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第164話 キャロルの仕事?

 貴族になってから十日が経過した。


 最近、王都はどこも賑わいを見せている。商人は大量の品物を持ち込み、王城内を使用人が走り回っている。


 元後見人の貴族の人たちやキングス四世も忙しそうにしている。


 なぜかというと、もうすぐステシア王国で四国が集う国際会議が開かれるからだ。


 かくいう俺も、ここ最近は王城に詰め仕事をしていたのだが、オリビア王女が国際会議の準備をしなければならないということで本日は休暇をいただいている。


 明日以降も細かい仕事が入りそうなので、束の間の休日をゆっくりとすごしていたのだが……。


「そういえばキャロル、最近仕事してないよな?」


 暖炉の前の絨毯に寝転がりフェニと戯れているキャロルに声を掛けた。

 ケモミミがピクリと動き、尻尾がソワソワと揺れる。


「そ、そんなこと……ない」


 彼女は俺から目を逸らした。


「いや、だって毎日家にいるよな?」


 俺は彼女の正面に移動すると顔を覗き込み問い詰める。


 考えてみればおかしかったのだ。彼女は名が売れた凄腕の国家冒険者なのだ、毎日俺の家にいるのはおかしい。


「国家冒険者は街道沿いにいるモンスターの討伐を命じられていたはずなんだが?」


 城内でマルグリッドさんと会った時に立ち話でそう聞いている。にもかかわらず、俺は彼女が討伐に向かっているのを見た記憶がない。


「……クラウス、詳しい」


 宿題をやり忘れていて怒られたかのような気まずそうな顔をするキャロル。フェニの羽毛に顔を埋もれさせる。


「そりゃあ、貴族だからな」


 これまでと違い、様々な情報を得ることができるようになった。


 横の繋がりも増えたので周りの人間も色々と教えてくれる。


「実は、頼まれている依頼がある」


 俺が冷めた目で彼女を見続けていると観念したのか、仕事をサボっていたことを白状した。


「それって、いつまでの仕事なんだ?」


「……今日まで」


 ふたたびフェニに顔を埋め俺の視線から逃げるキャロル。


「急いでやらないと駄目だろ⁉︎」


 基本的に余裕をもって依頼されているはずなのだ。ギリギリにも程がある。

 俺は溜息を吐くと、


「セリア、今日は家にいるか?」


「ええ、特に用事はありませんので」


 洗い物をしている妹に予定を確認する。


「それじゃあ、依頼に出かける準備をしろ。キャロル」


 俺がそういうと、キャロルは首を傾げた。


「手伝うから、さっさと片付けに行こうぜ」


 俺の言葉が飲み込めたのか、キャロルは目を大きく開いた。


「でも、クラウスは貴族様だよ?」


 いくら国家冒険者に特権が認められているとはいえ、貴族をアゴで使うような真似はできない。キャロルはそのことを気にしている様子。


「たまたま、散歩をするだけだし問題ないだろ?」


 戦闘しては駄目という規則はないので、キャロルについて散歩するという名目であれば問題はない。


「クラウスと出掛けるの久しぶりだね」


 意図が伝わったのか、キャロルは嬉しそうな顔をするとフェニを放し起き上がった。


「いいなぁ、キャロルさん。私なんて最近兄さんと出掛けられていないのに」


 仕事が忙しく、あまり構ってやれなかったので拗ねているらしい。


「ごめんな、今回の仕事が終わったら落ち着くと思うから、そしたら旅行にでも行こうぜ」


 セリアとも一緒に出かける約束をすると、彼女は途端に機嫌を直した。


「本当ですか⁉︎ 私行きたいところがあるんです」


 上機嫌になったセリアは「どこにしましょうかね〜?」と行き先について考え始めた。


「ウチもついて行くから」


 そんな彼女を見ていると、服が引っ張られた。どうやらキャロルも旅行に興味があるらしく、ケモミミがパタパタと動いていた。


「キャロルはまず、自分の仕事を片付けてからだな」


 俺は溜息を吐くと、ものぐさな元同僚の背中を押し、依頼へと向かうのだった。

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