第193話 穏やかな朝の様子
全身に重さと温もりを感じ目が覚めた俺は、ベッドの自分の周りを観察していた。
『ピフピフピフ』
俺の腹の上でフェニが眠っている。
『キュピキュピキュピ』
さらにその上にはネージュが乗っており幸せそうな鳴き声を口から漏らし眠っている。
『…………z』
さらにネージュの頭の上にはパープルが止まっており、翅を小刻みに揺らしている。
こちらも眠っている様子だが、小刻みに揺れる姿をずっと見ていたくなる。
『…………(懐)』
俺の右腕をロックが腕枕にし、
『…………コクゥ♪』
左腕にはコク&リコが乗っている。
「身動きが取れない」
俺が溜息を吐く間も、
『チチチチ』『キューキュー』
フェニとネージュが気持ち良い時の鳴き声を出しており、きっと幸せな夢を見ているのだと察する。
そんな皆を起こすことがはばかられた俺は、どうしてこうなっているのかについて考えていた。
そもそもの原因は、先日俺がフェニとパスを通して深く繋がったことだった。
つい先日、王都を邪神教が操るブラックドラゴンが襲ってきたのだが、その際にこれまで以上に意志の疎通がはっきりして、フェニの力がパスを通して伝わってきた。
お蔭で炎の翼を生やすことができるようになり、ブラックドラゴンを退けることができたのだが……。
「まさか、他の従魔が嫉妬するなんてな」
俺と深く繋がったことで勝ち誇るフェニをよそに、他の従魔から『自分だって繋がりたい』という感情が伝わってきたのだ。結果、これまで以上に全員俺にくっついてくるようになった。
「兄さーん。起きてますー?」
身動きできず従魔たちのモフモフした身体を堪能しているとセリアが起こしにきた。
「起きてるけど、動けないんだ」
「失礼しますね」
セリアは断りをいれてからドアを開けた。
制服にエプロン姿のセリアがフライパンとお玉を両手に持ちながら入ってくる。
「あら、可愛い」
入ってきたセリアは俺にべったりの従魔たちを見て口元を緩めると、そんな感想を告げる。
「そうなんだけど、これじゃ身体も動かせない」
「いいじゃないですか。私も参加させて欲しいです」
セリアとの会話が聞こえたからか、従魔たちが目を覚ました。
『ピピピィ!』『キュピッ!』『…………&』『…………(起)』『…………クゥ……Zzz』
コク&リコだけは一旦顔を上げるがふたたび目を瞑ってしまった。
「起きたなら、どいてもらえないだろうか?」
俺は駄目元で従魔に声を掛けるのだが、
『ピヤッ!』『キュッ!』『…………$』『…………(嫌)』
従魔たちは拒否してきた。
「駄目みたいだな」
俺はセリアに向かい苦笑いを浮かべる。
「そんなに懐かれてて羨ましいです」
セリアは手を伸ばすとフェニ・ネージュ・パープルの順番で顎下を撫でる。
『チチチチ』『キュ〜ン』『…………♪』
三匹は気持ちよさそうな鳴き声を上げた。
『…………コクゥ』『…………(寂)』
それを見ていたコク&リコとロックが俺の腕から離れ、セリアに撫でて欲しいとおねだりをする。
「わっ、甘えん坊さんですね」
従魔がセリアに甘えるのを見ながら、俺はようやく解放された腕を回し一呼吸吐く。
大事な妹と大事な従魔がもみくちゃになりながら戯れるのを見るのは最高の癒しだ。
「ちょ、ちょっと! 制服が汚れちゃう!」
焦るセリアのスカートを引っ張るフェニとネージュ。脚に抱きつくロック、肩に乗るパープル。それを床から見上げるコク&リコ。
ーーカンカンカンッーー
「はい、ここまで!」
セリアが持っていたフライパンとお玉を打ち付けると、従魔は一斉に飛び退いた。
「私は学校があるし、兄さんは仕事なんだから、皆はちゃんと起きて朝の準備をすること!」
俺の言うことは聞かない癖にセリアの言うことをきっちり聞くあたり、この屋敷で偉いのが誰なのか理解しているらしい。
俺たちは慌ただしく起きると、朝の準備を始めるのだった。




