第175話 推測するクラウス
「それにしても、さっきのは一体何だったんだ?」
身体が動くようになってから、改めて先程の現象について考えることにした。
パスを通してフェニの力がそのまま流れ込んできたかのような感覚があった。
「フェニ、お前が力を貸してくれたのか?」
『ピピィ?』
いつものように首を傾げて見せるフェニ。俺と同じく、先程の現象を把握していないようだ。
「まあ、後で考えるとするか」
ここで考えても答えはでないだろうと後回しにする。
「それにしても、やっぱり俺の推測通りだったな」
部屋に入ると同時にアークデーモンが召喚されたこと。
アークデーモンを倒した瞬間、奥の部屋からフェニとネージュが出てこられたこと。
総合的に判断すると、ここがダンジョンの最奥にあるボス部屋で、フェニが忍び込んだのはその奥の財宝部屋ということになる。
「そうすると、俺は裏口から入ったということか?」
ダンジョンを攻略した物語はいくつも読んだが、裏ルートから攻略したという話を聞いたことがない。
「二匹とも、とりあえずあっちの部屋に戻ろうか?」
重たい身体を起こし、へばりつく二匹を引っ付けたまま財宝部屋に戻った俺は、改めてその内容を確認した。
「遺跡やダンジョンで得た財宝や魔導具は発見した者に所有権があると決まってたよな?」
実際、リッツさんやハンナさんも冬の間にダンジョンに篭って稼いでいたと聞いている。
ダンジョンは国の所属に関係なく入れるし、手に入れた物の売り先についても本人の自由だ。
「つまり、これが全部俺の物ってことになるわけだが……」
部屋一杯に積み上がっているので物凄い量だ。一国の金庫にも匹敵するのではないだろうか?
「とりあえず、アイテムバッグがあってよかった」
場所が場所だけに何度も往復するわけにいかない。大量にアイテムを収納できるアイテムバッグがなければ運び出すだけでも相当苦労するはめになった。
「問題は魔導具や財宝の売り捌き方だけど、流石に誰かに相談しないとな」
そう言いつつもここで頭に思い浮かぶのはオリビア王女だった。
これまでも親身になってくれたし、彼女に話せば悪いようにはしないでくれるだろう。
俺は身分証の魔導具を起動すると、彼女にメッセージを送る。仕事で確認することが多いので連絡先を交換してもらっていたのだ。
「さて、ここの財宝を回収したら戻るとするか」
『ピピピィ!』
『キュキュキュ!』
二匹にそう告げると、俺は部屋一杯にある財宝をアイテムバッグに入れるのだった。