第41話 国家冒険者試験終了
「今回の護衛依頼はこれにて終了とする。結果については後日伝えるので待つように!」
二週間にも及ぶ護衛依頼が終わり、誰一人欠けることなく俺たちはステシア王立アカデミーへと戻ってきた。
行きの時は生徒も国家冒険者試験の受験生もピリピリとしていたのだが、全員で窮地を乗り越えたからか、随分と打ち解け、雰囲気も良くなっていた。
俺に話し掛けてくる人間も冒険者、生徒問わず多く、パープルも人気者になり、皆に可愛がられていた。
「お前さんには随分と世話になった。最初は失礼なことを言って悪かったな」
ブレイズさんが頭を下げてきた。
「気にしていませんよ」
俺は彼にそう言うと、笑顔を向ける。
「なんだかんだで、楽しかったわ」
メリッサが朗らかな笑みを浮かべている。最初は俺たち受験生への対抗心を隠そうともしていなかったが、こうしてみると普通の女の子なのだと気付く。
「パープルちゃんも可愛かったしね」
『…………♪』
ルシアはパープルが気に入ったようで、帰りの馬車の中ではずっとパープルと戯れていた。
「クラウス様は、国家冒険者になられるのですよね?」
ルシアとパープルが触れ合ってるのを見ていると、ロレインが確認をしてきた。
「うん、そうなれたらいいなとは思ってるんだけど……」
試験官さんからは「高評価だ」と言われているものの、帰りの護衛で何かミスをしていれば評価が悪くなっている可能性もある。
あえて受験生に「評価しているぞ」を言い渡し、気が緩んだところを狙うということなのかもしれない。
「んなことあるか、あれだけ活躍したやつを落とすようなら、試験そのものを疑うぜ」
ブレイズさんは「お前は本当に心配性だな」と呆れた表情を俺に向けてきた。
「クラウス様が国家冒険者になりましたら、依頼をお出ししてもよろしいですか?」
ロレインは口元に手を当てクスクスと笑うと、首を傾げた。
「それは、構わないですよ」
合格したらいよいよ国家冒険者としての仕事をこなすことになるのだが、少しでも気ごころ知れた相手からの依頼はありがたい。
「ほらほら、あまり長話をしないで。アカデミーの生徒はこの後講堂に集合。反省会を行いますよ」
アカデミーの教師が近付いてきて、三人を促す。
「えぇ~、明日でいいじゃん」
ルシアが名残惜しそうにパープルと離れる。
「それでは、クラウス様。また」
「また会いましょう」
「まったねー」
三人が手を振り、学舎へと消えていくのを俺も手を振り返し見送るのだった。
アカデミーを出て、そのままテイマーギルドに俺は顔を出した。
二週間もの間、フェニに会えなかったので寂しがっているかと思い、なるべく急いで迎えにきたのだ。
『…………♪』
パープルもフェニに会えるのが嬉しいのか、俺の肩に止まり、機嫌良さそうに羽根をパタつかせている。
「こんにちは、今戻りました」
俺は馴染みの係員さんに声を掛ける。
「お久しぶりです、クラウスさん。試験の方はどうだったんですか?」
係員さんは笑みを浮かべると、早速試験について聞いてきた。
「まあまあ上手くやれたとは思っています」
俺はそう返事をすると、ロレインから受け取った【闇属性の鱗粉(エルダーリッチ産)】を取り出し、テーブルに乗せた。
「そうだ。これ、テイマーギルドで売ってもらえませんか?」
「何ですか、これ?」
係員さんが首を傾げながら袋を開ける。
「レインボーバタフライの鱗粉に、エルダーリッチの魔力を吸わせて【闇属性を付与した鱗粉】です」
「はい?」
首を傾げて固まる彼女に、俺は依頼中にあったことを説明した。
「それ、とんでもなく貴重なアイテムじゃないですか!? いいんですか、これ? うちに販売を任せてもらって!」
説明を聞き終えると、彼女は俺に念押しをしてきた。
「もともと、そう言う約束だったじゃないですか?」
レインボーバタフライの鱗粉の販売に関してはテイマーギルドに委託すると契約している。
品物が少し変質したからといって、別扱いしていたら今後手間が増えてしかたない。
「でも、滅多に手に入らないし、持っておいた方がいいのでは?」
それに関しては、俺にも考えがあった。
ロレインに聞いたところ、レインボーバタフライの鱗粉は魔力を溜めこむ性質がある。それはエルダーリッチだけではなく、他に魔力を持つモンスターも同様だ。
今後は国家冒険者として色んな場所に行くことになるのだろうが、パープルを連れて行く機会も多い。
そこでの戦闘で、同様の【属性を付与した鱗粉】が手に入る可能性が高いので、使う予定がない以上売り払っても構わない。
「それより、フェニを迎えに来たんですけど、元気にしていますか?」
「ええ……元気、では……ありますよ?」
妙な表情を浮かべる係員さん。どこか迂遠な言い方に俺は首を傾げた。
「御案内します」
彼女の後ろについて、テイマーギルドに特別に用意してもらった『フェニックス部屋』へと向かう。
この部屋は、フェニックスの研究書を基に、いかにフェニックスが快適に過ごせるかを考えて設計された部屋で、テイマーギルドの総責任者でもあるボイル伯爵家が支援してくれたこともあってか、そうとう金をかけて建てられている。
火を扱う部屋なので、他のモンスターの飼育小屋から離れた場所にあり、俺たちは十数分歩くとようやく到着した。
中では常に火が燃えていて高温となり、フェニにとって居心地がよい空間となっている。
近付いたことにより、フェニが寛いでいる感情がこちらにも伝わってきた。
「えっと……何を見ても驚かないでくださいね?」
係員さんは前置きをすると、レンガで作られたドーム状の部屋の扉を開ける。
ムッとする熱さが扉から流れてきて係員さんとパープルは慌ててその場から離れるのだが、火耐性を持つ俺には温いくらいだ。
部屋に入って行くと、部屋の中心に魔導具による火柱が上がっており、その中にフェニが座っていた。
「フェニ、迎えに来たぞ」
フェニが反応し立ち上がる。
「えっ? お前……それ……!」
俺は変貌を遂げたフェニを見て言葉を失うのだった。




