし……」
セリアはそう言うと俯いてしまった。どちらにせよ王立アカデミーに通うには確かな身元と多額の入学金が必要なのであのころの状況では無理だった。
「何はともあれ、ここで再会できたのは嬉しいですわ。例の黒い粉も活用させて頂いてますので、見学の際におみせできるかと」
ロレインは話題を見学へと戻した。
「ああ……、錬金術師ギルドが落札したと聞いていたけど、もしかしてロレインが噛んでいたのか?」
レインボーバタフライの鱗粉にエルダーリッチの魔力を吸わせた鱗粉については当事者なので知っていた。オークションにかけると聞いていたが錬金術師ギルドが落札したのには訳があったということか。
「ええ、クラウス様の所属、合理的な販売ルートを考えれば自ずとオークションになるとわかっていましたから。それに合わせて予算を組むようにギルドマスターに進言しておきましたわ」
どうやらロレインは既にタバサさんと気軽に話せるくらいにギルド内での地位を確立しているらしい。
そう言えば、今回急遽案内人が変わったのも、タバサさんがロレインを指名したのも、その関係性の深さがうかがい知れる。
「お蔭で儲けさせてもらったよ」
ロレインが回収してくれたエルダーリッチの粉を彼女が所属するギルドに高値で買い取ってもらう。こうして考えるとロレインには随分と世話になっている気がする。
「そのお金で屋敷を買われたのですよね? アカデミーでメリッサやルシアとも話していましたわ」
「話って、どんなことを?」
彼女たちが仲の良いのは知っていたが、まさか俺の話題で盛り上がっているとは思わなかった。
「屋敷購入のホームパーティーには呼んで頂けるのかな? とかですね」
ロレインは口元に手を当てると、メリッサやルシアとの会話を俺に伝えてきた。
「それに関しては、屋敷の整備が追い付いていなくて……まだいつになるかわからないんだ……」
俺は言葉を濁すと彼女にそう告げる。
「勿論、クラウス様の家の事情もありますからお気になさらず」
そう言って彼女は口元に手を当てクスリと笑う。
「それでは、セリアさんもお待ちのようですし、そろそろギルド内を御案内いたしますわ」
互いの近況報告をしている間もセリアはそわそわしてたようだ。
「そうだな、早速だけど頼むよ」
ロレインがドアを開けると、俺とセリアはその後ろをついていくのだった。




